「かかと着地・地面を蹴る」は足腰を壊す? 60才から実践したい、100年歩ける体を目指す「超歩行」とは
背筋を伸ばし、地面を蹴ってきびきびと歩く――ウオーキングは体を引き締め、健康長寿につながる効果があるが、無理をすれば足や腰の痛みを引き起こすことに。60才を過ぎたら、「痛まず、疲れず、いつまでも元気に歩く」のが正解。そのヒケツが、東洋医学にありました。
ウオーキングで「腎・骨・脳」を強化
年齢を問わず気軽に行えるウオーキングは、脂肪燃焼や生活習慣病予防、血糖値改善、骨粗しょう症や認知症の予防、気分の安定など多くの健康効果が知られている。健康診断で「もっと歩きましょう」と指導を受けるのはそのためだ。
「西洋医学によってウオーキングの医学的効果が解き明かされていますが、東洋医学の観点でも、ウオーキングは長寿に欠かせない健康法です」と話すのは、鍼灸師の稲村崇さんだ。
「歩くことで、生きるために必要な『腎・骨・脳』が養われるからです。
西洋医学でいう『腎臓』は老廃物を尿として排出し、必要なものを再吸収する、水分の代謝にかかわる臓器と定義されていますが東洋医学の『腎』は、それに加え、生命の源となる『精』と呼ばれるエネルギーを蓄える臓器群と捉えられています。
また、腎は『成長、生殖、老化』といった人間の生命活動に深くかかわっており、腎に蓄えられた精が豊潤であれば骨は強く丈夫になり、衰えればもろくなると考えられています」(稲村さん・以下同)
脳は、東洋医学では「髄海」と呼ばれており、腎から生まれた「髄(骨髄)」が、骨を通じて収まる場所とされている。つまり、腎に蓄えられた精が満ちていれば髄海も豊かになるため、思考力や集中力、記憶力が向上し、不足すると、もの忘れや集中力の低下が起こるのだという。
「東洋医学では、腎を養うためには適度な歩行が有効と考えられています。足の裏には腎のツボがたくさんありますから、歩くことでツボが刺激され、腎の機能ばかりか、連動して骨や脳の機能をも高める効果があります」
ウオーキングは体にいいことずくめだが、デメリットもあるという。
「一般的なウオーキングで推奨されている『かかとで着地し、足指で地面を蹴る歩き方』を続けていると、体を傷める可能性もあるのです」
100才まで足を長持ちさせる歩き方
「かかとで着地し、足指で地面を蹴る」歩き方の問題点はどこにあるのか。
「かかとで着地すると足は相当強い衝撃を受け、特に足裏へのダメージが大きくなります。実際、はだしで『かかと着地』をすると、けっこう痛いはず。そもそも人間の足の構造は、かかと着地に適していません」
かかと着地の弊害は大きい。歩行時にかかとの骨が内側に倒れる「過剰回内」が起こり、足裏のアーチの崩れや足底筋膜炎、外反母趾、タコなどの原因にもなる。
「次に、足指で地面を蹴る動き。これは足首やひざ、股関節を伸ばしながら筋肉を使って体を持ち上げるため、関節への負担が大きくなって消耗を早め、痛みやゆがみを招きます。また、左右の腕を振り、体をひねって歩くため体幹がねじれ、腰痛の原因にもなるのです」
それを防ぐため、稲村さんは真逆の歩き方を考案。「超歩行」と名付け、足腰に痛みを抱える人やシニア層にすすめている。
「『超歩行』は、足裏全体でなめらかに着地し、地面を蹴らずに足を上げて進みます。関節への衝撃や体のひねりが少ないため、足首やひざ、腰の痛みが起こりにくい。足裏全体を使うので、腎のツボも刺激できます」
筋肉を酷使しない“省エネ歩行”は長い距離を歩くのに適し、高齢者でも無理なく歩けるのが特徴だ。
「車や電車のない江戸時代は、1日数十kmもの長い距離を効率的に歩く必要があったため、誰もが『超歩行』でした。疲れにくい点で、理に適っているのです」
かかと着地ウオーキングは、筋力をつけて脂肪を燃やす「エクササイズ」としては、かなり有効。だが、「100年安全に歩く」という点でみると、体への負担が気になる。60才を過ぎたら、旅行や買い物などたくさん歩く場面で「超歩行」を取り入れるなど、足を長持ちさせる方向にシフトしていくのが、健康寿命の延伸につながる。
「若い人でもひざや腰に痛みがあれば、超歩行で痛みを軽減させることが可能。股関節から下のゆがみが生じにくい歩き方なので、O脚の予防にもなります。軽度の外反母趾なら、歩くだけで自然に治ることも」
ウオーキングの主な健康効果
【1】ダイエット効果
【2】生活習慣病を防ぐ
【3】血糖値のコントロール
【4】メンタルの不調を防ぎ、気分が安定する
【5】骨と筋肉を強くする
【6】認知症予防etc.…
東洋医学から見た「歩行」の効果
中国最古の医学書『黄帝内経』には「腎は骨を主る」「腎は髄を生じ、脳に通ず」の一文があり、2000年前から腎の重要性が説かれていた。老化を左右する腎を養うには、足裏のツボを刺激する軽いウオーキングが適しているという。
◆教えてくれた人・鍼灸師・稲村崇さん
足専門の治療院「京都コンディショニング」院長。登録者数50万人超の人気YouTube「足底筋膜炎専門ちゃんねる」を運営。新著に『10年治らなかった足・腰・膝 慢性の痛みがつまんで、ひっぱるで消えた』(KADOKAWA)がある。
取材・文/佐藤有栄 イラスト/こさかいずみ
※女性セブン2026年10月1・8日号
