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『ドクターX』パターン全部盛りの最終回!10周年の締めくくりは従来シリーズと何が違ったか

『科捜研の女』『相棒』と並ぶテレビ朝日の人気ドラマシリーズ、米倉涼子主演『ドクターX~外科医・大門未知子~』第7シリーズ(テレビ朝日系・木曜21時~)最終回。メディカルソリューション本部長・蜂須賀隆太郎(野村萬斎)の膵臓がん手術を目前に控えた東帝大学病院で新型感染症が発生。感染者は蜂須賀自身。蜂須賀は感染拡大を防ぐため、感染研究センターに立てこもって手術を拒否する。それを押し切って大門(米倉涼子)らは手術を決行しようとするが……。やっぱり最後まで目が離せなかった今シリーズをドクターX』全シリーズを追いかけてきたライター&イラストレーターの北村ヂンさんが振り返ります。

最終回は全部盛りの展開

 前回(9話)のレビューで、『ドクターX』の最終回は3パターンに分類されると書いた。

・身内が病気になる
・対立してきた人物が病気になる
・病院の反対を押し切って手術を強行する

 今シリーズの場合、外科手術に否定的な立場を取り、たびたび大門未知子(米倉涼子)と対立してきた蜂須賀が手術を受ける展開。しかし大門と蜂須賀は、外科手術へのスタンスでは対立しているものの、食べ物の趣味はバッチリ合うようで、夜景ディナーや寿司デート(?)をしている。

 さらに、蜂須賀の感染症へのピュアな思いには、大門も強いシンパシーを感じているらいく、「身内」のような親しみを抱く関係となっているのだ。

 また、東帝大学病院が新型感染症のクラスターとなることを避けたい蛭間重勝病院長代理(西田敏行)は蜂須賀の手術を強硬に反対。それを押し切って大門と城之内博美(内田有紀)、そして海老名敬(遠藤憲一)や加持秀樹(勝村政信)、原守(鈴木浩介)、大間正子(今田美桜)といったいつもの面々が集合する。

 最終回の3パターン全部盛りの展開なのだ。そこにプラスして新型感染症、立てこもり、感染拡大を恐れた都知事が自衛隊の出動を要請(なぜ!?)……要素が多すぎる、盛り上げまくりの最終回!

「患者は死ぬかもしれない」布石

「私、失敗しないので」な大門未知子だけに、手術を開始するまでにさまざまな妨害やトラブルが起こっても、手術がはじまってしまえば安心……というのがいつものパターン。しかし今回の手術はかなり難易度が高いようで、ドキッとさせられる場面があった。

 手術中、突然、蜂須賀の心臓が停止。必死で心臓マッサージをする大門の姿を見つめる蜂須賀の霊魂(?)が出現。完全にお亡くなりになる寸前の演出だ。

 特に、今シリーズの第8話では、全シリーズ通して2例目となる患者の死が描かれている。そのときも急に心停止し、城之内が必死に心臓マッサージを施すも、そのまま亡くなってしまった。

 大門が他の手術をしている最中だったため、「大門が失敗した」とは言えないが、『ドクターX』ファンがほぼ忘れていた「患者が死ぬこともある」ことを思い出させてくれた回だ。

 あの回があったため、今回の蜂須賀の霊魂演出には「まさか!?」と思わされた。

 正直、第8話で患者が死ぬ必然性はあまりなかったが、最終回のこのシーンへ向けて「患者が死ぬこともある」と印象づけるための布石だったのではないだろうか。結局、開胸して直接心臓マッサージをすることで心拍が再開。蜂須賀の霊魂も消えた。

最後はどうしてもふざけてしまう『ドクターX』

 最終回のクライマックスはここから。無事、手術に成功した蜂須賀は、感染研究センターを閉鎖し、サフィリスタン王国やアフリカの国々を回るという。

「あなたに救っていただいた命で、感染症に苦しむ何億もの人々を救いたい。一緒に……いかがですか? 感染バカと手術バカは結構、最高のパ〜トニャ〜になるんじゃないかと」

 たびたびラブな雰囲気を出してはいたものの、単に野村萬斎の演技が色っぽすぎるからそう見えるだけかもと思っていたが……。やっぱり恋愛を感情持っていたのか!蜂須賀は大門と一緒にアフリカを回りたいようだが、言い方がめちゃくちゃ回りくどい。どうして蜂須賀をこんな童貞の男子高生みたいなキャラにしてしまったのか。

 遠回しに、サフィリスタン王国の近くにタコの産地があるとアピール。「僕と一緒にタコを食べてください!」と誘うが、大門の方は普通に寿司屋でタコを食べると思い込んでいたというオチ。

 これまでのシリーズにはなかった、恋愛をにおわせるエピソードを積み重ね、城之内にも「ハッチ(蜂須賀)のこと、好きなんでしょ?」というかなり踏み込んだ発言をさせている。さすがに一緒にアフリカに行ってしまったらシリーズ終了してしまうため、それはないだろうとは思いつつ、もうちょっと色っぽい結末があってもよかったのでは……。
 
 ラストは絶対にふざけずにはいられない『ドクターX』だ。

次回作では大門未知子の新たな一面を期待

 今回は『ドクターX』10周年ということで、だいぶ「従来のシリーズとは違う」面を見せてくれたシリーズだった。

 松下奈緒演じる「ナースX」や瀬戸朝香、過去シリーズから田中圭、高畑淳子が再登場するなど豪華なゲストが続々登場。内容的にも、大門自身が致死率の高い感染症にかかったり、城之内の親友が死んだり、蜂須賀との恋愛におわせがあったりと、「お約束」を外した展開も多かった。

 久々に、神原晶(岸部一徳)は高額の手術報酬をため込んで何をするつもりなのか問題も描かれている。

 これまで「大門が思う存分手術ができる病院を建てる」とはたびたび語っていたが、いつまでたっても病院を作る気配はなかった。その上、第6話では「これで大門未知子はもう不要ですね」なんて発言も。

 やっぱり晶さん、大門を裏切っているのでは!?

 ……と思ったら、病院を作る資金をためるのにはまだ時間がかかるので、代わりに大門未知子のアンドロイド「未知子ロイド」を作ったという。神原晶の裏の顔が暴かれるのかと思っていたら、やっぱり最後はふざけてしまう……。

 それっぽい伏線を張って視聴者をドキドキさせつつも、あまり深刻な話にはしないでまとめる。これくらいの軽さで見られるのが『ドクターX』の魅力なのだろうか。

 とはいえ、シリーズも10周年で7作目。そろそろ「無邪気な手術バカ」だけではない、大門未知子の新たな一面なんかも見てみたいところだ。

文とイラスト/北村ヂン

北村ヂン

1975年群馬県生まれ。各種おもしろ記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。……といいつつ最近は漫画ばかり描いています。

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