快適な介護に適したマットレスの選び方は?福祉用具の専門家が解説「体に合ったものを使えば本人も介助者もラクになる」
在宅介護で使用する「福祉用具」の中でも、睡眠だけでなく生活の質を左右するのが「マットレス」だ。とくに高齢者や要介護度が高くなるにつれ、ベッドで横になっている時間が長くなり、マットレスがへたったり湿ったりして、不快に感じることも。快適な介護生活を送るためのマットレス選びについて、福祉用具のプロに話を聞いた。
教えくれた人/山上智史さん
プロフィール/福祉用具専門相談員・山上智史(やまうえさとし)アップサポート代表
福祉用具貸与事務所・便利屋事業を行う「アップサポート」を起業し、代表を務める。ホームセンターでの勤務経験をいかし、便利な道具や100円グッズなども活用した生活環境を提案。住環境コーディネーター2級、介護福祉士、行動心理士などの資格もいかし、要介護者や介助者のために活動している。https://www.instagram.com/yamaue.satoshi/
介護が始まったらマットレスをどうするか?
「介護用のマットレスは、高齢者の体にフィットするように設計されています。たくさんの種類がありますので、利用されるかたの身体状況や目的に合ったものを選ぶことが大切です」
こう話すのは、介護される人や介助者の負担を軽くするための視点を常に持ち、介護環境をより良くしようと活動している福祉用具専門相談員の山上智史さんだ。
これまで使っていたマットレスを介護用としても使えるのだろうか?
「そういうリクエストをされる人もいらっしゃいますが、おすすめしません。なぜなら、介護用ベッドのサイズと、お使いになっていたマットレスのサイズが合わないことが多いからです。
一般のシングルサイズのマットの幅は100cmに対して、介護用ベッドは、94cm、91cm、83cmなど幅が少し狭く作られています。
介護用のベッドにこれまで使っていたマットを置いて使っていたら、マットレスがはみ出してしまい、端に座ってバランスが崩れて、転んでしまったというケースもあります。
実際、利用者さんから、これまで愛用していた某有名メーカーのマットレスを介護用ベッドで使いたいと要望があったのですが、サイズが合わず危険なので、選び直していただいた経験があります。介護をされる人、介護をするご家族ともに快適な介護生活を送るためにも、マットレス選びは大切です。
介護用のマットレスは介護保険でレンタルができますが、介護用のベッドとあわせてレンタルすることをおすすめしています。福祉用具専門相談員と一緒に、使うかたの体の状況や目的をよく吟味して選んで欲しいと思います」(山上さん、以下同)
ベッドやマットレスを介護保険でレンタルして使うには?
ベッドやマットレスなどの福祉用具を介護保険でレンタルするには、要介護認定を受ける必要がある。
「要介護認定を受けてケアマネジャーが決まったら、介護福祉士や福祉用具専門相談員などの介護スタッフが担当者会議を開きます。そこでどんな介護方針にするか話し合い、ケアプランを立てます。ご家族も参加して、どんなベッドやマットレスが適しているかを話し合い、最適なものを選定し、ご自宅に納品する流れになります」
介護に必要なマットレスを選ぶポイントと注意点
まずは、介護用のマットレスの特徴とどんな人に適しているのか確認しておこう。
「マットレスの種類は大きく分けて、硬めの『ウレタンフォーム』(以下、ウレタン)と、柔らかめの『ジェル』『ウォーター』『エアー』タイプがあります。
さらに、ウレタンとエアーを組み合わせたものや、ウレタン素材でも『硬め』『柔らめ』の両面、リバーシブルで使えるタイプもあり、多種多様な選択肢があります」
寝返りをうちやすいのは「硬めのウレタン」
ある程度体が動く人や、寝返りの打ちやすさ、動きやすさを重視するなら、ウレタンなど硬めの素材が適しています。マットレスは硬めの方が体を支えやすく、動きやすいのですが、寝ている時間が長くなると圧迫感や皮膚に痛みを感じることもあります。
また、ベッドの横や端に座ることが多い人には、『腰があたる中央部分は柔らかめ、淵の部分は硬め』といった、異なる硬さを組み合わせたタイプを選ぶと、座り姿勢が安定します。
肌にやさしいのは「柔らかいマット」
