脳梗塞は午前中が発症しやすい?病気が悪化する時間帯あり
病気の発症や症状の変動には、「時間」が大きく関係することをご存知だろうか?
九州大学大学院薬学研究院の小柳悟教授が話す。
「これまでの医学には病状は『一日の中で、大きく変化しない』という固定観念がありましたが、最近は『病気が悪化する時間帯がある』という考え方が出てきました。例えば気管支喘息は、昼間は症状がなくても午前1時頃から明け方にかけて、強い咳が出て患者が苦しむ」
では、それぞれの病気が発症しやすい時間帯とは?
脳梗塞は午前中、リウマチは明け方に悪化
「生体リズム」の影響で、血液は明け方に凝固しやすい
「脳梗塞や心筋梗塞は午前中に発症しやすく、リウマチは真夜中に炎症が始まり、明け方に手足の関節のこわばりをもたらすケースが多い。人によってまちまちですが、がん細胞が増殖しやすい時間帯もあります」(小柳教授)
病気の発症や悪化が時間帯によって異なる理由は、人間の「生体リズム」にある。自治医科大学客員教授・蓮田病院学術顧問の藤村昭夫医師が解説する。
「人間の脳内にある視交叉上核という部分が『親時計』となり、体内の各臓器に指令を与えることで生体リズムを整えます。『親時計』は朝、太陽の光を浴びるたびにリセットされて、また新しい生体リズムを刻んでいきます」
人間の体内では、生体リズムに合わせて細胞分裂が盛んになったり、炎症が起こる。心筋梗塞を例にすると、生体リズムの影響で人間の血液は明け方に凝固しやすい。これが同病の午前の発病を増やす要因になっている。
特定の時間に投薬することで薬の効果を最大限に引き出す
奇しくも10月2日に発表された今年のノーベル医学生理学賞は、体内時計の仕組みを解明した米国の3人の科学者が共同受賞した。こうしたリズムが解明されたことで、特定の時間を“狙い撃ち”して投薬することにより、薬の効果を最大限に引き出すことができることもわかってきた。
「病の進行に合わせて投薬タイミングを計る治療法なので、『時間治療』と呼ばれます。この治療はピンポイントで病のもとを攻撃するだけでなく、副作用を減らすこともできる。 例えば抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞まで攻撃してしまうので、強烈な副作用が避けられない。しかし、正常細胞が増殖しないとされている時間に投薬すれば、正常細胞の破壊を抑えることができ、副作用を大幅に軽減できるのです」(小柳教授)
薬はのんでから数時間後に血中の薬物濃度が最も濃くなるため、時間治療では「のむ→血中濃度が高くなる」というタイムラグを見越して、薬を効かせたい時間の数時間前に服用することになる。
先のリウマチのように夜中に症状の悪化が始まる場合は、就寝前に服用するのが効果的となる。
※女性セブン2017年10月19日号