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暮らし

老後は「施設」と「自宅」どっちがお得?費用は?在宅介護の意外な出費とは…

 老後の住まいは老人ホームなどの「施設」か、住み慣れた「自宅」か。介護が必要となる老後は、老人ホームか在宅か…。ランニングコストや費用など金銭面から両者を比べてみたら、意外な事実が判明! 専門家の意見と実体験を交えてレポートする。

ひとり暮らしの最期…孤独死は増え続ける

 住み慣れた家で気ままに暮らし、体になじんだ畳と布団の上で穏やかに旅立ちたい──多くの人が思い描く“理想の最期”だが、現実はそうはいかず、「孤独死」とみられる死者の数がここ十数年で急増している。

 東京都監察医務院が公表するデータによれば、2003年の、東京23区内の65才以上の独居者が自宅で死亡した人数は1451人だった。ところが2018年には、3882人と激増している。高齢者のひとり暮らしは自由な半面、誰にも看取られることなく、亡くなる人が多いのが実状だ。しかも、場合によっては体調の急変から、もがき苦しんで亡くなることもある。

 そうなると、最期を迎える場所として、常に第三者が常駐していて、安心して過ごせる「施設」という選択肢も浮上する。「自宅」と「施設」では、どちらがより幸せな「終の棲み処」なのか。

老後のひとり暮らし…施設VS自宅の費用は?

 金銭面を比較してみよう。「生命保険文化センター」の調査によれば、介護期間の平均とされる5年間で考えると、施設の場合、1人あたりの生活費は総額708万円かかる一方、在宅ならば345万円ですむという。これだけを見れば、圧倒的に在宅の方が安く上がるということになる。制度を使いこなすことでさらに支出を減らすことができる。

施設:708万円

自宅:345万円

自宅は介護保険制度で費用は軽減

 介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが話す。

「自宅で過ごす場合、手すりをつけるなどのリフォームや入浴時に滑らないようにするための介護用の椅子など補助器具のレンタルや購入が必要になりますが、これらは介護認定を受けていれば、購入金額の最大9割が戻ってくる。こうした制度を知り、賢く使うことができれば、自宅で過ごす方が費用負担はさらに軽減されるでしょう」

→介護が始まるときに慌てない!要介護認定の申請、介護保険サービス利用の基礎知識

→介護保険で利用できるサービスの種類、施設は?|【介護の基礎知識】公的制度

施設は軽費老人ホームが最安値

 一方、施設はどんな場所を選ぶかで金額が大きく変わってくる。介護コーディネーターの山川仁さんが説明する。

「“高齢者施設”と一口にいっても、その種類はさまざま。自立した人向けには、民間の『サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)』や公的施設の『軽費老人ホーム』などがある。一方、要介護者向けには、民間の『介護付き有料老人ホーム』『住宅型有料老人ホーム』、公的施設の『特別養護老人ホーム(特養)』などがあります」

 自立したシニアの場合、公的施設の「軽費老人ホーム」が最も利用費が安い。

「『軽費老人ホーム』に入る人は、食事の確保が難しかったり女性のひとり暮らしで防犯面が不安だというケースが多い。ただし生活に困窮している人が優先的に入居できるということもあり、自治体によって異なるものの、家族による援助を受けることが困難な人で60才以上限定などと、入居対象者は限られています」(山川さん)

 施設は毎月の費用がかかるものの、事前に金額が決まっているため、だいたいの負担額が予見しやすいというメリットがある。

自立した生活を送るシニアに適した高齢者施設の表

自立した生活を送るシニアに適した高齢者施設と費用の目安

★公的施設

・軽費老人ホーム

 自立した生活に不安があり身寄りのない高齢者が、自治体の助成により低料金で入居できる施設。自治体によって異なるが年齢や収入に制限がある。

★民間施設

・サービス付き高齢者向け住宅

 段差がない、浴室に手すりがあるなどバリアフリー型施設。有資格者の相談員が常駐し、安否確認と生活相談サービスが受けられる。値段の幅も広くそれによってサービス内容も異なる。
・健康型有料老人ホーム

 自立状態の高齢者を対象とした食事付きの施設。ジムや温泉などがあるところも。初期費用が数千万円と高額なところが多い。

・高齢者向け優良賃貸住宅

 基本的に60才以上が入居対象で、バリアフリー仕様。緊急時対応サービスや安否確認サービスなどが受けられる賃貸住宅。

・シニア向け分譲マンション

 高齢者を対象にした分譲マンション。所有権を有し、売却、譲渡、賃貸、相続などが可能な資産であり、家事援助などサービスはさまざま。

→高齢者施設の種類と選び方|元気なうちから探すのが◎チェックポイントは?

実例:在宅介護を選んでリフォーム貧乏に!?

 在宅には“隠れた出費”がある。都内に住む大杉強さん(57才・仮名)がため息をつく。

「昨年、ひとり暮らしの母親を実家で見送りましたが、要介護認定は受けていなかったため、リフォーム代や介護用品代はほぼ自腹。

 ヘルパーさんも頼んだのでその分も自己負担がかさみました。そして忘れがちなのが電気代。夏も冬もずっと在宅しているので、冷暖房代がかかってかなりの額になりました。寒いと病気になりやすいからと、床暖房と浴室暖房も取り付けたため、それも上乗せになった。施設に入っていた方が、安上がりだったのではと思います」

 在宅における出費は青天井。上限を決めるなどルールを作らなければ、すぐにお金がなくなってしまうので気をつけたい。

→シニアの自宅リフォーム術チェックポイント|住宅改修は定年前にやるべき

教えてくれた人

介護・暮らしジャーナリスト・太田差惠子さん、介護コーディネーター・山川仁さん

※女性セブン2020年11月5・12日号
https://josei7.com/

●老後の住まい安心「リフォーム術」で後悔しない終の棲家を

●女ひとり長生きしたくなる理想の住まいを公開!エッセイスト岸本葉子さん

●ひとりで最期まで自宅で快適に暮らすための21のルール

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