医療従事者200人の本音|のんでる&絶対のまないサプリメントランキング
不規則で体力勝負、しかも体の不調をかかえる人と対峙する医療従事者たちはなぜ、毎日元気に働くことができているのか? そのカギは、こっそりのんでいるサプリメントにある。どんなサプリメントをどう摂れば、また避ければ健康を維持できるのか。匿名だからこそ言える、リアルな本音を徹底調査。
2人に1人が2種類以上のサプリメントを服用している
人生100年時代を迎え、世の中は未曽有の健康ブームだ。実際に、健康食品やフィットネスなどのサービスを提供する「セルフヘルスケア」の市場はここ数年で大きく拡大。現在は約5兆7000億円市場といわれ、全国の百貨店の売り上げ総額に届く勢いだという。
なかでもコンビニエンスストアや通販で手軽に購入できるサプリメントを利用する人は特に多く、内閣府の調査によれば「2人に1人が2種類以上のサプリメントを服用している」計算になるという。だが、自分の選択に半信半疑の人も少なくないようだ。
「薬と違って、はっきりとした治療目的がないから、いつもなんとなく目についたものを買ってしまいます。だから、本当に効果が出ているのか、よくわからない。かといって、薬を処方してくれる医師や薬剤師に相談もしづらいし…」(40代主婦)
確かに、薬の専門家である医療従事者たちに、処方箋を片手にサプリメントについて相談をするのは、少々気が引ける。そもそも彼らはサプリメントをのんだりするのか。都内の大学病院に勤務する内科医がこっそり明かす。
「普段の診察では時間もないし、患者さんには薬をすすめなければいけない手前、サプリメントの話を積極的にすることはありません。でも実際は、決まった栄養素を手軽に摂取できるわけですから、定期的にのんでいますよ。ずいぶん助けられています。同僚にも同じようにのんでいると話す人は少なくありません」
そこで本誌は医師65人、看護師67人、薬剤師68人の計200人に、実際に「のんでいるサプリメント」「のみたくないサプリメント」を徹底調査。医療の知識に基づいているからこその選び方を、参考にしてほしい。
医療従事者が最も多くのんでいるのは「マルチビタミン」
医療従事者たちが最も多く「のんでいる」と回答したのは、複数のビタミンが一度に摂取できる「マルチビタミン」。続いて「ビタミンC」が2位、「ビタミンB群」が6位と、ビタミン類が上位に並ぶ。 稲毛病院ビタミン外来の医師で、昭和大学医学部統合医学科講師として医学生に10年以上サプリメントの講義も行っている佐藤務さんが解説する。
「確かにビタミン類はサプリメントで補完した方がいい。生きるための三大栄養素である糖質、脂肪、たんぱく質はビタミンがなければエネルギーや細胞などに変換ができません。ところがビタミンは光や水や熱に弱いため、調理の過程までに失われやすく、食事だけでは充分に摂取できていない可能性が高いのです」
きちんと食事で栄養を摂っているはずなのに、なんとなくだるいし、お肌も疲れ気味…という人は、ビタミン不足が一因かもしれない。
「ビタミンは13種類もありますが、どれひとつとして代わりがききません。たとえば、ビタミンB1の不足はB1を口から補うしかないのです。だから不足しがちのビタミンやミネラルは、一つひとつサプリメントで補完した方がいい」(佐藤さん)
マルチビタミン、ビタミンCに続いて3位に食い込んだのは「ルテイン」だ。天然色素であるカロテノイドの一種で、食べ物ではほうれん草などに含まれている。眼病予防や疲れ目に効くといわれているが、実際に「加齢黄斑変性症や白内障予防効果が期待できる」(眼科医)、「老眼に有効」(小児科医)と、太鼓判を押す人が多かった。
なかには、「パソコンでの操作や顕微鏡下手術が多いが、服用し始めてからピントの調整がうまくいくようになった」(脳神経外科医)と、具体的な効果を体感したという回答もある。一方で“目にいい”印象が強い「ブルーベリー」はずっと下の16位だった。
