通院しても治らない腰痛の正体とは?5万人を治療した理学療法士が教える根本原因と対処法
腰痛はいまや国民病。長年病院通いを続けている患者は多いが、なかなか改善しないケースも少なくない。なぜ治らないのか、どうしたらこの痛みは消えるのか――。5万人を治療した理学療法士がその理由を解説する。
教えてくれた人
松田圭太(まつだ・けいた)さん/理学療法士・整痛院ふっか総院長・慢性疼痛徒手技術「MSM メソッド(R)」創始者。理学療法士として、医療現場に長年携わった経験から、慢性腰痛など“3年以上続く痛み”に特化、運動療法と認知行動療法を組み合わせた“整痛”治療院「整痛院ふっか」(https://fukka.jp/)を開業。
原因を見つけて根本から直さなければ腰痛は良くならない
何年も通院を続けているのに、なかなか根治に至らない――そんな悩みを抱える人が多いのが腰痛だ。
「医師にすすめられて手術を受けたのに痛みが改善しなかった人や、“年だから仕方ないね”と言われて薬をのみ続けている人がたくさんいます。
大前提として、私は医療批判をしたいわけではありません。しかし腰痛に関しては、正しい治療法を理解していない医者の元で、漫然とした施術が行なわれているケースが多いのが現実です。病院で伝えられることが本当に正しいのか疑う目を持つと同時に、病院以外にも治療の選択肢があることを知ってほしい」
そう話すのは理学療法士で整痛院ふっか総院長の松田圭太さんだ。
長年医療現場に携わった経験から、科学的根拠にもとづく独自のメソッドを開発。これまで医療機関や整体に通っても痛みが改善しなかった5万人超の患者を治療してきた。
その体験をもとに新著『腰痛は医者には治せない』(4月、小学館刊)を上梓した松田さんは、病院では腰痛が改善しない理由についてこう話す。
「そもそも腰痛の原因はわかりにくく、人それぞれで異なります。しかし、原因を見つけて根本から治さなければ腰痛は良くなりません。
医師はレントゲンで異常がある場合など“病名がつく”ものに対してはアプローチできます。一方で、原因を特定できない時は“とりあえず痛み止めと湿布で様子を見ましょう”というように、対症療法を行なうことがほとんどです。痛み止めは一時的には効きますが、根本的な解決にはなりません。その結果、患者さんは延々と痛みを繰り返すことになってしまいます」(以下「」内のコメントはすべて松田さん)
薬を飲んでいる間に腰痛が治まり、「薬で治った」と思う人もいるが、それは腰痛の原因が炎症だったため、服用期間中に“自然治癒”した可能性が高いのだ。
痛み止めや湿布で効果が出なければ、ブロック注射、次の段階として手術をすすめられることになるが、手術を受けたからといって痛みが解消するとは限らない。
3か月以上続く「慢性痛」は通院だけでは改善しにくい
2021年に発表された『慢性疼痛診療ガイドライン』は治療の推奨度を「1(強く推奨する)」「2」(弱く推奨する)」の2段階で評価しており、「手術療法の推奨度は『2』で、“慢性の痛みそのものを治すために手術を安易に選ぶべきではない”という立場が示されています。最新の研究からも、手術は“できれば避けるべき”と認識されている」と松田さん。
痛みには急性痛と慢性痛があり、通常、急性痛は3か月未満で治まることがほとんどだという。
「急性痛は整形外科の領域ですが、3か月以上続く慢性痛は病院では原因がわからないことが大半です。そのまま通院を続けても意味はないと私は考えています」
慢性痛の場合、痛みを感じる場所とは違う部位が原因になっている可能性が高く、整形外科とは別のアプローチが必要になるそうだ。
「筋肉は全身タイツのように繋がっています。例えば体を全身タイツに包んだ状態で『お尻』を引っ張ったら、背中や肩の布地が窮屈になったり、腰に痛みを感じたりする。それと同じで全身のつながりを見なければ、腰痛の本当の原因はわからないのです」
腰痛治療の世界基準は「動かして治す」
患者の体と真摯に向き合って原因を特定し、正しい治療を行なえば腰痛は治せると松田さんは言う。
「長年にわたって腰を反ると激しい痛みが出て、病院で手術まで提案された患者さんが私のところにいらしたことがあります。原因を探るとお腹の筋肉に力が入りにくいために腰が反っていました。そこで腰ではなくお腹の筋肉を意識して治療すると痛みがすっかり消えました。ケースによってかかる時間は異なりますが、適切な対策が取れれば必ず痛みは改善します」
松田さんが治療の中心に据えているのが運動療法である。
「痛みがあるから動かずに安静にしているという人も多いですが、それでは改善どころか悪化してしまう。無理のない範囲で体を動かすことで痛みをやわらげたり、体の動きを回復させたりするのが運動療法です。その効果は各国の研究で科学的に立証されており、腰痛治療の世界的なスタンダードになっています」
松田さんが運動療法で重視するのは、使いすぎている筋肉(過労筋)と使えていない筋肉(不労筋)のバランスを整えること。
「この過労筋と不労筋を意識することにより、自力で慢性痛の原因を取り除き、痛みを改善することができます。問題はどうやって2つの筋肉のバランスを整えるか。そこで私が考案したのが『MSMメソッド』です。負担がかかりすぎて硬くなっている過労筋をゆるめる(Mobility)、働いていない不労筋を鍛える(Stability)、全体を動かす(Movement)、この3つの療法を組み合わせることで痛みを解消できるのです」
松田さんはこのMSMメソッドに「認知行動療法」を加えて、多くの患者を根治に導いているという。
「怪我が治っていても、脳がサイレン(痛み)を鳴らし続けているケースもあります。痛みは脳で感じるため、体だけでなく脳へのアプローチも必要。整痛院ふっかでは患者さんに対し、日常生活のなかで痛みが改善したシーンなどをまとめた『3行日記』を毎日書いてもらい、その内容をセラピストと一緒に話しながら振り返る方法を取り入れています。ここで大事なのは良くなっていることを『認識』することです。この場面では痛くなかったと、少しの違いを実感するだけで思考が前向きになります」
イラスト/タナカデザイン
※週刊ポスト2026年5月1日号
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