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兄がボケました~認知症と介護と老後と「第81回 度重なるてんかん発作」

 50代で若年性認知症を発症した兄をサポートする日々を送るライターのツガエマナミコさん。67才になった兄は、現在特別養護老人ホームで暮らしていますが、入所のきっかけになったのは、ショートステイ先で起こったてんかん発作でした。それから歩くことができなくなった兄は、ベッドで過ごす時間が多くなります。入所先でも、発作が起きた兄は、マナミコさんの付き添いの元、通院し薬を処方してもらっていますが、その後も度々発作が起こるようになり気を揉むマナミコさんです。

 * * *

明らかにいつもと違う様子の兄

 今週、兄に面会に行くと受付で看護師さまが駆け寄ってこられて、「さっきお兄さんがまたてんかんの発作を起こしまして」とご報告を受けました。

 小一時間前のことだったようで、痙攣は10秒ぐらいで収まったとのこと。「これ以上頻繁になるようなら、また血液検査をしてお薬が足りているのか調べた方がいいと思います。もう少し様子を見ますが、それを検討しているのでよろしくお願いします」と告げられました。

 兄のいるエリアへ行くと、久し振りにリビングで車イスに寝そべる兄を見ました。

「今は人の目がたくさんあるところにいてもらっています」と顔なじみのスタッフさま。「下で聞きました」と申し上げると、「でも今ゼリーを食べてくれたので大丈夫そう」と言ってくださって、ホッと一息つきました。

 ただ、兄を見ると目はうつろでほとんど開いておらず、明らかにいつもとは違う様子。お部屋に移動して、爪を切ったり話しかけても無反応ですし、手が常にピクピク動いていて止まりません。お薬が増えるのは不安ですけれど、発作の度に兄が息ができないほど苦しむのはもっと嫌ですから、お薬で発作が治まるものならそうしていただきたいと思いました。

 ピクピクが止まらない兄の手を握って、肩を撫でたり、頭を撫でたりしているとだんだん目を開けてくれるようになり、急にいつものパチパチ拍手をしてくれたときには、「やっと戻って来てくれた」と安堵いたしました。それでもピクピクは止まらないので、なかなか帰ることができず、この日の滞在時間は1時間半と長めになりました。帰るときは後ろ髪を引かれる思い。「また来るね」という声に反応はありませんでした。

 今頃はもうピクピクも治まり、普通にお食事ができていると信じております。

 そんな中、司法書士の先生から第2弾の書類が届きました。

 今度は、後見人とは別の、遺産整理に関わる書類でございます。その中には見積書が入っておりまして、また驚くほどの金額が書かれておりました。これはおそらく相続人全員で分担すると思われます。

 同封されていたのは、複数枚の委任状でございました。その一枚一枚に名前を書き、実印を押し、印鑑証明と共に返送してほしい旨が書かれておりました。

 委任状には「○○に関する一切の権限」「〇〇の申請、および受領」といった委任項目がズラッと並んでおりまして、実印を押してもいいものか不安になりました。ですが、叔母がつてをたどって依頼した司法書士さまですし、もはやいろいろお任せしているので信頼するしかございません。久しぶりに実印を引っ張り出し、押印する緊張感を味わいました。

 印鑑証明は、駅前の行政サービスセンターまで取りに行って参りました。念のために「印鑑登録証カード」も持参しましたが、マイナカードですんなり申請でき、「もはや印鑑登録証は不要か」と一抹の寂しさを覚えました。まるで、大事に保管してきたお宝が二束三文だと告げられたときのような気持ち。「まだ充分使えますので、お大事になさってください」という声がどこからか聞こえた気がいたしました。

 そもそも30年も塩漬けしてしまった遺産整理や相続の手続きは煩雑でございます。

 叔母がこの積もり積もった遺産問題を整理すべく、認知症になった叔父の代わりに立ち上がってくださったことは感謝でしかございません。叔母は相続人ではないのに“長男の嫁”として役目を背負ってくださったのです。

 最悪、叔母が死ぬまで放置していたら、このお役目は、いとこの中で最年長である兄の仕事。つまりわたくしが動かなければならなかったのでございます。それを思えば、この一連の整理にお支払する金額を惜しんではいられません。

 今はただ、この問題が完了するまでは、高齢の叔母も認知症の叔父も、誰一人欠けることなく過ごしていただかなければと、切に祈るばかりでございます。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性63才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。

イラスト/なとみみわ

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