高齢者と介護者の悩みをを解決し累計12万本売れているスラックス
シリーズ累計2万本を売り上げている『おしりスルッとパンツ』は、体の後ろに手を回しにくくなった高齢者が、お尻に引っかからずはくことのできるスラックスだ。高齢者と介護者に寄り添う気持ちから生まれた開発ストーリーをお送りする。
高齢になると、スラックスがお尻にひっかかり、ウエストラインまで引き上げられないことがある。すると、トイレで用を済ませたあとなど、お尻が半分出た状態になってしまうのだ。しかしながら、実際はトイレは自力で済ませたいという人が多い。また、介護をする人にとっても、トイレのたびに介助が必要だと大変だ。こうした悩みを解消するために開発されたのが、『おしりスルッとパンツ』だ。
手が体の後ろの方まで回せなくなる高齢者の悩みを解決したい
開発したのは、大阪で介護用衣料品を開発・販売するケアファッション。兵庫県西宮市の西宮協立リハビリテーション病院の協力を得ながら開発が進められた。高齢になるとお尻にスラックスが引っかかってしまうのはなぜか、専門家や使用する人の意見を聞きながら作りたいと考えたからだ。
試作やヒアリングを繰り返す中でわかってきたのは、肩の可動域が狭くなり、手を体の後ろの方まで回せなくなるため、後ろ側のスラックスが上げられなくなるということ。後ろに手を回せないのならば、前から引っ張るだけでスラックス全体がウエストまで上がるようにすればよいと考え、ウエストの部分と裏地にスルスルと滑る生地を採用した。しかし、はく時の滑りはよくなったものの、洋式トイレに腰掛けた際、スラックスが足元まで滑り落ちてしまうという課題が残った。
不衛生なだけでなく、高齢者にとっては腰をかがめて足元まで手を伸ばすのは困難。なんとか解決しなくてはならない―
そこで考えたのは、ビジネススーツのスラックスのウエスト部分につけられている滑り止めだった。本来はワイシャツの裾がウエストからはみ出ないように使われるものだったが、これを滑り止めとして活用したのだ。
2017年3月に同社の通販カタログで販売を開始すると、介護関係者の間であっと言う間に口コミで評判が広まった。当初は、通年使えるお出かけ着の1種類しかなかったが、ユーザーからの要望に応える形で季節商品や自宅でリラックスしている際に使える商品など、種類を増やしていき、今や、シリーズ累計2万本以上を販売する同社の定番商品となった。
高齢の母親をもつかたからは、「引き上げの介助が必要だった母が、スラックスを自分ではけるようになったことで、外出に対して前向きな気持ちになってくれたことがうれしい」という声も寄せられた。今回、取材に答えてくれた介護用品事業部の無関由規さんは、「気分が明るくなるような服を作っていきたいという会社の理念が形になった商品なので、多くの人に受け入れてもらえて、やりがいを感じています」と声を弾ませて語ってくれた。
【データ】
『おしりスルッとパンツ』
2020年2月現在は、16バリエーションのスラックスがWebやカタログ通販で発売中。サイズはM、L、LL、3L(レディース・メンズ)。2980円~。ケアファッション
電話:06・4963・8280
※女性セブン2020年2月20日号
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