約4300万人が悩む高血圧 ベストセラー薬剤師が教える“薬に頼らない”降圧メソッド【ストレッチ&ツボ押し】
日本の高血圧患者は約4300万人。この国民病について、「薬では治らない」と断言するベストセラー薬剤師がいる。著書累計270万部という“日本一売れている血圧本”の著者が説くのは、薬のプロだからこそ分かる「脱・降圧剤」の重要性。医者にも薬にも頼らず、血圧の悩みから解放されるストレッチやツボを専門家が解説する。
教えてくれた人
加藤雅俊(かとう・まさとし)さん/薬剤師・体内環境師(R)・薬学研究者・作家。薬に頼らず体を根本から整える「体内環境学」を提唱。著書に『薬に頼らず血圧を下げる方法』(アチーブメント出版)、『1週間で勝手に血圧が下がっていく体になるすごい方法』(日本文芸社)など。著書累計は270万部を超える。YouTube「加藤雅俊の体内環境塾」
降圧剤の服用は重篤な病気のサインを消してしまう危険性も
薬を飲み続けて数値を下げる――日本の高血圧治療の現場では長年これが常識とされてきた。だが、薬を処方する薬剤師の立場で、その“慣習”に疑問を唱えるのが加藤雅俊さんだ。
「『血圧をコントロールする』との名目で、高血圧患者に生涯にわたり降圧剤を服用させようとする医師が多い。しかし、薬で血圧を下げても体に起こっている問題を根本的に解決することはできません。むしろ数値を下げることで、より重篤な病気のサインを消してしまう危険性があります」(以下「」内のコメントは加藤さん)
製薬会社ロシュで血液の研究に従事してきた血液の専門家でもあり、血圧に精通する薬剤師の加藤さん。『薬に頼らず血圧を下げる方法』(アチーブメント出版)が大ベストセラーになり、著書の累計発行部数は270万部に達する。
「降圧剤を長期間飲み続けると心臓や血管、肝臓、腎臓にまで負担をかけます。さらに薬剤耐性ができてしまい、より強い薬が必要になってしまう」
加藤さんによれば、腎臓の異常など本当に降圧剤が必要な“危険な高血圧”は1割ほどだという。
「9割は加齢とともに自然に上がっていく高血圧です。長年の生活習慣の積み重ねによるもので、高血圧のような慢性疾患は薬では根治できません。一方で降圧剤による弊害は大きく、高齢者の場合、血圧を下げすぎることで立ちくらみやめまいを起こし、入浴中に失神して溺死するケースも少なくない。全身の血流が悪くなるので脳への血流も滞り、脳梗塞や認知症のリスクも高まります」
にもかかわらず、日本の高血圧の基準は厳格化の一途を辿ってきた。90年代までは上(収縮期血圧)が「年齢+90mmHg」だった基準値は、たびたび変更され、現在は「上130/下(拡張期)80未満」。日本高血圧学会の最新ガイドライン(2025年版)では、「上140/下90未満」だった75才以上の治療目標も「上130/下80未満」に改定された。
結果、国内の高血圧患者数は急増し、推定4300万人といわれる。
「病気を治療して患者が病院に来なくていいようにするのが医師の本来の仕事のはず。ところが高血圧に関しては数値を守ることが目標にされ、“じゃあ今回も薬を出しておきますね”といって降圧剤を処方するだけの医者が多い。
また、降圧剤の副作用についての知識が乏しいまま処方している医師も散見されます。誤解を恐れずに言えば、薬の効果と副作用について一番詳しいのはわれわれ薬剤師です。その薬剤師の目から見て、明らかに不要な降圧剤が処方されているケースが多いのです」
もちろん、急激に血圧の数値が上がった、ろれつが回らないといった場合は心臓や脳に異変が起きている可能性があり、“危険な高血圧”なのですぐに医療機関を頼るべきだと加藤さん。
「ですが、体の状態が安定しているなら降圧剤の必要はありません」
