日本人が摂るべきサプリメントが国際共同研究で判明。「ビタミンD」はがんの死亡率低下「ビタミンA」「葉酸」「ビタミンE」はがんリスク増
「毎日きちんとご飯を食べているから大丈夫」と思っていても、なんらかの栄養素が不足していることも。健康のために食事で足りない栄養素をサプリメントで補給している人も多いが、健康を保つ目的で飲んでいるのに、ある栄養素の摂取は病気のリスクを高めることにつながるという。サプリメントの最新事情を医師に聞いた。
教えてくれた人
南雲吉則さん/医師・ナグモクリニック総院長
気をつけたいサプリの摂り方
現代人にとって栄養補給の強い味方となっているサプリメントだが、ここにも注意点がある。
ナグモクリニック総院長の南雲吉則医師が語る。
「気をつけたいのがサプリによるビタミンの摂取です。摂りすぎが原因の『過剰症』があり、かえって健康を害してがん罹患率や死亡率を高めるという報告があるのです」
南雲医師がとくに気をつけたいサプリとして挙げるのがマルチビタミンだ。
「例えばビタミンAは目の健康を保つ働きがありますが、過剰摂取すると食欲不振や嘔吐、悪心などの症状を引き起す。長期にわたるサプリの服用によって肺がんの発症率を26%、がん全体の死亡率も16%増やすというデータもあります。
ビタミンB群はエネルギー代謝を助けて疲労回復効果があるとされ、なかでもB12(葉酸)は貧血予防や神経機能の維持に役立つとして人気ですが、虚血性心疾患を減らすというデータがある一方で、長期服用でがんの罹患率が19%、がんの死亡率が38%増えたことが報告されています。“若返り”のビタミンと呼ばれるビタミンEもがんによる全死亡率が増加することがわかっています」
サプリで栄養を摂るなら「ビタミンD」
南雲医師によれば、サプリでの摂取が推奨されるビタミンは「D」だけだという。
「ビタミンDは体内に慢性的に足りていない状態で、日本人の98%がビタミンD不足というデータもある。2012年には学術誌『ネイチャー』に、ビタミンD不足によって全身の臓器や骨、脳などで機能不全が起きているという論文が掲載されました。ビタミンDが不足しているとすべてのがんの死亡率が1.7倍になり、充足していればがんの罹患部位によっては35~42%も死亡率が減ることがわかったのです」
2022年に東京慈恵会医科大学が世界5か国と行なった国際共同研究では、サプリによるビタミンDの摂取でがんの死亡率が全体で12%、70歳以上では17%も減少したことが報告された。
「この研究は10万人のがん患者を無作為に選別してビタミンDのサプリを毎日服用してもらう『ランダム化比較試験』によるもので、信頼性が高い。欧米ではビタミンDは保険で処方され、食品の成分表示にもビタミンDの記載が義務づけられている。日本人も意識してビタミンDを摂るべきだと思います」(南雲医師)
新たな知見にもとづいて、食にまつわる生活習慣を見直すべき時が来ている。
※週刊ポスト2025年10月3日号
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