加熱しても危険!食中毒を起こす「危ない食品」「NG習慣」を解説
各地で猛暑が続く今年の夏。これだけ気温が上がれば、気がかりなのは食中毒だ。7月だけでも、埼玉県のすし店や京都府の刑務所、神奈川県の焼肉店など、全国各地で食中毒が報告されている。
猛暑の最中、スーパーへ。傷みやすいお刺身は避けて、干物に手を伸ばす。暑いのに毎日買い物に出るのはしんどいから、一気に食品を買いだめして冷蔵庫にぎっしり詰める。夏休みで家にいる子供たちに炒飯を作るために、炊飯器から熱々のご飯を出して冷ましておこう…。
何気なくしているこれらの行動はすべて、食中毒を引き起こすリスクあり!
危ない食材、習慣を解説する。
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危険な食材は、焼肉やすしなど傷みやすいものだけではない。6月には北海道札幌市でスーパーで売られていた「さんまの干物」から食中毒が発生した。
日本食品衛生協会の栗田滋通さんが解説する。
「干物に加工する前の管理状態が悪かったために、魚のアミノ酸が細菌によって代謝され、『ヒスタミン』という食中毒の原因となる化学物質ができたことが理由です。細菌と違ってヒスタミンは、干しても加熱しても消えません。ヒスタミンによる食中毒は、フライやみそ漬けなど魚の加工品で平均すると毎年10件以上が報告されています」
加熱すれば必ずしも菌がすべて死滅する訳ではない
干物のように一見、食中毒とは無縁に思える食品にも、危険が潜んでいるのだ。“実は危ない”食品”は、他にもある。
●冷凍した肉
「肉は冷凍しておけば大丈夫」というのは大きな誤解。
「冷凍すれば細菌は増えなくなりますが、死ぬわけではない。とくに解凍が不充分な状態で調理すると、表面は焦げても中まで火が通らないことがあるので要注意です。また、常温で長時間かけて解凍すると、その間に菌が増殖してしまうので、冷蔵庫の中、または電子レンジで解凍することをおすすめします」(栗田さん)
●卵の殻
傷みやすい食材の代表格として広く認知されている「卵」は、「夏場は生卵を食べない」「卵をゆでる時はしっかり」など、さまざまな対策法が喧伝されている。しかし、気をつけるべき点は中身ではなく、“殻”にあるという。鳥居内科クリニック院長の鳥居明医師が解説する。
「食中毒の原因菌であるサルモネラ菌は卵の殻に付着しているので、殻を触った手を洗わずに調理するのは御法度です。すき焼きに使う生卵を殻ごと器に入れて食卓に出し、同じ器に割入れて食べるといったやり方も危険性が高い」
●炒飯、おにぎり
傷がついた手で調理すると、黄色ブドウ球菌が食べ物に張りついて、食中毒を引き起こすことがある。
「黄色ブドウ球菌は手や指、鼻など人間の皮膚に広く生息する菌ですが、とくに傷口に集まりやすい。そのため、傷がついた手でおにぎりを握ると、ブドウ球菌がご飯にくっついて食中毒を起こす可能性があります」(鳥居医師)
おにぎりだけではなく、アツアツの炒飯にも、食中毒のリスクが潜んでいる。
「お米や小麦粉、スパゲッティなどに潜伏し、10℃以上の室温で増殖するセレウス菌は、加熱しても死滅しません。炒飯にしようと思って、炊いたご飯を室温が高い場所に置いておくと、セレウス菌が繁殖し、そのご飯で作った炒飯で食中毒になる。ご飯やスパゲッティは保存方法に気を配ってください」(栗田さん)
「火を通せば安心」という思い込みは、捨てた方がよさそうだ。
清潔で安全なはずの場所が菌の温床に…
●タオル
台所のタオルも、扱い方次第では「清潔を保つ」どころか食中毒の原因になる。鳥居内科クリニック院長の鳥居明医師が解説する。
「タオルは細菌の温床になりやすい。とくに暑い時期は菌が増殖しやすいので、湿ったまま何回も使うのはやめましょう。手をきちん洗ってから拭くことと、タオルを毎日取り替えることが大切。難しいかもしれませんが、家族それぞれが別のタオルを使うか、1回使って捨てられるペーパータオルを使えば、タオルが原因で起きる食中毒はほぼ防げるでしょう」
●冷蔵庫
使い方を間違えれば、冷蔵庫の中も危険地帯になる。日本食品衛生協会の栗田滋通さんが言う。
「ものを詰めすぎていたり、長時間ドアを開けていたりすると冷蔵庫の温度が上がって、細菌が増殖してしまいます。中身はスカスカに、取り出す時間は最小限に収めることを心がけましょう。ただし、冷凍庫は逆。冷凍された食品同士がお互いに冷やし合うので、ぎっしり詰めても問題ありません」
●ペットボトル
一度口をつけたペットボトル飲料は、飲み口に雑菌が付着し、増殖する。
「菌が繁殖しやすい夏場は、直接口をつけずにコップに注いで飲むことをおすすめします。もし直接飲む場合は、その日のうちに飲み干し、翌日まで取っておかない方が無難です。雑菌はペットボトルのなかにも入り込んでしまうので、飲みかけのペットボトルを常温で置きっぱなしにしておくと、ペットボトルの中で菌が増殖し、食中毒になる可能性がある」(鳥居医師)
●トング
トングで生肉を網にのせて、焼き上がった肉を同じトングでつかんで皿にとる。焼肉やバーベキューの時についやってしまいがちだが、危険性大だ。
「生肉を焼く時と焼けた肉を取り分ける時に同じトングを使うと、生肉についた菌が、焼き上がった肉の表面に付着してしまい、それを口に入れることになります」(鳥居医師)
生物と焼き上がった物を取るトングや菜箸は、面倒でも別のものを使い分けよう。
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家庭で食中毒を防ぐための基本は、上記の食材の調理方法や取り扱い方法に気をつけたうえで、手洗いを徹底すること。前出の栗田さんが言う。
「入念な手洗いに加え、夏場に調理する際には使い捨ての手袋をつけることをおすすめします」
それでも、もし食中毒にかかってしまったらどうすればよいのか。
「下痢や腹痛、吐き気などの症状が出たら、まず整腸剤や下痢止めをのんで様子を見て、それでも症状が落ち着かなければ受診してください。下痢をすると脱水症状を起こして重症化することがあるので、水分を充分にとることも大切です」(鳥居医師)
ただし、O-157は下痢止めをのむとかえって危険なため、激しい腹痛や血便などの症状が出たら、すぐに病院に行くべし。
連日、35℃を超える猛暑日となる地域が相次ぎ、さらなる暑さが予想される中、食中毒はこれからさらに要注意。せっかくの夏休みが台なしにならないよう、予防は万全に!
※女性セブン2018年8月2日号
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