免疫力の強化に酢酸菌の力が注目!乳酸菌と併せて摂るのが◎
新型コロナウイルスの脅威に怯える日々が続いている。細菌やウイルスから体を守る、いわば防御機能ともいえるのが免疫。この免疫システムが崩れるとしっかり防御できず、感染症にかかりやすくなってしまうのだ。このため、免疫力を高める乳酸菌などの「菌」への期待が高まる中、乳酸菌とともに摂取するべき菌として注目を集めているのが“酢酸菌”だ。
酢酸菌にはどんな効果があるのか
免疫力を高める菌として、乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌はよく知られているが、新たに注目を集める「酢酸菌」には、どんな効果があるのだろうか?
小腸には免疫細胞の7割が存在するといわれているが、
「食べ物や空気とともに口や鼻などから入ってきた細菌やウイルス、花粉などのアレルゲンを、細胞に侵入させないために闘っているのは、小腸です」と言うのは、イシハラクリニック副院長の石原新菜さん。
アレルゲンに負けない体になるには免疫細胞を活性化する必要があるが、そのためには多様な菌を摂取し、免疫細胞に働きかけることが重要だ。
「昔は、ほこりや土、それに触れた手などを介していろいろな菌に触れることで免疫力がついていましたが、衛生環境が整った現代は、暮らしの中で自然に多様な菌に触れることは難しいため、食事でたくさんの菌に触れることが大切です」(石原さん・以下同)
免疫細胞に働き変える代表的な菌
免疫力を高め、花粉症などのアレルギー予防につながるとされる代表的な菌は、次の5つ。
【1】乳酸菌‥ヨーグルトやチーズ、キムチなどの漬けもの
【2】ビフィズス菌‥ヨーグルト
【3】麹菌‥甘酒や塩こうじ
【4】酵母菌‥ケフィアやぬか漬け
【5】納豆菌‥納豆
「微生物学の分野では、これら5つの菌はグラム陽性菌(*1)に分類されています。対するグラム陰性菌には、チフス菌や大腸菌、サルモネラ菌など、人体に炎症を起こす病原菌が大半ですが、『酢酸菌』は、発酵食品として摂取できる貴重な菌。最新の研究で、酢酸菌にはアレルギー改善などの健康効果があることもわかっています」
【*1 細胞壁の構造の違いを「グラム染色」に染まるかどうかで調べる、細胞学の最も基本的な分類法。グラム染色に染まる菌が「グラム陽性菌」、染まらないのが「グラム陰性菌」】
◆酢酸菌が免疫バランスを調整する仕組み
腸内の免疫細胞には、免疫システムを活性化させる「TLR(*2)」という、いわばスイッチが存在する。その中でアレルギーを感知する「TLR2」は、乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌により、免疫を活性化できるが、酢酸菌は「TLR2」と「TLR4」で免疫を活性化できる希少な菌でもある(上イラスト参照)。
【*2 TLRとは、免疫細胞に備わっている、免疫を活性化させるスイッチのようなもの。現在までに11種類が発見されている。それぞれに感知する成分が異なり、TLR2は細菌・原虫を、TLR4は細菌・原虫に加えてウイルスも認識する】
酢酸菌の効果を調べた研究では花粉飛散期の鼻づまり症状に改善も
花粉の飛散期の鼻づまりによる不快な症状に対する、酢酸菌の効果を調べた研究では、摂取4週間後には症状の改善が確認され(グラフ参照)、ほこりやハウスダストへの効果も実証されている。
酢酸菌は、バルサミコ酢、香酢、黒酢、にごり酢などに含まれる
「『TLR2』と『TLR4』という2つから免疫を活性化できる酢酸菌を摂取するだけでも効果はありますが、乳酸菌と併せて摂ると、倍以上の効果が確認されています。酢酸菌は、バルサミコ酢、香酢、黒酢、にごり酢などに含まれています。乳酸菌を含むヨーグルトなどに大さじ1杯くらいを加えれば、より高い効果が期待できます」
免疫力が高まれば、アレルギーの予防改善だけでなく健康な体づくりにも役立つのだ。
教えてくれた人/石原新菜(いしはら・にいな)
イシハラクリニック副院長。医師。帝京大学医学部卒業後、大学病院での研修を経て、現在、自然医学の専門家で医学博士の父、石原結實氏が院長を務めるイシハラクリニックで、漢方医学、自然療法、食事療法により、さまざまな病気の治療にあたっている。著書に『冷えを治せば病気もよくなる』(Gakken)、『病気にならない蒸しショウガ健康法』(アスコム健康BOOKS)など。
イラスト/こさかいずみ
※女性セブン2020年3月12日号
https://josei7.com/