「痩せていて骨の出っ張りがある、肌が弱い、体が痛むというかたには、ジェルやウォーター、エアータイプなど柔らかめのマットレスが向いています。しかし、人によっては柔らか過ぎて動きにくいと感じる場合もあります。
このように、マットレスはタイプや素材によって、メリット・デメリットがありますので、マットレスの特性を知り、利用者の体の状態に合うものを選ぶ必要があります」
このほか、防水・撥水加工などが施されているものもある。
「防水・撥水加工されているタイプは、便利な反面ムレやすいというデメリットもあります。通気性がいいマットレスならムレにくいのですが、水分を吸収しやすいので乾きにくいというデメリットも。不安がある場合には、防水カバーがつきのタイプを選んだり、介護用の防水シーツを併用したり、使うときの工夫も必要になります。汚れが酷い場合は、介護保険でレンタルしているなら交換することもできます」
マットレスのタイプと利用シーンの目安《まとめ》
・硬め/ウレタンフォーム、ウレタン+ポリエステルタイプ…自力で寝返りを打てる、端坐位まで姿勢を変えられるなど、ある程度、動ける人向き。
・柔らかめ/ジェル、ウォーター、エアータイプ…寝たきりの人、自分で寝返りをうちにくい人向き。床ずれを防止したい、肌や皮膚に疾患がある人向き。
・素材/排泄の失敗など不安な場合は「防水」カバーつきを選ぶとよい
介護におすすめの最新マットレスと選び方
「介護用のマットレスは、種類が多くそれぞれに特徴があるため、なかなか自分たちだけでは合うものを見つけにくいと思います。適当に決めてしまうと、ミスマッチとなり、ご本人の体の機能を損ねてしまう恐れもあります。
完全に寝たきりの人、寝たきりでも寝返りはできる人、半身麻痺の人、床ずれがある人、ベッド上でリハビリを受ける人など、それぞれの状態を知った上で、合うものを使う必要があります。合わないマットレスを使っていると、介助もしにくくなってしまいます。ぜひ福祉用具の専門家に相談し、適切なマットレスを見つけて欲しいと思います」
以上のポイントをふまえ、山上さんが注目する最新のマットレスを教えてもらった。
洗える介護用マットレス
『ツインウェーブ TW-80』(フランスベッド)
新幹線の座席にも採用されているクッション材・三次元網状繊維構造体『ブレスエアー(R)』を使用した介護用マットレス。マットレス端部のブレスエアー(R)の繊維を高密度にすることで、立ち上がりやすい設計になっている。水洗いもでき、乾燥性にも優れているので扱いやすい。
「端が硬めに設計されているので、ベッドの端に腰掛けても安心です。安定感もあるので、体を動かせるかたにはおすすめです」
【データ】
メーカー:フランスベッド
商品名:『ツインウェーブ TW–80』
希望小売価格:10万1200円(レギュラーサイズ)
介護保険:適用
レンタル:可
レンタル価格:およそ2200円/月
介護保険利用時のレンタル価格(1割負担の場合):およそ220円/月
https://medical.francebed.co.jp/
寝返りと立ち上がりをサポートするマットレス
『αPLA すくっとActive』(タイカ)
理学療法士と作業療法士が考えたリバーシブルマットレス。動きやすさに加え、ベッドサイドに座った体勢(端座位)からの立ち上がり動作を補助してくれる機能をプラス。用途によって使い分けられるSoft面とHard面のリバーシブル仕様、防水カバータイプなども選べるのもポイントだ。
「今までは硬さ=寝心地ととらえられていたかたが多かったのですが、こちらは、動きやすさを保つ硬さを重視して設計されているのがポイント。サイドが硬く、端座位も取りやすくなっています」
【データ】
商品名:『αPLA すくっとActive(アルファプラ すくっとアクティブ)』通気カバータイプ
希望小売価格:7万8100円(カバーのみ:2万7500円)
商品名:『αPLA すくっとActive』全面防水フィルムカバータイプ
希望小売価格:8万1400円(カバーのみ:3万3000円)
メーカー:タイカ
介護保険:適用
レンタル:可(価格は各事業所にお問合せください)
https://taica.co.jp/pla/product/sukutto_active/
「介護が必要な人にとってマットレスは生活の質を左右する重要なアイテムです。ぜひ介護用ベッドと合わせて、体にフィットするものを慎重に選んでいただきたいと思います」
取材・文 本上夕貴
