『ドクターX』8話 内田有紀と瀬戸朝香の共演に盛り上がるも結末にモヤモヤ
『科捜研の女』『相棒』と並ぶテレビ朝日の人気ドラマシリーズ、米倉涼子主演『ドクターX~外科医・大門未知子~』第7シリーズ(テレビ朝日系・木曜21時~)第8話。大門未知子(米倉涼子)の盟友でフリーランスの麻酔科医、城之内博美(内田有紀)の旧友(瀬戸朝香)が、重篤な患者として登場する。外科的処置ではなく、東帝大学病院の最先端の内科的治療(ケミカルサージェリー)に望みを託して来院したのだが……。
ものすごく後味の悪い展開
城之内博美(内田有紀)の高校時代の同級生・八神さつき(瀬戸朝香)が患者として登場。二人は、かつて彼氏を取り合ったこともあるほどの仲だったという。結果的に城之内が譲る形で八神と男性が結婚するが、後に離婚。二人ともバツイチとなっての再会だ。
八神の病状は膵神経内分泌腫瘍の多発肝転移。
多くの病院で外科手術は無理だと言われ続けて諦めていたところ、息子・祐希(元之介)が最先端のケミカルサージェリーに対応した東帝大学病院のことを知り、「もう一度だけ治療を受けてくれ」ということで入院を決めたのだ。
八神がケミカルサージェリーによる内科的治療にこだわっているため、大門未知子(米倉涼子)の出番はない。確かに大門自身も、当初は外科手術の適応外だと判断していた。
しかしケミカルサージェリーの効果で腫瘍が小さくなり、外科手術の可能性が出てきたことで、いつもの「私に切らせて」がはじまる。八神を担当する城之内は「分かってるよ、大門さんが切れば可能性が増えるってことぐらい」としつつも、「患者の選択を尊重するのも医者なんじゃない?」と外科手術を拒否。
八神自身も「正直言うとね、どっちでもいいの。手術でもケミカルサージェリーでも」とは言うものの、「祐希の気持ちに応えたい」ということで、ケミカルサージェリーに賭けることを決めているようだ。
祐希にとっては、自分の見つけてきたケミカルサージェリーにこだわってくれることよりも、八神の病気が治ることの方が重要だと思うけどな……。
結果、大門の手術を受けることのないまま、八神の容体が急変して亡くなってしまうという、ものすごく後味の悪い展開に。
『ドクターX』では珍しいバッドエンド
「私、失敗しないので」という決めゼリフの通り、大門未知子は失敗をしない。
医療ドラマにおいて、患者の死亡は定番の展開だが、本作では「失敗しない」縛りがあるため、ほぼ封印されている。
これまでのシリーズで、明確に治療中の患者が死亡したのは一度だけ。第1シリーズに登場した六坂元彦(六平直政)だ。
かつて、大門の父に肝臓がんの手術をしてもらったことで命を救われた六坂だったが、がんが再発。大門と再会し、手術を行う予定になっていたものの、容体が急変して手術前夜に亡くなっている。「手術の日程が遅かった」ことが失敗といえなくもないが、手術中の失敗ではない。
今回の八神も同じパターン。
城之内と思い出話をしている最中に、突然急性心筋梗塞を発症。大門は別の手術中だったため対応ができず、そのまま亡くなってしまった。「大門未知子は失敗しない」が絶対の設定だとすると、患者が亡くなるケースはこのパターンしかないのだろう。
長いシリーズにおいて、2例目の患者死亡。
第1シリーズは大門の昔からの知り合い。今回は城之内の高校時代の同級生。いずれも、メインキャストに近い人物が亡くなっていることで、悲しみが倍増するわけだが……。
今回は、やや強引に「大門の外科手術を受けない」展開を作っていたように感じ、モヤモヤしてしまった。
城之内は、最終的には大門による外科手術を勧めてはいたものの、ヘタに外科手術を拒否していたせいで、治療が間に合わなかったのは明白だ。
大門の失敗ではないものの、城之内の失敗だったのでは……。
外科医は目の前の患者一人しか救えない
八神を救うことができなかった大門に、蜂須賀隆太郎本部長(野村萬斎)は、
「外科医は目の前の患者一人しか救えない。それが外科医の限界です」
と声をかけていた。
蜂須賀は、内科を中心とした感染研究センターを作ることで「世界中にいる何百万も未来の命を救うことができる」と考えている。一方、大門は「目の前の患者」と言い続けてきた。
しかし、大門は別の手術をしていたため、目の前にいない八神を助けることができなかったのだ。
蜂須賀は大門を手駒に加えるため、たびたび揺さぶりをかけていたが、これまではアッサリ断られていた。
ところが今回のラスト、「止まっているお寿司」に誘われた大門は、ものすごくキレキレの動きで「御意ポーズ」を取っている。単に寿司に惹かれたのか、「目の前の患者一人しか救えない」という言葉に心が揺らいだのか。
……まあ、前者のような気もするが、本シリーズでは珍しく、敵役と大門の距離感がすごく近くなっている。これまでになかった展開があるのだろうか?
文とイラスト/北村ヂン
1975年群馬県生まれ。各種おもしろ記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。……といいつつ最近は漫画ばかり描いています。