女性は男性より6年長生きする!「おひとりさま」生活を快適にする心のケア法
子供は独立し、夫に先立たれ、広い家に自分だけ。買い物以外で外出することもなく、もうしばらく、誰とも口をきいていない──誰しもそんな老後を想像したことがあるだろう。しかし、悲観しないでほしい。「おひとりさま」を明るく生きるのは、そんなに難しくない。
女性は男性よりも6年も長生きする
日本人の平均寿命は世界トップクラス。7月31日に厚生労働省が公表したデータでは、女性は87.45才で7年連続、男性は81.41才で8年連続の過去最高記録を更新した。
日本人全体の寿命は延びたが、それに伴い“寿命の男女格差”が開いてきているのも事実。平均寿命が50才前後だった昭和20年代は、男女の寿命の差は3才ほどだったが、現在は女性が男性より6年も長く生きることになる。つまり、結婚していても夫が先に亡くなり、6年間は“おひとりさま”の時間を過ごす可能性が高いということだ。
「おひとりさま」は、誰もがいつか必ず直面する問題
「私には頼れる子供がいるから大丈夫」「夫はまだ元気だし」「お友達だってたくさんいるのよ」──だが、本当に安心していいのだろうか。
『1日誰とも話さなくても大丈夫』(双葉社)の著者で精神科医の鹿目将至(かのめまさゆき)さんは「いつも“誰かが助けてくれる”と思ってはいけない」と話す。
「たとえ子供がいても、いざというときにすぐ助けてもらえるとは限りません。子供にもそれぞれの生活があって、“仕事が忙しいから無理” “家庭があるから”と言われるかもしれない。『おひとりさま』は、誰もがいつか必ず直面する問題です」(鹿目さん)
一日中誰とも話さずに暮らす日々が訪れることも、覚悟しなければならないのだ。しかし、だからといって不安になることはない。
ちょっとした心のケアを身につければ、“寂しいひとり暮らし”は“悠々自適なおひとりさま生活”に変わる。
「おひとりさま」生活を快適にするには?
「そもそも“人と話したい”という欲求は人間の本能」だと語るのは、「おひとりさま向上委員会」元代表の葉石かおりさん。
「原始の時代から人は集団で狩りをして暮らし、ひとりでは生きてこなかった。気持ちを吐き出すことができないと、心が追い詰められそうになることもあるでしょう。でも、ひとりで暮らしているからといって、本当に孤独な人は少ない。たとえ頻繁に会うことはなくても、隣人や親戚などとの“ゆるいつながり”があることを忘れずにいれば、“おひとりさま”の生活を楽しめます。いつお風呂に入るかも、何を食べるかも自由で、自宅も好きに使える。だんだんと“寂しい”が“心地よい”に変わっていきます」(葉石さん)
●テレビを無音にする
広くなった自宅が寂しいからといって、テレビをつけっぱなしにしている人も多いかもしれない。しかし、気持ちが沈みそうなときほど、テレビは“毒”になりかねない。ネガティブな情報に不安が助長されて、余計に落ち込んでしまうことがあるからだ。
「テレビから目と耳の両方に一方通行で情報が流れてくるので、体への刺激が非常に強い。内科の医師は“自宅で血圧を測定するときはテレビを消してください”と患者さんに話しています。寂しさを紛らわせるためなら、音を消した状態にするのがおすすめです」(鹿目さん・以下同)
テレビを無音にすることで、ネガティブな情報が耳から入ってくるのを防ぎ、刺激を和らげながら、寂しさを紛らわせてくれる。特に最近は不安をあおるニュースが多いので、影響は計り知れない。「なんだか気持ちが沈む」と感じているなら、テレビの刺激が強すぎるのかもしれない。
●全身を勢いよく湯船に沈める
心の疲労回復には、「アルキメデス風呂」が効果てきめんだという。
「湯船すれすれまでお湯をはったら、浴槽に両足を入れて、勢いよく全身を沈めるだけ。ザバーッとお湯があふれるのを、“もったいない”と思うかもしれません。しかし、“毎日がんばっているのだから、これくらいのぜいたくは許される”と思っていいのです。心の中にたまった孤独や不安が、お湯と一緒に滝のようにあふれて流れていくのをイメージしてください。ただし、熱すぎるお湯や長湯は逆効果。心臓に負担がかかりやすいので、持病がある人は避けて」
●あおむけに寝て全身の力を抜くヨガの屍のポーズをする
風呂に入ってもリラックスできないほどストレスや不安がたまっているなら、布団の中で強制的に体を休ませるといい。布団にあおむけに寝たら、手を自然に開いて、手のひらを上に向ける。脚を軽く開いて目を閉じ、一度全身に思いきり力を入れてから、足から順番に力を抜いていくことで、全身の緊張がほぐれる。
「ヨガの『屍(しかばね)のポーズ』といいます。足の次は腰まわり、胸、肩、のど、奥歯の噛みしめ、口元、目、眉間のしわ…と、下から順番に脱力します。血行がよくなって自律神経が整い、筋肉、内臓、神経を休めることができます」
●ふわふわしたものを触る
ひとりで暮らしていると、わけもなく不安に襲われたり、「なんとなく落ち着かない」という気持ちになることもあるかもしれない。そんなときも、簡単な方法で解消できる。
「毛布やタオル、ファーなど、ふわふわしたものを触るだけで、“幸せホルモン”のオキシトシンが分泌されることがわかっています。オキシトシンは、人と直接触れ合うことで分泌され、幸福感を感じさせる作用がありますが、人でなくても、ふわふわしたものなら代用が利くのです」
ふわふわしていれば、タオル、クッション、動物など、なんでもOK。自分が心地いいと感じるものがあれば、それが心を落ち着かせてくれる“特効薬”になるのだ。
【まとめ】精神科医が教える“ひとりぼっちの心に効くワザ”
●寂しいからテレビをつけっぱなしにしているが、暗いニュースばかり流れてくる
→音だけ消してつけっぱなしにする。
●ストレスがたまっている
→浴槽いっぱいにお湯をためて「ザバーッ」とあふれさせながらつかる。
●不安を感じる
→大の字に寝転んで脱力し、深呼吸する。
●ソワソワして落ち着かない
→ふわふわしたものを触る。
教えてくれた人
精神科医の鹿目将至さん、「おひとりさま向上委員会」元代表の葉石かおりさん
※女性セブン2020年9月10日号
https://josei7.com/
●浅田美代子流「孤独の生き様」|樹木希林さんに従ったことと背いたこと