藤真利子、要介護5の母を凄絶献身介護11年「今も苦しい」
「介護」は選択の連続である。施設介護か在宅か、訪問介護かデイサービスか。
介護のために自らの仕事を辞めるか、続けるか。病院選びはどうするか、延命治療は行うか否か──。その1つ1つを悩み抜き、苦しみの中で全力の決断を続けていく。その最後に待ち受るのは、死別。介護はハッピーエンドでは終わらない。そして亡くなった後も、「これでよかったのか」と悔やみ続ける。
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「ママを殺してしまった」
「ママはもっと生きられたと思うんです。まさか死ぬとは思わなかった。介護をつらいと思ったことはないんです、ママを失うことに比べれば…。本当に、私が殺してしまったんだと思います」
藤真利子(62才)はそう声を詰まらせた。
最愛の母・静枝さん(享年92)の一周忌に当たる11月7日に上梓した本には、脳梗塞で倒れてから11年間、半身不随で口が利けない「要介護度5」の母を自宅で介護し続けた壮絶な日々が綴られている。
本のタイトルは『ママを殺した』(幻冬舎)。あまりにも衝撃的だ。
「この一年、“ママを殺してしまった”と言うのが、知らないうちに口癖のようになってしまっていたようです。いちばん後悔しているのは、最後にママを家に連れて帰ったことだと思います。あの時選択を間違わなければ、ママはもっと長く生きられたんじゃないか、最後、あんなに苦しい思いをしなくてすんだんじゃないか…そう思うと今も苦しい」
もし、すぐに家に帰って入れば…、もし…タラレバの思い
2005年6月、自宅のキッチンで母が倒れていた。脳梗塞だった。1か月前に腰椎を圧迫骨折した矢先のことだった。
「倒れた日は私がたった1回だけ舞台の仕事から直帰しなかった日。もしあの日、すぐに家に帰っていれば。そして圧迫骨折した時に自宅療養ではなく、入院できる病院で診察を受けていれば…。すべてタラレバですね」
一命を取り留めた静枝さんだったが、右半身が完全に麻痺して寝たきりになり、会話はできなくなった。