兄がボケました~認知症と介護と老後と「第56回 わたくし的重大ニュース」
認知症を患う兄と一緒に暮らし、生活全体のサポートを長年続けてきたライターのツガエマナミコさん。今は、特別養護老人ホームに入所中の兄を定期的に面会に通いながら、自分のペースで生活する日々となりました。マナミコさんが今年一年を振り返ります。
* * *
2025年を振り返って
今年はお米の価格が高く、ツガエの家計も圧迫されました。「古古古米」が登場したものの、一人暮らし向きの2キロ売りはどこにもなくて、ついに古古古米をいただくことなく新米の季節を迎えてしまった次第でございます。
そんな令和のコメ騒動の最中、6年振りに「新米の会」に参加いたしました。
佐渡のコメ農家さまのところへ毎年田植えの手伝いに行っている知人が年に1回開いてくれる会でして、コロナ禍で中断しておりましたが、今年はめでたく開催の運びとなりました。
2000円の会費と各自好きな“ご飯のお供”を持ち寄って、昼から夕方まで好き勝手に食べて飲んで歓談するという手作りホームパーティーでございます。参加者は約30人。もちろん遠慮していたら何も口に入らない弱肉強食パーティーでございます。
わたくしは例によって最近本気で取り組んでいるお着物で参戦いたしました。わちゃわちゃした会場ではいつどこでお着物が汚れるかわかりませんから、強食者のふるまいはできませんでしたが、したたかな弱者として、いただくものはちゃんといただいて参りました。
メインディッシュは、赤いダイヤとも呼ばれるイクラ! 今年は鮭も不足していて高値を付けているイクラを、炊き立ての新米に好きなだけ乗せて頬張る幸せを味わって参りました。そのほか煮物や揚げ物、サラダからビン詰、缶詰のご飯のお供を堪能して帰って参りました。
お着物だったことで食べすぎは回避できましたが、準備やお片付けのお手伝いが何もできなかったことが唯一の後悔。次回は作業着で身を粉にして働くことをお約束して参りました。
さて、いよいよ2025年もおしまいです。
たった一人で迎えたお正月からはじまって、師走までのこの1年間は平穏そのもの。それまでの介護生活とは180度違い、心穏やかでまるで何事もなかったような印象でございます。
そんなわたくしの個人的な重大ニュース2025を挙げるなら、第1位は、なんといってもインプラントの手術をしたことでございましょう。上あごの骨に金属が入る怖さや痛み、そして1本42万9000円という数字のインパクトも含めて、滅多にない大きな出来事でございました。おかげさまでその後、痛みも不具合もなく、美味しくご飯をいただいております。
第2位を挙げるならプールデビューでしょうか。週1回、1時間の平泳ぎを7月から継続中でございます。初回、1時間のうちに3回プールサイドに上がって休憩していたわたくしも、最近は一度もプールから上がることなく、みっちり1時間泳いでおります。今や生活になくてはならない運動習慣となり、年末年始に3週間お休みとなってしまうのが残念でなりません。我ながらこんなにハマるとは思わなかったので「あれこれやってみるものだな」と挑戦の大切さを学びました。
「やってみるもんだ」といえば、最近「銀座結び」に初挑戦いたしました。お着物の帯の結び方でございます。わたくしはスタンダードな「おたいこ結び」しか知らなかったのですが、着付け系動画を数多く拝見する中で、小洒落た銀座結びを知り、先日の「新米の会」で銀座結びデビューいたしました。今年は10月に3回、11月にも3回と例年にないペースでお着物でのお出かけにいそしんでおり、上達の一途をたどっております。
振り返ると、昨年は、兄がてんかんで倒れて救急車で運ばれたり、特別養護老人ホームに入居したり、近所で血だらけで倒れている人を目撃してしまうなど、かなり激動の年でございましたが、今年は誰にも何にも振り回されず、自分中心の幸せな1年だったことを改めて感じます。唯一のバッドニュースは、兄がコロナ陽性になったことぐらい。それもあっという間に治ってくれました。来年もこんな平穏な一年になってほしいと願うのは欲張りでございましょうか。どうか、災害や争いがなくなりますように。
今年もお忙しい中、お読みくださり、ありがとうございました。
メリークリスマス、そして、よいお年をお迎えくださいませ。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
イラスト/なとみみわ
