介護サービスに進出するコンビニ 高齢者宅へ“御用聞き”も
超高齢化や人々の生活スタイルが変化するなか、各社は“これから”のコンビニのあり方を見据え、三者三様の取り組みを行う。
「欲しい商品を欲しい分量だけ」に応えるセブンイレブン
セブン-イレブンは昨年、店内レイアウトの大幅刷新を開始した。その狙いについて、『セブン-イレブン 金の法則』(朝日新書)の著書でコンビニ業界に詳しい吉岡秀子さんはこう話す。
「高齢者や主婦、家事の時間が取りにくい共働き世帯のために、お店で調理された食べ物を持ち帰って家で食べる『中食』を強化することです。
新レイアウトでは、チルドや冷凍食品コーナーを2台以上設置したり、レジカウンターも従来の3割ほど長くなりました。セブンのプライベートブランドである『セブンプレミアム』の少量パックの総菜メニューも積極的に投入しています。
カウンター回りに揚げ物やおでん、セブンカフェなどを拡充し、チルドコーナーには小さいスープやサラダを増やすことで、“もう少しだけ食べたい”“欲しい商品を欲しい分量だけ”という女性やシニア層のニーズに応えようとしています」
高齢者の自宅にお弁当、飲み物を届けるサービスも
またセブンは、高齢者や買い物が困難な人のために、お弁当や飲み物などを自宅に届ける会員制サービス「セブンミール」のほか、お弁当や日用品などを配達する「らくらくお届け便」、地域に出向いて商品を販売する「あんしんお届け便」なども行っている。
2014年からはセイノーホールディングスと、高齢者宅への配達時に直接必要なものを聞いて届ける“御用聞き”サービスも行ってきた。今後さらに進む高齢化や単身世帯の増加などに向けて、対応を強化している。
ローソンは「介護と健康」に注力。「ケアローソン」を展開
一方、ローソンが力を入れるのは「介護と健康」だ。スローガンも、2013年に「マチのほっとステーション」から「マチの健康ステーション」に変更した。
ローソンは2015年4月から、地域の介護事業者と提携して運営する介護拠点併設型の店舗「ヘルスケアローソン」を全国10店舗で展開している。ここでは、通常のお弁当などの商品に加えて、大人用おむつや折り畳み杖など、高齢者に配慮した介護用品や市販薬なども販売。店内には介護相談窓口も併設され、店に訪れた人たちと談笑したり、クラフト教室などのイベントを開催するサロンスペースまで設けられている。
ケアローソン第1号の「ローソン川口末広三丁目店」の常連客である80才の女性が話す。
「ひとりで外に出られないから、人と話す機会も減ってしまうんです。でも、ここに来れば必要なものが揃うし、何よりたくさんのかたとお話しできます。この間、牛乳パックでレターラックを作るイベントに出て、本当に楽しかった」
ローソンは他にも、店内に調剤薬局を併設した「ファーマシーローソン」を全国で展開。低糖質のブランパンや200kcal以下のお菓子など、健康やダイエット志向の食品開発にも力を入れている。
ファミマは高齢化に向けてスポーツジムの併設店を
ファミマは、他社とのコラボに力を入れていることが特徴だ。ファミマは2月14日、東京都大田区にスポーツジムとコンビニを併設した「Fit&GO大田長原店」をオープン。2階建て店舗の2階に、ランニングマシーンや筋トレ器具など計25台のマシンを揃えたジムが入り、1階のコンビニではプロテインやトレーニングウエアを販売する。定額料金で24時間利用できる。
高齢化の進展や健康志向の高まりで、日本のフィットネス市場は年々拡大している。ファミマは、今後5年で300店舗を目標に拡大し、人々の健康ニーズを取り込む狙いだ。
ファミマは、スーパーとのコラボも。昨年12月には神奈川県川崎市に小型スーパー「ミニピアゴ」を併設した「ファミリーマートミニピアゴ川崎宮前平店」をオープン。今春にも大阪府松原市の「近商ストア」店内に、ファミマを併設した店舗が営業を開始する予定だ。
「スーパーはATMや公共料金支払いのシステムがない店も多いため、コンビニを併設することで、高齢者がスーパーに行ったついでに、お金をおろしたり、お支払いをすることができるようになります」(プリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之さん)
※女性セブン2018年3月1日号
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