65才以上高齢者が50%超の「限界集落」に21年ぶりの赤ちゃん誕生
高齢化が進む日本社会において大きな問題となるのが、65才以上の高齢者人口が50%を超える地区である「限界集落」だ。そんな限界集落に移り住んだ“部外者”が「新たな生命と喜び」をもたらすこともある。
高齢化・過疎化が進む長崎県対馬市の西海岸にある志多留は人口62人、3人に2人が65才以上の限界集落だ。
かつて盛んだった水田は放置され、老人はデイサービス以外に行き場がない。
そんな集落が歓喜に包まれたのは2016年4月のことだった。この地に21年ぶりの赤ちゃんが誕生したのだ。
母親となったのは、青森県出身の川口幹子さん(38才)。東北大学で生態学を研究していた川口さんは、人と自然が共生する地域づくりを目指して、2011年に「対馬市島おこし協働隊員」として対馬に移住し、この地で出会った地元漁師と結婚した。
都会から消えた”子育て力”が残っている「限界集落」
「志多留の自然や人の温かさに感動し、ここで生きていきたいと思うようになりました。子育てするのにもとてもいい環境です。お祭りや集会に連れて行って少し目を離しても絶対にどなたかがあやしてくださるから、全く人見知りをしない子になりました(笑い)。チョッキを持って、“息子が生まれたときに縫ったの”と、嬉しいおさがりをいただくことも」(川口さん)
志多留地区に住む70代女性が満面の笑みで言う。
「嬉しくて何回も顔を見に行っちゃった。やっぱり子供がいるっていうのは明るくなるねえ。あの頬っぺたを見ると本当に柔らかそうで元気がもらえる。本当に子供は宝だよ」
今も住民たちは代わる代わる母子の元を訪れて小さな子供を愛しそうにあやし、「ありがたいねえ」と口にする。あたかも聖母マリアとイエスキリストが極東の限界集落によみがえったかのように。
石川県羽咋市の限界集落を立ち直らせた、“スーパー公務員”として知られるのは高野誠鮮さん。羽咋市の限界集落でも、「赤ちゃんフィーバー」があった。高野さんが話す。
「18年間子供のいなかった村に移住してきた若い夫婦に赤ちゃんが生まれたら、村中の人間に『おらが在所の子』という意識が芽生えました。集落で飲食店を経営している両親が忙しい時に赤ちゃんが泣くと、近所のおばあちゃんがおんぶ紐片手に店に入ってきて、ひょいと赤ちゃんを担いで外に連れて行って寝かしつけるんです。そして眠ったらそっとゆりかごに戻しておく。頼んでもないのに勝手に近所の人が面倒を見てくれる。限界集落には、都会から消えてしまった“子育て力”があります」
※女性セブン2018年2月15日号
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