見守りに最新機器を活用している介護付・住宅型有料老人ホームを紹介【まとめ】
オープン間近の話題の施設や評判の高いホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
一人暮らしの高齢者の増加によって、社会問題化している見守り。郵便局や宅食会社などの見守りサービスを利用したり、地域社会で見守りを行っている例もあるが、四六時中誰かの目があるわけではない。体調の急変や転倒によるケガへの不安から有料老人ホームへの入居を選ぶ人も増えているようで、見守りに力を入れる施設も増えている。そこで今回は、最新機器によるシステムを入れるなど、見守りの工夫をしている介護付有料老人ホームと住宅型有料老人ホームを紹介する。
室内センサーを導入している住宅型有料老人ホーム「グッドタイム リビング流山 弐番舘-おおたかの森-」
「グッドタイム リビング 流山 弐番舘」は、“住宅型”有料老人ホームだ。有料老人ホームには住宅型の他に、介護付、健康型がある。住宅型は自立の人も入居でき、介護が必要な状態になれば、入居者本人が訪問介護などの介護サービスを選択して、そのまま住み続けることができる。
「弊社の住宅型老人ホームは、スタッフが24 時間常駐し、介護サービス提供時間以外にも見守りをはじめとした各種サービスを提供しています。また、どちらかが自立、どちらかが介護が必要というご夫婦がそろってご入居を検討される場合、自立から要介護の方までが入居でき、それぞれの生活スタイルに合わせられる住宅型有料老人ホームが適しているといえるのではないでしょうか」(オリックスリビング広報 以下「」は同)
介護の業界にもロボットやICT技術などの導入が進んでいる。しかし、明確な目的を持っていないと、介護をする側・される側に余計なストレスを感じさせるものになってしまうという。「グッドタイム リビング 流山 弐番舘」は”よくする介護”というビジョンに忠実に、様々な施策が組み立てられている。
居室には転倒防止・早期発見のために、室内センサーが導入されている。本人や家族に同意を得た上で使用している見守りのためのセンサーを使うと、居室にいる入居者の様子をプライバシーに配慮されたシルエット映像で確認できる。映像は録画してためていくことができ、入居者のプライバシーを守りながら動きを”見える化”することで、本当に必要な支援が見えてくるそうだ。
「画像を分析すると、思わぬ動きをされていることも多いです。右利きだという理由で右側に手すりをつけても、ご本人は左の方が手すりをつかみやすいのでそちらで持って大回りをしているということもありました。“実はこういう動きをしていた”というのが映像で録画されて残っているので、それを見ながら家具の配置や介助の方法を検討できます。動きを見て、家具の配置を変えるご提案をすることもあります。その結果、転倒事故が少なくなったという方もいらっしゃいます。少し家具の配置を工夫することで動きやすさが変わりますね」(オリックス・リビング広報)
明確なコンセプトを基に最新技術の導入を進めている「グッドタイム リビング 流山 弐番舘」。最近新たにケア記録をタブレット端末で入力し、業務の効率化を図るケアカルテを導入したという。最新の機器を活用し、一人ひとりを深く知ることがよくする介護を支えていると感じた。
→介護付きとサ高住のいいとこどり!住宅型有料老人ホーム<前編>
→室内センサーや壁収納型リフトを導入!”よくする介護”を受けられる住宅型有料老人ホーム<後編>
見守りシステム付き居室の横浜みなとみらい複合施設にある介護付有料老人ホーム「カーサプラチナみなとみらい」
最寄り駅の横浜市営地下鉄ブルーライン「高島町駅」から徒歩3分、「桜木町駅」から徒歩10分、「横浜駅」から徒歩13分というロケーションに2018年4月にオープンした「カーサプラチナみなとみらい」。介護スタッフと看護師が24時間常駐しているので、見守りが必要な人にとっては安心感がある。
高齢者の一人暮らしで心配なことの1つが、室内での転倒や体調の変化を誰にも連絡できず、状況が悪化してしまうことだ。すぐに他者が対応していれば問題ないようなことでも、時間が経ってしまうと、その後の生活に影響を及ぼすような状態になってしまう場合もある。離れて住む家族は様子を四六時中確認できないので、心配なことのひとつだろう。
「カーサプラチナみなとみらい」では、緊急通報装置に加えて、危険検知機能を併せ持ったシステムを居室に導入している。天井に取り付けられたセンサーが、入居者の起床、離床、転倒やベッドからの転落などを検知し、異変があればスタッフが持つスマートフォンに情報を送信してくれる。スタッフは映像でその様子を確認できるので、異変があればすぐに駆けつけられるという。
