介護生活にハーブを!<9>骨粗しょう症や骨折のサポートに「スギナ」
今や、私たちの暮らしでは、食事やお茶など様々な形で利用されるハーブ。西洋だけでなく、日本でも昔から健康のために、ハーブの力が生かされてきました。
介護生活にもぜひともハーブを活用してほしいと、写真家でハーバリストの資格を持つ飯田裕子さんが、介護する人・受ける人へ、ハーブ暮らしに取り入れるヒントを提案するシリーズ、今回は、骨折した母のサポートに役立てたハーブをご紹介。困った時にも、普段の生活にも、賢くハーブをとりいれるヒントを教えてもらいました。
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骨折した母のサポートにハーブの力を活用
先日、母が室内で転倒して肋骨を1本折ってしまいました。
若い頃からスポーツにもいそしみ「私は人一倍骨格が丈夫!」と豪語していた母でしたが、やはり齢には勝てませんでした。
86歳の誕生日を迎えて間もない夜のこと。お風呂上がりで気が緩んでいたのでしょうか、寝室の引き戸にもたれたら、今はスムーズに動く戸ですからスーッと戸に誘われるように前のめりで転倒したといいます。あっという間の出来事で、その夜は痛みを我慢して眠り、しかし本人は「骨折」の「こ」の字の意識もなく、日にちが経てば治るだろう、くらいの感覚だったようです。
その3日後に私が訪れますと、日々痛みが増していると言います。そこでようやく整形外科へ連れてゆきレントゲンを撮影、「骨折」が判明したというわけでした。胸部をバンドで固定して、ただ回復するのを待つのみです。痛みもですが、年齢とともに治るのに時間もかかると言われていますし、痛みから食欲や暮らしの意欲も落ちてきます。もし脚部や腰の骨であったら歩行も不可能になり、骨折をきっかけに。そのまま寝たきりになる高齢者も多いとも聞きます。
女性の骨の量は20歳くらいでピークを迎え、それ以後、特に閉経後には骨密度はだんだん減少し、いわゆる骨粗しょう症でなくとも骨は弱くなってゆくのだそうです。
普段の食生活や運動習慣の見直しや、日光浴を心がけることが大切ですが、それに加えて、今回は心強いサポートになるハーブの利用方法をご紹介したいと思います。
そのハーブとは、ずばり「スギナ」です。
目を見張るスギナのパワー
スギナは、ちょうど今頃の季節、土筆(つくし)が消えた後に、ふさふさと地面から生えている、緑の毛髪のような、刈っても刈っても出てくる、雑草の王者のような存在。土筆の親の草です。
スギナのその内なるパワーには目を見張るものがあるのです。
スギナの学名は、Equisetum arvense (エキセツムアーヴェンセ)。ヨーロッパ原産の多年生草本です。英名ではホーステールと言います。
馬の尻尾という意味で、確かに、スギナを触ると葉はザラザラとした馬の剛毛のようです。古生代の植物の生き残りとも言われ、古くから地球に繁殖しています。
カリウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、鉄、亜鉛、葉緑素など豊富なミネラルを有し、中でも特筆すべきは多量のシリカ(ケイ素)を茎部に含んでいることです。そのため、茎がざらつき、故に馬の剛毛の尻尾という名前で呼ばれるようになったようです。
シリカには鉱物由来(クリスタルなどの結晶性)のものと、植物由来の、非結晶性のものがありますが、スギナは後者に属します。
シリカは、体内では栄養素を誘導する役目を担っていると言われ、カルシウムやコラーゲンの生成をサポート、エラスチンの結合を速やかにし、強化してくれるという報告があり、骨や爪、髪には欠かせない成分です。
スギナの成分は水溶性なので、服用はお茶(浸剤)が最適と言われています。味もほとんど無味無臭なため、とても飲みやすいです。
このたび、骨折した母は、炎症や痛みに加え、心的ショックもあるために安眠できないと話しておりましたので、スギナを主体にし、複数のハーブのブレンドしたお茶を作りました。
「特製ハーブのブレンド」配合の割合
スギナ:10
ジャーマンカモミール: 2(スギナ10に対しての割合。スギナが10gなら2g)
セントジョーンズワート:2
スギナに、鎮静と安眠用の「ジャーマンカモミール」、そして心的ショック用の「セントジョーンズワート」を加えます。母には、1日、3~5杯のお茶を飲むようにすすめています。
スギナには利尿作用がありますので、インナードライになりすぎるのを避けるため、水や、アイソトニック飲料なども気をつけて摂るようにするといいでしょう。
スギナを使った手作りふりかけ
また、無味無臭のスギナのミネラルを摂取するのに、ふりかけにしてご飯のお供にするのもオススメです。
作り置きはしないで、1食ごとに少量作ります。
「スギナのふりかけ」作り方
【1】乾燥スギナ茶、茶さじ1杯分を指でもんで細かくする。
【2】天然塩ひとつまみとすりゴマ、茶さじ1杯を【1】に混ぜる。
スギナのほのかな香り、ゴマの風味が香ばしく、ご飯によく合います。ぜひお試しください。
私自身も最近は爪が割れやすいので、スギナを意識的に取り入れようと思っています。
※スギナ茶に使用するスギナは、どこにでも生えていますが、ハーブとして摂取するものは安心、安全な場所で採取加工されたものを用いてください。
以下のものをオススメします。
【スギナに関する注意】
※ 万能効果のスギナですが、植物性のアルカロイド(パルストリン)も微量に含まれているので、大量摂取を避けてください。
※心臓や腎臓機能に問題のある方は医師にご相談の上、用いてください。
文・写真/飯田裕子
飯田裕子(いいだ・ゆうこ)
1960年東京生まれ。写真家・ハーバリスト。30代の後半にストレスと過労で体調を崩すも、医療行為を受けながらハーブと出会い回復。メディカル的なハーブに興味を持ち、取材を始める。英国在住のハーバリスト、リエコ大島バークレー女史と出会い「ハーブの薬箱:文化出版」の企画、撮影に携わる。その後、日本メディカルハーブ協会のハーバルセラピストの資格を獲得。ハーブの知恵を生かすべくガーデンスタジオJP(https://www.facebook.com/gardenstudiojp/?pnref=lhc)として活動を始める。85歳になる元医師の父と母の遠距離プレ介護が始まったばかり。