倉田真由美さん「お得なバスツアー」くらたまね~&らいふVol.34
漫画家の倉田真由美さんは、今年の5月に初めてバスツアーに参加して以来、すっかりハマってしまったという。人生で初めて観た壮観な景色、もぎたての味に感嘆した旬の果実――妹と一緒に参加した日帰りバスツアーで堪能したもの、そしてそのお値段は?
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。夫の叶井俊太郎さん(享年56)の闘病から看取りまでを綴った書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。
姉妹でバスツアーへ
最近、バスツアーにハマっています。
きっかけを作ってくれたのは妹です。
「バスツアーって、楽でいいんよ。どんなに疲れても、運転してくれる人がおるけん」
なるほど、私は免許を持たず助手席ばかりなので、旅先でいつも妹が運転してくれるありがたみを忘れかけていました。
「そうね、じゃあ行ってみようか」
と、初めて参加したのが今年の5月、益子陶器市のツアーでした。駐車場がいっぱいで、自家用車だったら車を停めるのにも一苦労だったはずですが、バスなのですんなり降りることが出来ました。好きな時に好きな場所に行けないという制約はありますが、観光スポットの下調べもルート検索もいらないし、マイナスを補うプラスもあるのがバスツアーです。
茨城のバスツアーの中身
そして先日また、私たち姉妹は茨城の「那珂湊おさかな市場〜ひたち海浜公園〜梨畑で梨狩り」というバスツアーに行ってきました。ランチは付いておらず一人約7500円、妹にとって初めての茨城県です。
新宿からバスに乗って最初の目的地、おさかな市場に到着したのはお昼前頃。既に市場内はかなり混雑していて、海鮮丼の人気店には行列ができていましたが、私たちは敢えて人気店ではない店を選びました。
店内には結構空席があり、「大丈夫かな?」と恐る恐る「刺身定食」を注文しましたが、これが大正解。ボリュームもあり、鯛など魚以外に好物の貝類がホタテと白ミル貝の2種類、頭のついた赤エビも2尾入っていました。値段も人気店は2000円超えていたりするのにかなり安く、「当たりだったね」と言いながら店を出ました。
その後、店頭販売の行列に並んでその場で殻を外したばかりの大きな生牡蠣(一個800円)を食べ、売り物の色とりどりの魚介を眺めて市場を渉猟していたら時間が来たのでバスへ戻りました。出発して15分ほどで、国営ひたち海浜公園へ到着。
「海の中道に似ているねえ」
私たち姉妹の故郷、福岡には海の中道海浜公園という同じ国営の公園があります。バスを降りひたち海浜公園に入場した私たちは、口を揃えて言いました。
だだっ広い芝生の広場、海が眺められるロケーション、そして花畑。慣れ親しんだ海の中道にそっくりです。今回ここでは一面の「コキア」が見頃でした。
コキア畑って初めて観ましたが、緩やかな丘にこんもり丸くかわいらしい一年草のコキアが整然と並んで赤く色づいていて、なかなか壮観でした。人生で、目にしたことがない風景。山の紅葉など自然の草木とはまた異なる、人の手が作り上げた美しさというのもまたいいものです。
しかし結局ただ広い公園なので、コキアを観終えたら私たちはただ歩くくらいしかできません。園内をだらだら歩き回っている時に見つけた食堂でケーキを食べたくなりましたが、次が梨狩りなので我慢しておきました。
「暑くても喉が渇いても、なるべく我慢しよう」
と、路上販売のソフトクリームもレモネードも我慢して、バスに戻りました。次がいよいよ梨狩りです。実は私は、今回のツアーの中で一番楽しみにしていたのが梨狩りです。果物の中でも、梨はかなり好物なんです。
梨狩り「30分食べ放題」
目指す梨畑にはすぐに到着し、私たちバスツアーの一行がバスを降りると「ようこそ!」と慣れた様子の梨畑オーナーの男性が出迎えてくれました。
「今日は30分間、梨の食べ放題です。残さないように、食べきってくださいね」
私たちはナイフを一本とカゴを一つずつ受け取り、オーナーの先導について畑の中を歩きました。程なく、重そうな大きな梨がたわわに実った木々の下で、オーナーが足を止めました。
「この辺りの梨を食べてください。ここからあっち側は種類が違う高い梨なので、取らないようにお願いします」
この場で食べる以外の持ち帰りたい分は、カゴの中に入れて後で料金を払うというシステムでした。私たちは一斉に、どの梨がいいか品定めしながら歩き出しました。ちなみに「高いから食べてはダメな梨」と「食べていい梨」は見た目では区別がつかず、間違って手を伸ばした人が止められたりしていました。
私は一際大きく見えた梨をもぎ、皮を剥いて一切れナイフで切り取ってから口に入れました。
「美味しい!」
何という瑞々しさ。甘く、水分がブシャー!と弾けます。食べながら、飲めるほど果汁が溢れる梨。やっぱり果物はもぎたてが圧倒的に美味しいと感嘆しました。
「水分の量が違うね。店頭に並ぶ頃は、だいぶん水分が抜けちゃってるんやろうね」
妹も喜んで、シャクシャク音を立て食べています。昔は、果物狩りなんて別にわざわざ行かなくてもスーパーでいくらでも買えると舐めていましたが、昨年青森で採れたてりんごを食べて驚愕して以来、宗旨替えしています。果物は木からもいだ直後が、圧倒的に美味しいです。
しかし残念ながら、お腹は一つです。大きな梨を2個食べると、限界がきました。
「やっぱり2個でお腹いっぱいだね」
小さめを選んで食べていた妹が、ナイフをカゴにしまいながら言いました。
「うん。お腹いっぱいというか、梨はもう食べられない…しょっぱいもの、ハンバーガーとかなら入るけど」
私もこれ以上は美味しく食べられないと、諦めました。あとは、持ち帰り分を採るだけです。重いけどあまりにも美味しいので、できるだけたくさん持ち帰りたいと大きいのを4個選び、お会計は2000円くらいでした。リュックに入れるとずっしりと重いですが、重い思いをする価値はあります。
更に、その農場で投げ売りで売られていたブドウが一房100円と激安だったので2房購入。「酸っぱいから、加工するといいですよ」と言われたので帰宅後ジャムにしました。種が邪魔だったけど、酸味がしっかり残って抜群のジャムになりました。ヨーグルトやアイスにかけて、大活躍しています。
