【千葉県柏市】介護施設訪問レポート|地域連携で介護予防に取り組むサ高住
高齢者向けの住宅の中から、話題の施設をピックアップ。記者が訪問し、施設で働く人の思い、設備、サービスなどをレポートする。今回は、千葉県柏市にある「麗しの杜 光ヶ丘」だ。
麗しの杜 光ヶ丘
比較的元気なうちに移り住む入居者が多いサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)だが、長年住んでいると当然、認知症になる可能性も出てくる。法律で定められた要件上、医療的な対応は難しいが、認知症予防やケアに力を入れているところもある。
麗しの杜は開設から5年経ち、今後はさらにサ高住として可能な認知症のケアに力を入れていくという。そのための人材として、認知症看護認定看護師の溝井由子さんが地域連携室長に就任。溝井さんは、認知症の看護のプロフェッショナルとして、麗しの杜のある千葉県柏市などで認知症の高齢者とその家族に向き合ってきた。
「認知症の人もできる限り住み慣れた地域で安心して暮らせるように、これまでの経験やネットワークを活かして、ご本人やご家族を支援してまいりたいと思います」(地域連携室長・認知症看護認定看護師の溝井由子さん)
地域の介護ニーズに応える
麗しの杜にはデイサービスとヘルパーステーションが併設されている。デイサービスは介護認定の介護度に応じて入居者も利用可能。できるだけ自立した生活を送れるように、機能訓練や利用者同士の交流など、様々なサービスを提供している。(※ただし、新型コロナウイルスが収束するまでは、サービスの提供状況について確認が必要)
デイサービスの目的は、利用者の心身機能の維持・回復と、家族の介護負担の軽減だ。食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで利用できるそうだ。介護保険の認定を受けた入居者も、介護度に応じてデイサービスを利用することができるという。
ヘルパーステーションは、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪れ、食事や排泄、入浴などの身体介護や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助をしてくれる。急な通院や散歩の同行が必要な際は、ヘルパーだけではなく、サ高住が提供する有料の生活支援サービスを利用することもできるそうだ。
「早めに住み替えて、最期まで住んで頂くのが本来のサ高住のあり方です。早めに住み替えることのメリットは、コミュニティができるということですね。こちらではご入居者様同士の自主的な取り組みがあります。例えば、職員が前に立って朝8時からのラジオ体操をやっていましたが、今はもう全部ご入居者様にお任せしています」(館長の中地孝博さん)
入居者のコミュニティがあり、歌や麻雀など、好きな人同士の集まりも活発だという。後から入居した人が入りにくくなるようなことがないよう、職員がコミュニティに入りやすいように様々な配慮をしてくれるそうだ。
地域の介護予防に取り組む
溝井さんの役割は施設の中だけに留まらない。肩書き通り、地域連携の推進も担っているという。地域連携の目的の一つとして掲げているのが介護予防だ。
「ご入居者様だけではなく、地域の皆様と一緒に健康講座を開くなどして介護予防・認知症予防に取り組んでいます。地域のボランティアの方々や医療機関、介護に関係する機関など、今までこの地域で培ってきたネットワークをさらに強化していきたいですね」(溝井さん)
「今後はさらに地域連携を深めていきます。私たちの事業所だけのことを考えるのではなく、地域でお困りの高齢者やご家族のお役にも立ちたいと考えています」(中地さん)
定年を機に40年続けてきた看護師の仕事をリタイアした溝井さん。長年の活動が評価され、昨年6月に千葉県看護協会長賞を受賞したことで、再び看護の仕事への意欲が高まったという。定年後にも活躍するナースをプラチナナースと呼ぶそうだが、地域包括ケアの時代に求められるプラチナナースとして、新たなステージを目指す溝井さんの悠々自適の生活はしばらく先になりそうだ。
撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ
【データ】
施設名:麗しの杜 光ヶ丘
公式WEBサイト:http://uruwashinomori.jp/
所在地:千葉県柏市光ヶ丘二丁目1番1号
最寄駅:JR常磐線南柏駅東口より東武バスに乗車。約7分の「広池学園」バス停下車徒歩1分
類型:サービス付き高齢者向け住宅
運営法人:公益財団法人モラロジー研究所
定員: 63戸(最大68名)
入居要件:(1)60歳以上の方であればどなたでも入居が可能
(2)介護保険法に規定する要介護認定もしくは要支援認定を受けている60歳未満の方
(3)同居者の入居基準:配偶者、60歳以上の親族、要介護認定もしくは要支援認定を受けている60歳未満の親族
構造:鉄筋コンクリート4階建て
開設年月日:2015年7月1日
料金:1号館(1)契約時のみ発生する費用:敷金2ヶ月分・Aタイプ(介護型)13万2000円、Bタイプ(自立型)20~21万円、Cタイプ(自立型)32万円。入居一時金なし
(2)毎月発生する費用:家賃+共益費+サービス費
家賃:Aタイプ6万6000円、Bタイプ10万円(3階)・10万5000円(4階)、Cタイプ16万円
共益費(共用部分の水光熱費や維持管理費):2階・1万5000円、3・4階2万円、4階(2人入居)4万円
サービス費(サ高住制度に基づく見守り生活支援サービスを行う):1人・2万5000円、2人・5万円
(3)1ヶ月あたりの概算合計額:
(4)利用に応じて発生する費用:食事代5万2500円。税別・30日利用の場合。朝食350円、昼食650円、夕食750円
水光熱費:Aタイプ・フロア単位の使用量に応じた額(フロア全体の使用量から個別の金額を算出)、B・Cタイプは実費
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。