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認知症の母が電子レンジの使い方が怪しい?息子が試したフライパンと置き手紙の意味

 作家でブロガーの工藤広伸さんは、岩手・盛岡でひとり暮らしをする認知症の母を遠距離介護して9年目。コロナ禍で認知症の進行が心配な母だが、電子レンジの使い方が怪しくなっているという。そこで工藤さんが取った対策とは?

認知症の母が使う電子レンジの話

 母の認知症の進行とともに、電子レンジの使い方が怪しくなっています。

 これまであった電子レンジに関するトラブルといえば、炊飯釜に入ったご飯を釜ごとレンジで温めてしまったり、温め終わった料理をレンジの中に残し、数日後に腐ったニオイで取り忘れに気づいたりしたこともありました。

 また、電子レンジの中のターンテーブルがなくなって、なぜか冷凍庫の中からキンキンに冷えた状態で見つかったこともありました。

→認知症の母の「ものとられ妄想」息子が辿り着いた究極の解決法とは?

 いろいろな電子レンジのトラブルを経験してきましたが、いよいよ本腰を入れて対策を練らないといけない状況になったのです。

ひとり暮らしで認知症の母の食事はどうしてる?

「くどひろさんのお母さまは、認知症でひとり暮らしということですが、食事は誰が準備しているのですか?」と、よく質問されます。

 認知症が進行した今でも、母は自分で料理ができます。ただ、塩や砂糖、しょうゆなど、シンプルな調味料しか使えませんし、料理といっても、ただ炒めるだけなので、料理に名前をつけられない、味も見た目も不思議な料理が完成します。

 食材はヘルパーさんが買い物をしてくれるので、母は冷蔵庫にある野菜や肉を使って、炒めたり焼いたりできます。おそらくですが、70年近く料理を愛し、料理で仕事をしてきた母には能力の貯金が相当あったから、今でもかろうじて料理ができるのだと思います。

 料理を作り終わったらすぐに食べてしまうので、これまでは電子レンジを使う機会はほとんどありませんでした。

 ところが最近は、食材の使い方が分からなくなってきているようで、冷蔵庫に残っている食材が増え始めました。栄養面も心配なので、母と同じ岩手県に住むわたしの妹が、1週間に1回程度、料理を作ってラップをして保存するようになったのです。

 母は自ら料理ができると思っているので、プライドを尊重するためにも、妹の食事のサポートをたまにお願いする方法に変えたのです。ところが…。

いよいよ電子レンジの使い方が怪しい…

 今度は食材ではなく、妹が作った料理を母が食べずに冷蔵庫に残っているケースが増えてきました。最初は嫌いな食材があるのかもしれない、味の好みが変わったのかもしれないと考えたのですが、好き嫌いのない母なので別の理由を探しました。

 しばらく理由が分からず困っていたのですが、母が大好きなコーヒーを用意しているときに答えが見つかったのです。

 コーヒーカップに粉末のインスタントコーヒーと砂糖を入れ、水を注いで、カップを電子レンジに入れました。

 以前は鍋でお湯を沸かしてから、カップに注いでコーヒーを飲んでいたのに、手順が変わってしまったのかと思いながら様子を見ていたら、電子レンジのところで動きが止まったのです。

 母はわたしの顔を見て、「ねぇ、これ、どうすればいいんだっけ?」と言ったのです。

 電子レンジで料理を温める方法を、忘れてしまったようです。このとき、妹の作った料理も、温め方が分からないから、手をつけないのかもと思いました。

 電子レンジが使えないとなると、温かい食事が食べられません。遠距離介護で、ずっと付き添うこともできません。温かいご飯を食べて欲しいと考えたわたしは、ある方法を試してみました。

母に温かい料理を食べてほしい

 遠距離介護が終わって、わたしが帰京するときだけ行っている食事の工夫をご紹介します。

 わたしは母をデイサービスに送り出したあと、いつも夕ご飯の準備をしてから、東京へ帰ります。電子レンジが使えない母のために、あえてラップせず、鍋やフライパンに料理をそのまま残しておき、ガスで温めてもらうようにしたのです。

 電子レンジの使い方が分からなくなっても、レンジ以上に長年使ってきたガスだけは、今も使えます。火の消し忘れや鍋の温度が上昇し過ぎたとき、自動で消火するガスレンジなので、火事の心配もありません。

 ご飯は、母がデイから帰ってくる時間に合わせて予約で炊けば、温かいご飯が食べられます。ここまで準備をして、あとは置き手紙を書いて終了です。

 ただ、わたしが帰京するときの話なので、日常的な対策にはなっていません。しばらくこの方法で試してみて、うまくいった場合は、妹にもこの方法で料理の保存をお願いするつもりです。

 いずれヘルパーさんに料理を作ってもらったり、宅配弁当を利用したりしなければならない時期がやってくると思います。それまでの間、母には自分で料理を作ってもらいつつ、たまには栄養のある妹の料理を食べてもらいたいと思っています。

 認知症の進行を少しでも食い止め、自立した生活を長く送ってもらうためにたどり着いた方法です。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)。音声配信メディア『Voicy(ボイシー)』にて初の“介護”チャンネルとなる「ちょっと気になる?介護のラジオ」(https://voicy.jp/channel/1442)を発信中。

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