地震が発生したら… 経過時間ごと「やること」リスト【3.11を忘れない】
もしも大きな地震が発生したとしても、避難所に入れるのは、倒壊や火災で自宅を失った人や避難勧告対象区域の住民などが優先。建物に致命的な被害のない戸建てやマンションの住民は、“在宅避難”を余儀なくされる可能性が高い。
テレビが飛び、たんすは倒れ、食器棚のガラスも砕け散る! マンション被災では、建物自体の倒壊よりも、家財道具の転倒・破損、火災などが心配だ。
地震がきたら命を守るためにどうすればいいのか──。
マンション管理会社の大手「あなぶきハウジングサービス」のマンションの管理員を教育する香川県認定職業訓練・体験型研修施設「あなぶきPMアカデミー」館長で、防災士の資格も有する藤原剛志さんに話を聞いた。
●地震発生0分
倒壊物、窓がない場所へ。脱出口を必ず確保しておく
「地震の揺れで命を落とす場合、大きな原因として考えられるのは、家屋の倒壊か家具の転倒です。阪神・淡路大震災や新潟中越地震でも、多くのかたが倒れてきた家具の下敷きになって命を失ったり、逃げ遅れて大けがをしています。
揺れを感じたら、物、窓のない空間へ移動することが大切です。玄関やトイレは転倒する家具がなく窓も小さいですから、窓ガラスが割れてけがをする確率が他の部屋よりも少ないのです。揺れでドアが変形して開かなくなるのを防ぐため、少しドアを開けて脱出口確保を」(藤原さん)
ただし、1981年6月以前の旧耐震基準の物件で、耐震補強工事をしていないトイレは安全とはいえない。外に逃げた方がよい場合もある。
●地震発生2~10分
ブーツや長靴は常時玄関に出しておこう
二次災害として怖いのが火災。火が出ていないことを確認し、ガスの元栓も閉める。
「蛇口から水は出る状態かもしれませんが、貯水槽や水道管の水は揺れや破損で汚染されています。飲料水としては使えません」(藤原さん)
携帯などで家族の身の安全を確認。万一の場合に備えて、子供や高齢の親には名前と住所、連絡先などが書かれたメモと救助合図用の笛を持たせておくことが望ましい。
安否確認ができたら、土砂崩れや津波、避難勧告などの情報を収集。ただ、余震に備え、不用意に外へ出ないこと。
床に飛散したガラス片や転倒家具でけがをすることもある。普段からブーツや長靴は玄関に。すぐに履けるようにしておくとけがの予防になる。
●地震発生1日目
地震保険や罹災証明申請用に、被害状況を撮影しておこう
「震災後のマンションでよくあるのが、玄関のドアが開かなくなるケースと、何とか開いたものの今度は閉まらなくなるケースです。これはラーメン構造(※)上、雑壁にあたるコンクリートの壁をくり貫いて玄関のドアフレームをはめ込んでいるためで、揺れの際に生じるねじれで、ドアのサッシがゆがむせいです。この場合、玄関の外壁を見るとX状にひびが入っているはずです。
しばらくして避難命令が発令される場合もあります。不用心な無施錠とならないよう、応急措置として南京錠とチェーンを準備しておくと安心です」(藤原さん)
また、地震保険請求や罹災証明申請に必要なのが、被害状況の証拠写真。片付ける前に梁など構造上の損壊箇所、そして家財道具などをスマホなどで撮影しておこう。
※ラーメン構造=「ラーメン」とはドイツ語で“枠”や“骨組み”を意味し、柱と梁の接点がしっかりと固定された構造のこと。玄関などの開口部や仕切りの位置・大きさを自由に設定できるので、マンションに多い。
●地震発生2日目以降
修繕の発注は早い者勝ち!
これまで、あなぶきが管理する全国のマンションで、災害後の救援・復興活動に携わってきた藤原さんは、その経験から、住民の積極的な“自助(自分と家族の守護)”“共助(助け合い・連携)”“ほう助(弱者の支援・介護)”への関与、そして“ご近所”との連携が、マンション機能の迅速な復旧につながると言う。
「私どももお手伝いさせていただきつつ、災害に備えて、管理組合が主体的に防災訓練や防災備蓄品の整備を始め、修繕金や災害積立金の準備をなさっているところは、マンションの復旧能力も高い。たとえば、被災後の修繕は、ズバリ、早い者勝ち。発注を躊躇すると、着工まで1年以上待つこともあります。どれだけ早く一致団結して動けるかが、何より大事なんです」
マンションでも戸建てでも、近隣住民との連携が大切だ。
※女性セブン2018年3月22日号
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