在宅介護にハーブを<12>~落ち込んだ気分のケアに「セント・ジョーンズ・ワート」
私たちの暮らしにおいて、様々な形で利用されているハーブ。西洋だけでなく、日本でも昔から健康のために、ハーブの力が生かされてきました。
介護生活にもぜひともハーブを活用してほしいと、写真家でハーバルセラピストの資格を持つ飯田裕子さんが、介護する人・受ける人へ、ハーブで健かな暮らしを送るヒントを提案するシリーズ。
今回は、なんとなく憂鬱な気分に役立つハーブの紹介です。
ハーブを賢く利用して、介護生活にホッとする安らぎを。
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ちょっと気持ちがブルーな時に役立てたい「セント・ジョーンズ・ワート」
寒気前線が到来し、今年も残すところ、カレンダーあと1枚ですね。
日々の忙しさ、日差しの弱さ、風邪やインフルエンザへの心配…と色々と気が滅入ることも多い季節です。特に夕暮れ時はなんとなく気持ちが暗く沈みがちになりますね。
私事ですが、今年は敬愛する方が他界されるなど、悲しい別れがいくつか重なりました。
そして、寒さも重なり、少しメランコリー(憂鬱)な気分に浸ってしまう時があります。心が沈むと体も重く感じ、動くことが億劫になり、悪循環が始まりそう…。
こんなことではいけない!と、役に立つハーブを取り入れて気分を明るい方向に転換しました。。
今回は、介護されている方、される方にとっての心のクライシス、気分の落ち込みの軽減を助けてくれるハーブをご紹介したいと思います。
心的な状況は人それぞれ、理由や想いも違います。
でも、心に関しては自分を客観的に眺めることは意外と難しく、自覚しにくいものです。
お友達やご家族と会話するなど、コミュニケーションを取って「この頃ちょっと落ち込んでいるのでは?」などという客観的な意見に耳を傾けることも大切だと思います。
さて、まずは、「セント・ジョーンズ・ワート」というハーブを紹介したいと思います。
この名前は、キリスト教の聖人、聖ヨハネから由来しています。聖ヨハネの誕生日、6月24日頃に咲く黄色の五弁の花が目印のハーブです。
花、葉、茎を使用します。花は赤い色の液体を滲みだすことでも知られ、魔除けにに使われていたとか。
和名では、「西洋オトギリ草」といういいます。日本でオトギリ草は、昔から民間薬として、切り傷の手当てに使われていました。
西洋のオトギリ草は化学成分も日本のものとは少し異なり、外傷と共に「心の傷」の手当てに使われてきたそうです。
「セント・ジョーンズ・ワート」が開花する6月24日頃はちょうど夏至の時期で、太陽が出ている時間が長いです。花が太陽のエネルギーをふんだんに取り込んだこの時期が薬効成分も最高潮になります。
別名サンシャイン・サプリメントとも呼ばれるだけあり、”心の闇”を照らしてくれる優しいお日様のエネルギーを、私はこのハーブに感じています。
「セント・ジョーンズ・ワート」には、神経伝達物質を分解する酵素の働きを抑えるヒペリシンという化学成分が含まれます。
また、脳内のセロトニンが他の神経細胞に再吸収されるのを防ぐ物質も含まれているということです。
この二つの有効成分の相乗効果により、神経伝達物質のバランスを整えてくれるのだそうです。
「躁と鬱」、というように、気分もバランスの上に成り立っています。ちょっと気分が落ちている時に「セントジョーンズワード」のお茶(香りもなく、味も癖がない)か、サプリメントを数日補完することで、劇的な変化というより、気分が知らない間に整っていくる、と私は感じています。
ただし、やはり化学成分が含まれるハーブですので、とりいれる際に注意が必要です。
※日々のお薬を服用されている方には相互作用リスクのある医薬品の添付文書の「併用注意」の項目をよくお読みになるか、かかりつけの医師にご相談の上ご使用ください。
身近なハーブ「オレンジ」
もう一つ、「オレンジジュース」を紹介したいと思います。
実はオレンジも立派なハーブなのです。「セント・ジョーンズ・ワート」がサンシャインハーブと呼ばれるなら、オレンジやみかんも太陽のような果実です。
オレンジに含まれるリモネンという物質が神経に作用し、バランスを整えてくれます。
リモネンは名前の通り、レモンにも含まれる物質です。免疫やエイジング対策、さらにインナードライも心配な冬にこそ、オレンジジュースがぴったりです。
体を冷やさないように、常温で飲むことをお勧めします。
そういえば、日本でも昔から冬は「こたつにミカン」。この習慣はやはり理にかなっていると言えますね。
欧米では、朝食の時に、最初にオレンジジュースを飲む習慣があります。1日のスタートに、血糖値を上げる作用もありますし、朝の光をイメージしたオレンジ色も目からのポジティブな刺激にもなります。
そして、何よりもリモネンを1日のはじめに補給できます。私は元気が落ちて、少し滅入っていると感じた時には、朝だけでなく昼も、そして夜でも、カフェインが入っていないので、オレンジジュースをハーブティーと割って飲んだりします。
オレンジジュース自体はどこにでも身近にあるものですが、意外とあなどることができないハーブドリンクなのです。
果汁100%と明記あるものをどうぞお試しください。
【オススメの商品】
●「セント・ジョーンズ・ワート」のサプリメント
●「セント・ジョーンズ・ワート」のハーブティー
160cのお湯に大さじ1杯。3~5分抽出して飲むのがオススメです。
写真・文/飯田裕子
飯田裕子(いいだ・ゆうこ)
1960年東京生まれ。写真家・ハーバリスト。30代の後半にストレスと過労で体調を崩すも、医療行為を受けながらハーブと出会い回復。メディカル的なハーブに興味を持ち、取材を始める。英国在住のハーバリスト、リエコ大島バークレー女史と出会い「ハーブの薬箱:文化出版」の企画、撮影に携わる。その後、日本メディカルハーブ協会のハーバルセラピストの資格を獲得。ハーブの知恵を生かすべくガーデンスタジオJP(https://www.facebook.com/gardenstudiojp/?pnref=lhc)として活動を始める。85歳になる元医師の父と母の遠距離プレ介護が始まったばかり。