「73歳、再婚したいのに娘・息子に反対されている」嘆く男性に毒蝮三太夫は「迷うことはない、結婚しちゃえ」|「マムちゃんの毒入り相談室」第79回
10年前に妻と死別した73歳の男性。夫に先立たれた女性と親密になり、思い切ってプロポーズしたら「私でよかったら」とOKしてくれた。しかし、子どもたちは大反対している。自身も父親が70歳を超えてから新しい女性と暮らした経験を持つマムシさんは「俺は大賛成だ! 親子の縁を切ってもいいから結婚しろ!」と力強く背中を押す。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「好きになった人と結婚したいが子どもたちが大反対する」
2025年も、残りわずかだ。今年はどんな年だったかな。新しい年もまた、楽しいこともあれば悲しいこともあるに違いない。でも、それが人生ってもんだ。オレも来年はいよいよ90歳だ。こうなってくると、楽しみで仕方ない。90歳にしか見られない風景が、きっと広がってるんじゃないかな。ますます元気に暴れまくるので、引き続き応援してくれ!
今年の締めは、二度目の結婚を子どもたちに反対されている73歳の男性からの相談だ。
「妻と死別して10年。今も妻のことは大切に思っていますが、独り暮らしの寂しさが身に染みます。そんな日々の中で、同じく夫に先立たれた5歳年下の女性と、1年ほど前から親密な関係になりました。
彼女は子どもはいません。残り少ない人生、この人と一緒に生きていきたいと思ってプロポーズしたら、嬉しいことに「私でよかったら」と言ってくれたんです。ところが、息子と娘に報告して『今度紹介したい』と言ったら、『いい歳して、バカなこと言ってんじゃないよ』『みっともないことしないで』と大反対されました。『財産目当てじゃないの』と彼女を侮辱するようなことまで言ってきます。
はばかりながら、目当てにされるほどの財産はありません。それを言うなら、彼女のほうがご主人に多くのものを残してもらっているようです(もちろんそんな話をしたことはありませんけど)。『断じて財産目当てなんかじゃない』と言っても、息子と娘は頭ごなしに反対するばかりです。どう説得すればいいでしょうか。わかってもらえないなら、勝手に籍を入れてしまおうかとも思っています」
回答:「親子の縁を切ったっていい。自分が一番幸せになれる道を進んでくれ」
おとっつぁん、やるなあ。オレは心から応援するよ。73歳なんて、まだまだ若い。青春真っ只中だ。結婚したいと思えるぐらい好きな人ができて、相手も自分を好いてくれているんだから、こんなめでたいことはない。迷うことなんてないよ。結婚しちゃえ!
子どもの反対を気にしているみたいだけど、わかってもらえないなら、親子の縁を切ったっていい。少なくとも、そのぐらいの気概と覚悟は必要だ。亡くなった奥さんだって、あなたが幸せになることを願っていると思うよ。新しい恋人ができるぐらいだから、きっと魅力的な人なんだろう。胸を張って新しいパートナーと人生を謳歌しようじゃないか。
子どもたちは40代か30代かわからないけど、高齢者の気持ちがわかってないね。人はいくつになっても恋をするし、好きな人と一緒に幸せになりたいって気持ちはなくならない。「いい歳をして」という言葉は、こと恋愛に関しては当てはまらないんだ。
「みっともない」っていう世間体を気にした言い草も、年寄りが言うんじゃなくて若い子どもたちが言っているっていうのが、ちゃんちゃらおかしいね。子どもたちのほうが、よっぽど考えが古いよ。そもそも世間なんて、自分が思うほどこっちを気にしちゃいない。世間に遠慮したところで、世間はホメてくれないし、不都合が起きたって助けてはくれない。自分がやりたいように、自分がいちばん幸せになれる道を進んでいくのが大事だ。
オレのオヤジも70歳を超えて、おふくろの三回忌が終わってしばらく経ったあとに、新しい恋人ができて一緒に暮らし始めた。ある日、電話してきて「中延の家な、こいつは売ったぞ」なんて言ってる。オヤジのもんだから、どうしようがべつにかまわない。いちおう理由を聞いたら、彼女と一緒に暮らすからその資金にするっていうじゃないか。
たまげたけど、オヤジが幸せになれるんだったらありがたい話だ。実際、病気で入院するまでの3年ぐらいは、オヤジよりちょっと年下の美人の彼女と楽しく暮らしていた。オレも正月に訪ねて行って、遊びに来ていた彼女の孫にお年玉をあげたこともあったな。オヤジが死んだときには、その女性に感謝の気持ちを込めて残っていたお金を全部渡した。
ふたりは籍は入れてなかったし、オヤジがそうしろって言ったわけじゃないんだけど、オレがもらうわけにはいかない。そんなことしたら、オヤジに「おめェ、チャンと稼いで食えているのに、そんなに金を欲しがるのか?」って笑われそうだからね。
悪い悪い、話がそれた。失礼ながらけっして多くない財産だとしても、息子や娘は「少しでも減ったら困る」と思っているのかもしれない。自分で稼いだんだから、自分が使っちまえばいいんだよ。アテにする子どものほうが間違ってる。
もしかしたら子どもたちは、新しい彼女と結婚したいと言い出した父親が、死んだ母親のことをすっかり忘れているように見えて反発しているのかもしれない。きちんと「お母さんのことは今でも大事に思っている」と伝えて、子どもたちの複雑な気持ちにも理解を示してみよう。
ふたりは本気なんだと子どもたちを説得して理解してもらうこと。それをわかってもらって、子どもたちと和解すること。それが大切だ。親子の縁を切るのは、なにをどう言ってもわかってもらえないとなってからでも遅くはない。来年は、おとっつぁんと彼女との幸せな新生活が始まることを祈ってるよ。
読者のみなさんも、今年一年、たいへんお世話になりました。よいお年を!
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『金曜ワイドラジオTOKYO 「えんがわ」』内で毎月最終金曜日の16時から放送中。89歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた最新刊『70歳からの人生相談』(文春新書)が、幅広い世代に大きな反響を呼んでいる。
YouTubeの「マムちゃんねる【公式】」も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。
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石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」「失礼な一言」など著書多数。新著『昭和人間のトリセツ』(日経プレミアシリーズ)と『大人のための“名言ケア”』(創元社)が好評発売中。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。