連載

年末年始の帰省時に高齢の親が「認知症かも?」と思ったらチェックすべき5つのこと

 認知症の母を東京から通いで介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。年末年始は「あれ?もしかして認知症かも?」というサインを確認しやすい時期でもあるという。遠距離介護が始まって今年10年目となる工藤さん流の認知症を見抜く5つのポイントとは。

年末年始にチェックしたい認知症5つのサイン

 今度の年末年始こそ、久しぶりに親に会おう!と考えている方もいるかもしれません。

 この年末年始の時期にしかやらないことは、意外と多くあります。1年ぶりにやるべき準備を忘れてしまった、新型コロナウイルス感染拡大前はできていたことが、急にできなくなってしまったなど、親の変化に気づきやすい時期と言えるでしょう。

 そんなときにチェックして欲しい、年末年始に現れやすい認知症5つのサインをご紹介します。

1.年賀状がうまく書けない

 年賀状を書いて、ポストに投函する。一見シンプルに見えますが、やるべき準備はたくさんあります。

 まず年賀状を出す相手を考え、必要な枚数を購入しなければなりません。また、相手の住所を調べるために、もらった年賀状をどこにしまったかを思い出したり、住所録を見つけたりする必要もあります。

 そしてその相手と、この1年何があったかを思い出して一言添えますが、覚えていないと何も書けません。

 これだけの準備ができて初めて、元日に年賀状が届くわけですが、筆まめだった親が急に一言を添えなくなっていたり、そもそも誰に年賀状を出したらいいか分かっていなかったり、年賀状の準備自体を忘れていたら、認知症のサインかもしれません。

2.お年玉の準備ができない

 お年玉の準備も、実はたくさんのハードルがあります。

 まず、お年玉をあげる相手の年齢が分かってないといけません。小学生なのか中学生なのか、ひょっとしたらお年玉をあげる必要のない年齢になっているかもしれません。

 相手の年齢が分かったうえで、お年玉の相場がいくらなのかを理解しておく必要がありますし、前回渡したお年玉の金額を覚えているかどうかも大切です。

 例えば、小学1年生の孫に3000円のお年玉をあげた次の年から、急に1万円に増額されたり、逆に1000円に減ってしまったりなど金額が安定しない場合は、お年玉の相場も、前回渡した金額も忘れてしまっているかもしれません。

 また、お年玉をあげる相手とポチ袋のデザインが合っているかもチェックしてみてください。お年玉の準備自体を、すっかり忘れる方もいます。

3.年末年始に食べる料理の準備ができない

 年末に年越しそばを必ず食べる、元日の朝にはお雑煮を食べるなど、それぞれの家の習慣があると思います。特にお雑煮やおせち料理はめったに作らないので、きちんと準備できるかチェックしましょう。

 お雑煮にお餅が入ってない、おせち料理の味付けが薄すぎるなど、料理の材料や味の変化にも注意してみてください。

 母は料理が得意で、年越しそばもお雑煮もおせち料理も作る人でしたが、認知症が進行した今は、いつもと同じ朝食メニューの目玉焼きともやし炒めを作ります。

4.オンライン帰省の約束を覚えていない

 オンラインでの帰省を予定されている方は、親とオンライン帰省の日時を約束してみてください。

 例えば、1月1日の15時にテレビ電話で連絡すると約束します。その時間に連絡した際の、親の反応をよく見ておきましょう。

 約束の時間に連絡したのに、「何の用?」と言われたり、オンライン帰省の約束をしたときに話したばかりなのに、「久しぶりね」と言われたりすると、認知症のサインかもしれません。

 会話の流れの中でも、確認できることはたくさんあります。例えば、2022年の干支を聞いてみたり、紅白歌合戦について話してみたりなど、直近のイベントについて質問しながら、うまく答えられるか確認してみましょう。

5.飼っているペットの体型が急に変化した

 もしペットを飼ってる場合は、親自身ではなくペットの体型に認知症のサインが現れる場合があります。

 ペットの犬が急に太り出したので、よくよく調べてみたところ、飼い主である親が餌を1日に何度もあげたことが原因でした。ペットに餌をあげたこと自体を忘れてしまったり、逆に餌やり自体を忘れたりすると、認知症のサインかもしれません。

 以上、5つのサインをご紹介しました。

 これらに該当したからといって、認知症とは限りません。ただこれまで以上に、親の様子を注意深く見守るきっかけになりますし、認知症について情報収集を始めるきっかけにしてもいいと思います。

 また、親に認知症の兆しがあっても、取り繕いで子どもが気づかないケースもあります。

 例えば、おせち料理の味が薄くなって、入れるべき調味料を忘れてしまった場合、親に「健康のために味を控えめにした」と言われれば、多くの子どもは納得するでしょう。それでもコミュニケーションをたくさん取ると、少しずつ親の取り繕いに気づくようになると思います。

 コロナの影響でしばらく親に会えなかった分、変化に気づきやすくなっているはずなので、この年末年始は認知症のサインを探ってみてください。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)。音声配信メディア『Voicy(ボイシー)』にて初の“介護”チャンネルとなる「ちょっと気になる?介護のラジオ」(https://voicy.jp/channel/1442)を発信中。

●認知症の母が午後2時に焼いた”朝ご飯”の目玉焼き…息子がとった行動は?

●認知症が進行していく母に「優しくありたい」と願う息子の心の葛藤と5つの壁

●認知症の母が電子レンジの使い方が怪しい?息子が試したフライパンと置き手紙の意味

ニックネーム可
入力されたメールアドレスは公開されません
編集部で不適切と判断されたコメントは削除いたします。
寄せられたコメントは、当サイト内の記事中で掲載する可能性がございます。予めご了承ください。

最近のコメント

シリーズ

介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
神田神保町に誕生した話題の介護付有料老人ホームをレポート!24時間看護、安心の防災設備、熟練の料理長による絶品料理ほか満載の魅力をお伝えします。
「老人ホーム・介護施設」の基本と選び方
「老人ホーム・介護施設」の基本と選び方
老人ホーム(高齢者施設)の種類や特徴、それぞれの施設の違いや選び方を解説。親や家族、自分にぴったりな施設探しをするヒント集。
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
話題の高齢者施設や評判の高い老人ホームなど、高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップ。実際に訪問して詳細にレポートします。
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
介護食の基本や見た目も味もおいしいレシピ、市販の介護食を食べ比べ、味や見た目を紹介。新商品や便利グッズ情報、介護食の作り方を解説する動画も。
介護の悩み ニオイについて 対処法・解決法
介護の悩み ニオイについて 対処法・解決法
介護の困りごとの一つに“ニオイ”があります。デリケートなことだからこそ、ちゃんと向き合い、軽減したいものです。ニオイに関するアンケート調査や、専門家による解決法、対処法をご紹介します。
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
話題のタレントなどの芸能人や著名人にまつわる介護や親の看取りなどの話題。介護の仕事をするタレントインタビューなど、旬の話題をピックアップ。
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護保険制度の基本からサービスの利用方法を詳細解説。介護が始まったとき、知っておきたい基本的な情報をお届けします。
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
数々ある介護のお悩み。中でも「排泄」にまつわることは、デリケートなことなだけに、ケアする人も、ケアを受ける人も、その悩みが深いでしょう。 ケアのヒントを専門家に取材しました。また、排泄ケアに役立つ最新グッズをご紹介します!