「冷蔵庫を過信しない」シニア世代こそ注意したい 梅雨、夏本番に向けて今すぐ見直すべき食中毒対策を家事アドバイザーが指南
食中毒は実は一年中発生している。気温と湿度が上がり始めるこれからの時期は特に注意が必要だ。シニア世代に多くみられる「焼けば大丈夫」「冷蔵庫に入れてあるから問題ない」といった“いつもの習慣”が、リスクにつながることもある。これからの季節を元気に過ごすために、家事アドバイザー・矢野きくのさんに、食中毒予防の3原則と見直したい生活習慣を教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
節約・家事アドバイザー・矢野きくのさん
家事の効率化、家庭の省エネを中心にテレビ・講演・連載などで活動。NHK『ごごナマ』準レギュラー他テレビ出演多数。新聞での連載のほか自動車メーカー、家電メーカーなどの企業サイトでコラムの執筆経験も。近年は中高年層の家事アドバイスや家庭でできるSDGsについての講演、SNSでの情報発信でも活動している。著書『シンプルライフの節約リスト』、『「節電女子」の野菜レシピ!』など。https://yanokikuno.jp/
食中毒を引き起こす細菌やウイルスは一年中発生している
食中毒が心配な季節というと「真夏」のイメージが強いかたも多いと思いますが、実は一年中発生しています。とくに湿度も気温もぐんぐんと上がるこれからの時期は、私たちの身の回りで一気に活発になるのが、食中毒を引き起こす細菌やウイルスです。
「うちは昔からずっと同じやり方で料理しているから大丈夫」「冷蔵庫に入れているから安心」と思っていませんか? 実は、その「いつも通り」の中に、思わぬ落とし穴が潜んでいます。
特にシニア世代は、加齢に伴い免疫力が低下しやすく、少量の菌でも食中毒を発症しやすいうえ、重症化しやすい傾向があります。
これからの季節を健康に元気に乗り切るために、今日から見直したい「食中毒対策の3原則」と、シニア世代ならではのチェックしたい家事ポイントをまとめました。
食中毒予防の「3原則」
食中毒予防の基本は、「付けない」「増やさない」「やっつける」の3つです。
1. 付けない(清潔・洗浄)
●手洗いの徹底
帰宅時、調理前、生の肉や魚・卵を触った後などは、必ず石けんで手を洗いましょう。
●器具の使い分け
生肉や生魚を切ったまな板と包丁には菌が付着しています。そのまま洗わずに、サラダ用の野菜や加熱しない食品を切るのは絶対にNGです。可能であれば肉用・魚用・野菜用とまな板、包丁を分けるかまたは、使うたびに熱湯や塩素系漂白剤で消毒しましょう。
2. 増やさない(迅速・冷却)
●買ったらすぐ冷蔵庫へ
食品を購入した後は、寄り道をせず真っすぐ帰宅し、すぐに冷蔵庫(10℃以下)や冷凍庫(-15℃以下)に入れましょう。
●常温放置は厳禁
菌の多くは20℃~50℃の環境で爆発的に増殖します。「ちょっとの間だから」と食卓に料理を出しっぱなしにすることは、菌にエサと最適な繁殖場所を与えているのと同じです。
3. やっつける(加熱・殺菌)
●中心部までしっかり加熱
ほとんどの細菌は加熱によって死滅します。加熱調理する際は、中心部の温度が75℃で1分間以上(ノロウイルス対策の場合は85℃~90℃で90秒以上)加熱することが目安です。
シニア世代が特に注意したい「4つの家事ポイント」
長年の家事の経験があるからこそ気づきにくい「現代の落とし穴」があります。以下の項目に心当たりはありませんか?
1.「冷蔵庫を過信」していませんか?
「冷蔵庫に入れてあるから腐らない」というのは大きな誤解です。冷蔵庫は「菌の増殖を遅らせる場所」であり、「菌を殺す場所」ではありません。
また、冷蔵庫の詰め込みすぎに注意しましょう(目安は7割以下)。詰め込みすぎると冷気が循環せず、内部の温度が上がってしまいます。
低温でも増殖する細菌も存在します。冷蔵庫に入れているからと安心せず、一度火を通したおかずでも2~3日以内には食べきるようにしましょう。
また冷蔵庫の中は常に清潔にしておくようにする必要があります。冷蔵庫内で垂れたままの調味料、野菜室に残っている野菜くずはすぐに取り除き、アルコールシートなどでしっかり拭き取るようにしましょう。
2.「もったいない」が引き起こす危険
シニア世代に多いのが、「食べ物を粗末にしてはいけない」という気持ちから、少し傷みかけたものを食べてしまうケースです。
「火を通せば大丈夫」「少し変なにおいがするけれど、よく焼けば食べられる」というのは非常に危険です。細菌の中には、加熱しても壊れない毒素を作るもの(黄色ブドウ球菌など)がいるため、加熱しても食中毒を防げないことがあります。
少しでも「怪しい」と思ったら、もったいなくても思い切って捨てる勇気を持ってください。健康を害する医療費や体への負担に比べれば、決して高いものではありません。
3.「作り置きのカレーや煮物」の落とし穴
「一度にたくさん作って、何日かに分けて食べる」という食習慣は、特に一人暮らしや夫婦二人の世帯でよく見られます。しかし、ここに大きな罠があります。
加熱しても消えない「ウェルシュ菌」という細菌は、空気のない場所(粘り気のあるカレーや煮物の鍋の底など)を好みます。鍋ごと常温で一晩放置すると、翌日には菌が大量増殖していることがあります。
たくさん作った料理は鍋のまま放置せず、また自然に冷めるのを待つのではなく、熱いうちに熱が伝わりやすい清潔な容器に入れて氷水などで急速に冷まし、冷蔵庫へ入れましょう。
食べる際は、食べる分だけを取り出し、鍋の底から空気を混ぜるようにして、全体が沸騰するまでしっかりと再加熱してください。
4. 調理器具などキッチンアイテムの除菌
調理器具、包丁やまな板、食器洗いのスポンジにも菌がついていると、それが口に入り健康を害することもあります。調理器具はキレイに洗ったらしっかりと乾燥をさせます。使った食材によっては、洗ったあとにアルコールスプレーをしておくのもよいでしょう。また忘れがちですが、食器洗いスポンジも菌が残りやすくなっています。除菌力のある洗剤などでよく洗いしっかりと乾燥させてください。
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これからの季節を安全に過ごすためのキーワードは「過信しないこと」です。
自分の体力を過信せず、冷蔵庫の性能を過信せず、そして「昔ながらの勘」だけに頼らないことが、大切な体を守ることにつながります。
●手洗いはこまめに、丁寧に
●料理は食べる分だけ作り、残ったらすぐ冷蔵
●「もったいない」より「安全第一」。
小さな習慣の積み重ねが、あなたと、あなたの大切なご家族の健康を守ります。今日からの調理や食事の時間を、ぜひ一度見直してみてください。
