『ドクターX』6話晶さんが大門を裏切るか?「大門未知子はもう不要ですね」
『科捜研の女』『相棒』と並ぶテレビ朝日の人気ドラマシリーズ、米倉涼子主演『ドクターX~外科医・大門未知子~』第7シリーズ(テレビ朝日系・木曜21時~)第6話。第1シリーズからのおなじみキャラ・原守(鈴木浩介)が東帝大学病院に戻ってきた。第4話で海老名敬(遠藤憲一)が飛ばされてしまったことで、コメディ要員不足をさみしく思っていた視聴者としてはうれしい展開。ただ“患者に寄り添う原守”のイメージからはだいぶキャラ変しての再登場だった。シーズンすべてを観てきたライター&イラストレーターの北村ヂンが考察します。
原守、フリーランスになって復帰
原は、前作で東帝大学病院をクビになって以降、中国に渡っており、まさかのフリーランス&神原名医紹介所に所属しての復帰。
しかし、第1シリーズから登場しているにもかかわらず、大門未知子(米倉涼子)には、幼なじみのケーキ屋キンちゃんと混同され、「キンちゃん」と呼ばれ続けているくらい凡庸な人。名医紹介所に所属するような医師ではないはずだが……。
実は原は、中国一のITグループの御曹司・王弥六(吉田隼)から絶大な信頼を得ており、多額の報酬が期待できると考えた神原晶(岸部一徳)が、王弥六の手術とセットでスカウトしたのだ。
「ファザコン……じゃなくて、晶コンプレックスってやつか」とからかわれるほど晶に依存している大門は、嫉妬心をむきだしにして、
「キンちゃん、名医じゃないじゃん!」
と訴えるが、晶は、
「未知子、名医というのは腕だけじゃないのよ。患者に寄り添うのも立派な武器。未知子も少しは人の気持ちが分かるようにならないと、いつか失敗しちゃうわよ」
とたしなめる。
ただ、原が王弥六からの信頼を勝ち取ったのは、“患者に寄り添う”力を発揮したからではなかった。
『ブラック・ジャック』のように奇跡を起こすスーパードクターに憧れる王弥六は、生体ドミノ肝移植や、自家培養軟骨移植併用滑膜肉腫切除といった世界初症例を次々に成功させている東帝大学病院の名前を覚えていた。
要は、大門が成功させた手術なのだが、原も参加していたことから、「先生がやったの!?」と勘違いされてしまったのだ。
目をキラキラさせる王弥六に乗せられて原も、「まあ、僕に失敗はないけどね」なんて言ってしまう。悲しいき凡人……。
あくまで凡人にはシビアな『ドクターX』
原としては、東帝大学病院に戻れば大門の協力を得て手術を成功させられるはず……というプランだったようだが、(嫉妬した)大門から助手を断られ、さらに「衝突がん」という難しい症状まで見つかったことから、手術を断念せざるを得なくなってしまう。
「君を治したくて、治せる自信もあったから、スーパードクターになりきろうとした。でも僕には無理だった、ごめんなさい」
うそをつき通すことはできず、しっかり謝罪をする原。凡人だけど善人だ。結局、スーパードクターは大門だと気付いた王弥六は、中国に帰って大門に手術をしてもらうことにする。
しかし帰国の直前、王弥六が倒れたことで、原が緊急手術をすることに。
普通のドラマだったら、天才ではない外科医が自分の弱さを認めた結果、なんとか手術を成功させる……みたいな感動展開になってもよさそうなもの。だが本作では、凡人はあくまで凡人。シビア!
あくまで手術を成功させるのは天才・大門未知子で、凡人医師はおまけというポジションだ。
スーパードクターのふりをしていたとはいえ、本当に王弥六のことを考え、寄り添っていた原。結局、いいところをすべて大門に持っていかれてしまったのは気の毒だが……。
フリーランスを辞め、東帝大学病院に復帰した原は、「ああっ、組織っていいですね。御意に忖度、ノープレッシャー! ストレスフリー!」なんて言っていた。
明るく組織の歯車をやっているようなので、これはこれでいいのか。
晶が大門を裏切る!?
今回は、晶と大門の微妙な関係性も描かれた。前述の通り大門は、晶が原をスカウトしたと知って嫉妬するくらい依存している。大門にとって晶は父親のような存在だ。ただ、晶の方が大門をどう思っているのかは微妙なところだ。
もともとは、大門未知子の父がやっていた診療所がつぶれた際の多額の借金を、肩代わりして払ったのが晶だった。大門は、その借金返済のために神原名医紹介所で働いていたわけだが、毎回、数百万〜数千万の報酬を得ているわけで、さすがにその借金は完済している。
ところが、借金がなくなって以降も大門にはほとんど金を渡していないということが発覚。晶と大門の関係が険悪になったこともあった。結局それは、大門未知子が思いっきり手術ができる最新設備の整った外科病院を作るために貯金している……ということだったが、本心からそう考えているのかどうかは不明だ。
さらに第3シリーズのラストでは、晶が隠していた金を使い込んで、大門が宇宙旅行に行くという、わけの分からない展開もあった。
その後、手術報酬はますます高額になっていったが、それが大門の手に渡っている様子はないし、晶が病院設立に向けて動いている様子もない。
「こんなにいっぱいお金を取って、一体何にお使いなんでしょうか?」
という蛭間院長代理(西田敏行)の言葉も、もっともだ。そして、今回のラスト。晶は誰かに電話をかけ、こんなことを言っていた。
「残りの分、お支払いする準備が整いました、ありがとうございます。では正式にご契約いただけるということで。これで大門未知子はもう不要ですね」
またしても晶が大門を裏切って、手術報酬を何かに使い込んでいるんじゃないか説が……。
『水戸黄門』のように「おなじみのパターン」の繰り返しで人気を博してきた本作。しかし第7シリーズでは、マンネリを打破する意図があるのか、フリーランスのナースが登場したり、原守が神原名医紹介所に入ったり、ちょっと変化球も混ざってきている。
第1シリーズから続く晶と大門の関係にも変化が訪れるのだろうか?
文とイラスト/北村ヂン
1975年群馬県生まれ。各種おもしろ記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。……といいつつ最近は漫画ばかり描いています。