猫が母になつきません 第292話「れんとうする」
母が最初に携帯電話を持ったのはもう20年前。もちろん当時はガラケー、今もガラケーを使っています(去年スマホに挑戦したものの挫折)。最近はそのガラケーの使い方もわからなくなることが多い。人に会うことが少なくなって母は外からの刺激に飢えていますが、80代の高齢者にそんなに頻繁にメールも電話も来ることはなく、それでも母はしょっちゅう携帯をいじっている。家にいてもすぐに私を呼べるように私の携帯にはすぐコンタクトできる設定にしているので、母が何度も携帯を見て、よくわからなくなってやたらとボタンを押しているうちに私に空メールが連投されるというわけです。いちどきに13連投されたことも。こちらも慣れっこになってきます。他の人に送ってしまうこともあるので「用事がないときは携帯さわらないで」と注意しますが「全然さわってない」「なにも送ってない」。先日めずらしく文章ありで届いたメッセージには「よいお年をお迎えください」と。年末でもないのに誰に送ろうとしてたんだか。母に見せると送ったことは「覚えていない」というものの「なんでこんなの送ったのかしら」と笑っている。まぁ変だということがわかるだけいいか…とまたひとつハードルを下げる私なのです。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。