プライバシーへの配慮がされていることも、このシステムのポイント。危険を検知した場合や入居者が緊急通報した場合のみ、スタッフが持つスマートフォンに映像が送信される。スタッフがスマートフォンを操作しても居室内を見ることはできないようになっているという。どのような行動を検知するのかは、入居者の状態に合わせて、相談をして個別に設定するそうだ。
上質な暮らしのためにハードとソフトの両面からサポートしてくれる「カーサプラチナみなとみらい」。1ヶ月に1回、一人ひとりの入居者の様子を書いた「プラチナレポート」を家族に送っているそうだ。”プラチナサポート”と銘打ったこのような細やかな心配りで、入居者の日々の暮らしを支えている。
→看護師が24時間、理学療法士も常勤!きめ細やかな対応をする介護付有料老人ホーム<前編>
→見守りシステム付き居室の横浜みなとみらい複合施設にある介護付有料老人ホーム<後編>
最新の介護ICT/IoTシステムを導入した介護付有料老人ホーム「アズハイム町田」「アズハイム練馬ガーデン」
「株式会社アズパートナ―ズ」は2017年、介護におけるICT/IoTシステム「EGAO link(エガオリンク)」を導入した。同システムは、センサーを用いた見守り支援システムとナースコール、記録管理システムを連動させ、入居者の状態把握やコール対応、記録入力などをスタッフに配布したスマートフォン1台で行えるようにした、業界初のシステムだ。先行して導入した「アズハイム町田」では、施設全体で1日あたり約17時間の労働時間を減らすことができたという。
また、「EGAO link」を構成する機能の1つに「眠りSCAN」というセンサーがある。これにより、入居者の睡眠・覚醒状態に加え、ベッドでの起き上がり、離床、そして1分間の呼吸・脈拍数まで感知し、それらをスマートフォン、パソコン画面でリアルタイムに把握できる。そのため、入居者からのアクションが起きてから行動するのではなく、先手を打ってアプローチできるようになったという。その結果、アズハイム町田では1日あたりのナースコールが90回から25回に減少するという効果が出ているそうだ。
「夜間の決まった時間に『巡視』をするのですが、扉を開ける音などでご入居者の眠りを妨げてしまうことがありました。『EGAO link』を導入したことで、睡眠状態が一目で分かりますので、熟睡されている方を無理に起こさずに安否確認ができるようになりました」(ホーム長の小川恵子さん)
実際にベッドで寝起きをしてもらい、眠りSCANのセンサーが感知した情報がどのようにスマートフォンに送られるのかを目の前で見せてもらった。ベッドに寝た状態から体を起こすと、スマートフォンにリアルタイムで情報が共有され、イラストで状態を視覚的に確認できる。各自が常に携帯しているスマートフォンにコール通知されるので、見落としの心配もない。コール通知の設定は、各入居者の状態に合わせて、「起き上がり」や「離床」、「通知不要」など個別設定できるという。
「熟睡している」「ベッドの上で体を起こしている」などの様子も分かるので、スタッフは精神的にも余裕を持って対処ができる。また、入居者の様子を正確に把握できるので、対応が後手に回ることなく行えるようになったという。ちなみにアズハイム町田では、夜間の転倒事故がシステム導入前の半分程度に減少するなどの効果につながっているそうだ。
「EGAO link」の導入によって、入居者に向き合う時間が多くなり、リハビリや「夢を叶えるプロジェクト」をはじめとする個別ケアを充実させることができているという。覚醒、起き上がり、離床などの動作をスマートフォンでスタッフがリアルタイムで把握しているので、居室内での夜間の転倒事故も大幅に減少しており、入居者本人はもちろん、家族にとっても大いに安心できる環境だ。最新の介護におけるICT/IoTシステムの効果を、ぜひその目で確かめてみてはいかがだろうか。
→最新の介護ICT/IoTシステムを導入した介護付有料老人ホーム<前編>
→最新の介護ICT/IoTシステムを導入した介護付有料老人ホーム<後編>
いかがだっただろうか。施設によっても見守りに対する設備や考え方、異変があった場合の対応方法はそれぞれ異なる。また、見守られる側の高齢者と見守りを希望する家族との間で、プライバシー面などの考え方の違いがあることもある。しかし、最新の見守り機器はプライバシーの尊重と見守りの感度のバランスを希望に合わせて調整できるものも多い。見守りを重視する施設のニーズはますます高まりそうだ。
撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。