「認知症」「糖尿病」「高血圧」「骨そしょう症」症例別ウオーキング法で不調を改善
健康維持のために最適な運動とされるウオーキング。血流がよくなる、脳が活性化する、体が若返る、骨粗しょうや認知症の予防、うつ病の改善…など、さまざまな健康効果が期待できるといわれている。気温も暖かく、ウオーキングを始めるのにうってつけの春。効果を高める、症状別ウオーキング法を医師で東京山手メディカルセンター健康管理センター長の西田潤子さん、1992年バルセロナ五輪50km競歩代表でウオーキングプロデューサーの園原健弘さんに聞いた。
正しい歩き方をしていれば血流が促進されるため、生活習慣病をはじめとする多くの不調は改善される。ここでは、特定の健康効果を高めるウオーキング法を紹介しよう。
「症例によっては、歩くタイミングを変えたほうがいいものもあります。また、がんばりすぎは症状の悪化を招くこともあるので、気をつけて」(西田さん)。
糖尿病
→食後1~2時間以内に、少し速めに歩く
糖尿病予備群の境界型や軽度の糖尿病の改善にも、大きな効果がある。
「この時期にウオーキングを行うと、インスリンの働きをコントロールできるようになります。大切なのは、歩くタイミング。血糖値が高くなる食後1~2時間以内に、できれば毎日、少し速めに歩き、少しずつ歩数を増やしてください」(西田さん)
定期的に血糖値を測り、医師の指示を受けながら歩くと、半年後には血糖を取りこむ筋肉の働きが強化され、インスリンの働きが改善されるはず。糖尿病の発病も予防できるので、血糖値が気になる人は、とにかく歩くべし。
高血圧
→笑顔でゆっくり30分“ワンツー・呼吸ウオーク”を
高血圧の予防には、塩分や過度の飲酒を控えるなどの食生活の見直しが不可欠だが、運動療法としてのウオーキングも有効だ。
「歩きながら、笑顔が作れるくらいのゆっくりしたペースを心がけてください。あまり速いと心臓に負担がかかり、血圧が上昇してしまうので注意して」(西田さん)
「ウオーミングアップを兼ねてゆっくり歩き出し、心臓がバクバクいわないように、階段や坂道は避けましょう。息を止めると血圧が上がりすぎるので、『1、2、1、2』と掛け声をかけながら歩くと、自然に呼吸ができますよ」(園原さん)
骨粗しょう症
→日光を浴びて20分。坂道歩きで筋肉と骨を刺激
骨密度が低下して骨折しやすくなる「骨粗しょう症」。女性は閉経によって女性ホルモンが低下する50代からリスクが高まる。これを予防すするには、骨をつくるカルシウムを摂取するだけでは充分ではない。
「日光を浴びると、カルシウムの吸収を高めるビタミンDが体内で合成されます。さらに、骨は運動などで適度な刺激を与えると強くなります。つまり、カルシウムを摂り、日光を浴びながらのウオーキングが有効なのです。紫外線が気になる場合は、日焼け止めや帽子などでガードし、サングラスをしてから歩くこと」(西田さん)
日中に歩いて買い物に出かけるようにすれば、それだけで骨粗しょう症対策に。時には坂道や階段などを歩いて、筋肉や骨に刺激を与えると、効果が高まるそうだ。
認知症
→複数のことを行いながらの「マルチタスクウオーク」で脳活を
「ウオーキングには認知症の予防にある一定の効果がある」と厚生労働省が推奨している。また、認知症予防の研究に取り組む国立長寿医療研究センターでは、体と脳に適度な刺激を与える、ウオーキングプログラムを開発している。
「日常歩行では、周りの景色を見て、植物などの名前を言ったり、車のナンバープレートの数字を掛け算したり、4つの数字で10になるような計算式を考えながら歩くなども、立派なマルチタスクです」(園原さん)
階段やデコボコ道に気を配ったり、会話をしながら歩くのもいいそうだ。
「頭を使ってウオーキングの計画を立てたり、外で人と会って会話をすることも、脳を刺激します。短い距離からでもいいので、外歩きがおすすめです」(西田さん)
※女性セブン2017年3月30日・4月6日号