そのうえで加藤さんは「多くの人は薬に頼らずに血圧を下げられる」と話す。
「高血圧の主な要因は加齢や運動不足からくる筋肉や血管、心肺機能の衰え、そしてストレスなどによる自律神経の乱れです。生活習慣病なので日々の習慣を少し変えるだけで数値は改善する」
加藤さん考案の降圧メソッドを見ていこう。
筋肉を刺激して血管を柔軟に
血圧を下げるうえで重要なのは、「肺活量の低下」と「血管の老化」の改善だという。
「肺活量が減ると必要な酸素量を脳や全身に送り届けられなくなり、血管が硬くなれば血流が悪くなる。すると心臓はポンプ量を上げて血液を送り届けようとするため、血圧が上昇するのです」
そこで効果的なのが筋肉を刺激して血管を柔軟にし、心肺機能も高める「降圧ストレッチ」。まず実践したいのが胸からお腹の筋肉を伸ばす「胸のストレッチ」だ。
「年齢を重ねると肺の周りの筋肉が弱くなり、姿勢も悪くなりがちです。縮み切った肺を囲む“籠”を広げ、空気をどんどん取り込みましょう」
足を肩幅に開いて立ち、背筋をしっかり伸ばして両手を背中側で組み、肘を伸ばしたまま手を下方向に引っ張る。そこから胸を張って組んだ両手を背中から離し、ゆっくりと上げる。同時に顎を上げて顔を上に向け、胸を張った状態で10秒キープ。
「背中で両手が組めない人、痛くて肘が伸びない人は、タオルを持つとやりやすくなります」
背中から腰の広範囲を刺激する「腰のストレッチ」は腰痛予防にもなる。「脚のストレッチ」は太もも前の筋肉(大腿四頭筋)を刺激して歩行が楽になる効果も期待できる。上半身の前面の広範囲の筋肉を一度に刺激する「お腹のストレッチ」も効果的だ。
「大切なのは継続することです。まず胸のストレッチをやってみて血圧を観察し、変化を見ながらストレッチの種類を増やしていくといいでしょう」
ツボ押しも血圧の安定に効果的
加藤式メソッドでは、「ツボ押し」も重視する。
「ツボ押しは東洋医学の治療法ですが、西洋医学の視点からは“神経が集中している場所”ととらえることができます。降圧のツボを押した刺激は脳の司令塔である視床下部に届き、血圧が“自然なあるべき状態”に整えられていくのです」
特に高い効果が期待できるのが喉仏から指2本分外側にある「人迎(じんけい)」だ。
「人差し指と中指を揃え、中指が当たるようにして首の中心に向かって少し押しこみ、脈を感じましょう。息を吐きながら5秒かけて押し、息を吸いながら5秒かけて離す。これを左右5回ずつ繰り返します」
血圧を上げる要因となる緊張や怒り、ストレスを鎮めるツボもある。
「『合谷』は痛みや激しい怒りを収め、血圧を安定させる効果が期待できます。場所は手の甲の親指と人差し指の骨が接している二股部分から、人差し指側にたどっていったところ。親指を当て、人差し指の骨の際にひっかけるようにグッと押し上げましょう」
首や肩の筋肉の緊張をほぐす「天柱」、精神的な緊張が高まったときに副交感神経を優位にする「内関」、同じく精神面の安定に効果的な「労宮」も試してほしい。
「適当な場所を力任せに押しても効果はありません。神経は非常に脆いため、骨に守られるようにその裏側を通っています。骨の内側に指をすべらせるように押し、『ツーン』とくる感覚があれば、そこがツボ。痛くなる一歩手前の“イタ気持ちいい”強さで5秒ほど押すと、効果を得やすい」
高血圧の改善には加藤式呼吸法も有効だ。
椅子に座り、図のように両手を重ねた中指をへその少し下にある「関元(かんげん)」に当てる。お腹をふくらませながら鼻から息を10秒かけて吸い、次にツボを意識して体を前に倒しながらツボを押し、お腹をへこませながら20秒かけて口から息を吐く。
「深くゆっくりした呼吸によって自律神経の副交感神経が優位になり、降圧効果が期待できます」
