高木ブー快挙 日本武道館に出演した最高齢アーティストに!「もっと記録を更新したい」と意欲満々
ドリフとももクロとの武道館ライブは、大盛況のうちに幕を閉じた。88歳でステージに上がったブーさんは、「日本武道館に出演した最高齢アーティスト」の記録を樹立。「記録も光栄だけど、この歳でやれてることが嬉しいよね」と控えめに喜びを語る。芸能史に残る“奇跡のステージ”を終えた気持ちと、ここだけの後日談を聞いた。(聞き手・石原壮一郎)
日本武道館は特別な場所
おかげさまで11月18日の「『ドリフ&ももクロ ライブフェス』~コントもあるョ!全員集合」は、無事に終わりました。会場に来てくれた人にも配信を見てくれた人にも、そしてすべての出演者とスタッフにも、心から感謝してます。
やっぱり日本武道館は、僕たち芸能の仕事をしている人間にとっては特別な場所なんだよね。加藤(茶)も仲本(工事)も、いつもより気合が入ってるみたいだった。長い付き合いだから、3人で「55年ぶりに武道館のステージに立てて嬉しいね」なんて言い合ったりはしないけど、当日のリハーサルのときに加藤が会場を見渡して、ポツンと「ずいぶんきれいになったなあ」って呟いたの。その一言で、言いたいことが伝わってきた。
編集部が日本武道館に電話で確認してくれたんだけど、出演したアーティストの最高齢記録を僕が塗り替えたんだって。これまでの記録は加山雄三さんが2014(平成26)年に作った77歳だった。僕は88歳だし、78歳の加藤(茶)も80歳の仲本(工事)も、当時の加山さんより年上だね。「出演したグループの平均年齢の最高記録」ってことでもあるのかな。「単独公演」ってことでは加山さんが最高齢なんだけどね。
記録も光栄だけど、この歳で演奏やコントをやれていることが嬉しいよね。5人いたのが3人になったのに、こうして武道館に出られるなんて、ある意味“奇跡”だと思う。歌ありコントあり演奏もありで、2時間があっという間だった。雷様のコントの前とあとは、急いで衣装を着替えなきゃいけない。娘のかおると旦那さん、あと音響のスタッフとか総勢5人がかりで、手早く脱がせたり着せたりしてくれた。
真っ暗な中にペンライトやサイリウムの光が揺れてる光景も、すごくきれいだった。2階席の奥のほうでも光が揺れてて、「あれも誰かが振ってくれてるんだな」と思いながら手を振ってた。どの席の人にも「来てよかった」と満足してもらいたいもんね。「全員集合」のときは、観客席に座っている人の顔がわりとはっきり見えたのを覚えてる。あれはあれでウケてる様子が伝わってきてよかったけどね。
ライブ当日は、いつもお願いしているスポーツトレーナーの先生が楽屋に待機してくれてた。リハーサルの前にも、集合時間の1時間ぐらい前に行って、じっくりマッサージをしてもらったんだよね。リハーサルが終わったら、またマッサージ。僕がやってもらっているのを見て、仲本も「気持ちよさそうだな」って言って少しやってもらってたな。
ステージが始まる前に、出演者みんなで出席を確認する儀式をやったのも楽しかった。ももクロがライブの前にいつもやってるんだってね。みんなで輪になって声を出して、たしかにテンションが上がったな。僕は「7番」で、順番が回ってきたら「ナナ」って言わなきゃいけない。でも、東京生まれだから7は「ヒチ」なんだよね。。娘のかおるにこっそり「ヒチじゃダメかな」って相談したら、「お父さん、そこはこだわらなくていいでしょ」って笑われちゃった。
コントもいっぱいあったけど、まあまあうまくいったんじゃないかな。高城れにちゃんの雷様のコスチュームは、最初はパンツルックだったんだけど、僕のリクエストでスカート風のシルエットにしてもらった。ブルー&紫のリボンを付けてたのも、僕のアイデア。よく似合ってたよね。
「雷様のコントは、まだまだやりたいことがあります」
翌日、加藤に電話して「昨日はお疲れ様。ありがとう」って伝えたんだよね。そんなのしたことないんだけど、なんかかけたくなってさ。コントの中で僕が小さなミスをしちゃって、それを加藤がさりげなくカバーしてくれた。たぶん見てる人は誰も気づいてないと思うけどね。加藤も「楽しかったね。またやろうよ」って言ってたな。
長さんじゃなくて僕が引っ張る形の雷様コントは、まだまだ工夫の余地がある。れにちゃんは素晴らしかったけど、僕自身に関しては反省点もあるんだよね。あそこはああすればよかったな、今度はこんなこともしてみたいなんて考えて、あの日はなかなか眠れなかった。コントって「これで完成」がないから、どうしても欲が出てくるんだよね。
今度は東京国際フォーラムや渋谷公会堂(現・LINE CUBE SHIBUYA)でやってみたい。ステージの横から二階建ての家のセットが出てきて、僕らが「かあちゃん、ただいまー」って言うコントをまたやれたら最高だね。もちろん、武道館のステージにも何度だって立ちたい。立つたびに最高齢記録を更新できるしね。なんか、どんどんやりたいことが増えちゃうな。
ブーさんからのひと言
「無事に日本武道館のライブが終わってホッとしました。最高齢記録だったのはビックリでしたが、まだまだやりたいことがある。次のステージを楽しみにしていてください。頑張るぞ~!」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。6月に初めての画集『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)を上梓。毎月1回土曜日20時からニコニコ生放送で、ドリフの3人とももクロらが共演する『もリフのじかんチャンネル ~ももいろクローバーZ×ザ・ドリフターズ~』が放送中(次回は12月11日)。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。