代表的な認知症は3種類 アルツ型、脳血管性など原因異なる
厚生労働省が発表した推計によると、今から10年後には65才以上の5人に1人が認知症になるとみられている。認知症には、熱や痛みをともなう病気のようにわかりやすく、はっきりした症状があるわけではない。しかも徐々に進行するため、日常生活ができなくなってから判明する場合もあるからやっかいだ。
「認知症を心配して『もの忘れ外来』を受診する人の約3割は、心身の不調によるものです。発症前に積極的に心身の健康維持や増進を図ろうとすることで、認知症を予防できます」
そうアドバイスするのは、脳神経外科医の視点から認知症診療を展開し、著書に『認知症の「家族」と暮らす技術(テク)』(世界文化社)などがある、おくむらメモリークリニック院長の奥村歩さん。
認知症にも種類がある。代表的なものは以下の3つだ。
【1】アルツハイマー型認知症
認知症の約6割を占める。脳内に蓄積したアミロイドβというたんぱく質が脳の神経細胞にダメージを与え、脳が委縮して起こる。記憶障害、判断能力や意欲の低下、見当識障害など、症状はさまざまだ。
【2】脳血管性認知症
脳出血や脳梗塞などで脳内の血管に障害が発生し、酸素が行きわたらなくなって神経細胞が死滅して起こる。ダメージを受けた脳の部位によって症状は異なり、脳の血流状態により症状は日ごとに大きく変動する。認知症の約2割を占める。
【3】レビー小体型認知症
大脳と脳幹の神経細胞の中にできた異常なたんぱく質やレビー小体が、神経細胞を壊してしまう病気で、認知症の2割弱を占める。アルツハイマー型に似た症状が出るが、幻視、パーキンソン症状が出ることも。
認知症を発症してはいないものの、第4の症状として最近注目なのが、予備軍といわれる軽度認知障害(MCI)。
これは認知症を発症する前の数年間に多く見られ、認知機能にやや問題はあるものの、日常生活には支障が見られない。
著書に『死ぬまで家族に迷惑をかけないために今すぐ知っておきたいボケない技術』(かんき出版)などがある神経内科医で米山医院院長の米山公啓さんは、こう言う。
「MCIを放置しておくと5年間で約半数が認知症を発症しますが、適切な治療や生活習慣の改善で進行を阻止することもできます」(米山さん)
MCIになると、認知症になりやすいものの、約3割の人は正常な認知機能を取り戻したという報告もある。早めの予防が不可欠だ。
※女性セブン2015年11月5日号