上皇后美智子さま乳がん公表「高齢者乳がん」手術について専門家が解説
宮内庁が発表した衝撃のニュース。美智子さまが検査(8月2日)の結果、早期の乳がんだと診断されたというのだ。8月下旬の軽井沢と草津でのご静養の後、9月に手術を受けられることも発表された。
だが検査の2週間後、都内の知人宅を訪問されるために外出された美智子さまは、通行人に手を振り、会釈をされた。病を告げられたなかでのこのなさりようこそ、“皇室は祈りでありたい”と言い続けられてこられた上皇后さまの真摯なお姿ではないだろうか。
美智子さま、ご覚悟の乳がん手術
乳がんは働き盛りの若い年代の発症も多いが、多くのがんは年齢が上がるに連れて、かかる可能性が高まる。ピンクリボンブレストケアクリニック表参道の島田菜穂子院長が解説する。
「かつて日本で乳がんの発症ピークは50代でした。ただし、近年は欧米と同様に70代以降の高齢者が増加し、ピークの山は2つになっています」
治療は、手術や放射線治療による乳房への局所治療と、抗がん剤ホルモン療法などの全身治療の2本柱だ。ただ、高齢者の場合はそれら標準治療に耐えうる体力があるか、持病が治療により悪化しないか慎重に見極める必要がある。
「高齢の方で、治療による心身への負担がきっかけで、生活の質が落ちる可能性がある場合は、手術や抗がん剤など一部の治療を省略することもあります」(島田医師)
それでも美智子さまの場合は、体力の回復を図った後に手術に踏み切る決断をされた。 広島市民病院乳腺外科の大谷彰一郎医師はこう解説する。
「乳がんの手術は胃や肺といった臓器の手術のようにお腹や胸を切るわけではないため、体への負担が少ない。そのため、高齢者の場合も、手術は第一選択の標準治療です。美智子さまが手術を受けられるということは、もちろん医師との相談の上で、手術に耐えうる体力があると判断されたからでしょう」
高齢者への手術、そのリスクとは?
ただし、手術の方法によっては体に大きな負担がかかる。
乳がん手術には大きく分けて2つの治療法がある。「乳房温存手術(部分切除)」と「乳房切除術(全摘出)」だ。
温存手術では、がん細胞のある乳房を部分的に切り取り、乳頭を残す。切除術は、がんのある乳房をすべて切除する。
もし後者の手術を選択した場合、全身麻酔をする必要がある。大谷医師が続ける。
「高齢者に全身麻酔を使うと、術後にせん妄を起こす可能性があります。乳房温存手術の場合、症例によりますが局所麻酔+静脈麻酔で日帰りや1泊入院で手術ができる場合もあり、高齢者の手術の選択肢の1つになると思います」
ところが、温存手術を選ぶと、術後には頻繁な通院が必要になるという。
「温存手術をした後は、ほとんどの場合、温存手術をして残った乳房内への再発を予防するために放射線治療を行います。体への負担は大きくありませんが、およそ1か月間、毎日通院し、手術をした方の胸に放射線をあてることになります」(大谷医師)
さらに、高齢者の手術には別のリスクが伴うと、湘南記念病院乳がんセンターの土井卓子医師が指摘する。
「一般的に乳がんの手術自体は大変なものではありませんが、患者が高齢者の場合、肺炎など合併症のリスクも大きくなります。そのため、術後も医師が丁寧に診ていくことになるでしょう」
そうしたギリギリの状況で、美智子さまと医師は手術を決断した。
「乳房を残す手術か、全摘出か。これから先の検査結果にもよりますが、最後は美智子さま自身で決断されることになります。今までの病状やご年齢を鑑みれば、乳房温存手術ではないでしょうか」(前出・宮内庁関係者)
陛下を支え続けてこられた美智子さま。今度は陛下の支えでがんを乗り越えられる。
※女性セブン2019年9月5日号