「眼科医の間でも目のかすみの改善や老眼予防に効くとの評判です。確かにブルーベリーも目にいいですが、ルテインの方がはるかに効果的です」(眼科医)
青魚の脂分に含まれる「EPA・DHA」も上位にランクイン。どちらもオメガ3に属する脂肪酸で、血液をサラサラにして動脈硬化を防ぐほか、中性脂肪を下げる作用があることもわかっている。脳にも大きな効果があるとされ、DHAは脳の神経細胞を活発化し、EPAは脳の血流を増加させる作用が注目されている。
「肉が中心で、魚をあまり食べない人は、動脈硬化やアレルギーを防ぐためにも、サプリメントでEPA・DHAを補う方がいい。逆に、肉が苦手で魚ばかり食べているという人は、アラキドン酸入りのサプリメントを。アラキドン酸が欠乏し、DHAを過剰摂取するとうつ傾向になる可能性があります」(佐藤さん)
サプリメントは、自分の普段の食事のバランスを考慮して、上手に活用するのが鉄則のようだ。
のみたくないサプリは「グルコサミン」「コンドロイチン」「コラーゲン」
一方、医療従事者たちが「のみたくない」というサプリメントには、ひざや股関節の痛みを改善するとされる「グルコサミン」や「コンドロイチン」、美肌のためのサプリメントとして名高い「コラーゲン」など、一般には人気の高いサプリメントの名が挙がった。佐藤さんはこう話す。
「いずれも、サプリメントとしてのんでも患部にはピンポイントで届かない、というのが理由でしょう。例えばグルコサミンをのむ人は、その成分をひざの軟骨に浸透させたい。しかし、医療行為として注射によって注入するならば別ですが、口から摂取するサプリメントでは難しい。体に悪影響があるわけではないが、それほど効果を実感できない可能性も高い。そもそもサプリメントに“薬としての効能のエビデンス”を求めるのは無理なのです」
美肌やアンチエイジングに効くとされる「プラセンタ」や、男性の精力アップだけでなく女性ホルモンの改善にも役立つといわれている「マカ」も、「のみたくない」の上位にランクイン。
プラセンタは哺乳類の胎盤から抽出したエキスで、細胞を活性化させる成分が豊富に含まれている。一方のマカは、アブラナ科の植物で、インカ帝国の時代から滋養強壮に活用されてきた。どちらとも人気の高いサプリメントだが、医療従事者たちの評価は「効果があるのか怪しく、危険」(内科医)など厳しい意見が多い。その理由は“原料”にある。
「サプリメントは、100円で買えるものから数千円するものまで、値段の幅が広く、安いものには粗悪品が多い。特に動物の胎盤が原料のプラセンタは、どの国のなんの動物か明記されていないものも多い」(内科医)
マカも同様で、2008年に愛知県の食品販売業者が販売したマカの原料が放射線照射されていたと判明し、回収命令が出されたこともあった。
「のんでいる」で上位に入ったビタミンが、「のみたくない」で4位に入ったのも、同じ理由だ。
「ビタミンのサプリメントも、ホールフードと呼ばれる天然の成分から抽出されたものもあれば、石油の成分から作られているものもある。購入する時にその質を見極めるのは困難ですが、大手の国産メーカーで、お客様サービスなどの配慮のある製品であれば害のあるものは少ないと考えられる」(佐藤さん)
また、やみくもにサプリメントをのむのは、場合によっては逆効果になる。
「たくさんの量をのめばそれだけ効果が出るというものは基本的にありません。サプリメントによっては規定量を摂取しただけでも何らかの副作用が出る場合もあるし、過剰摂取すれば中毒症を起こすことがあるので、最低限規定の用量を守るのが鉄則です。また、薬ではないのでただのむだけでは効果を実感することは困難です。バランスのいい3度の食事に加え、筋トレやウオーキングなどの運動や充分な睡眠など、生活習慣とセットにすることで、はじめてサプリメントの効果が実感できるようになるのです」(佐藤さん)
薬とののみ合わせによっては、危険を伴うこともある。
「例えば、リウマチの薬のMTXは、葉酸を摂ると中和されてしまう。恒常的に服用している薬がある人はサプリメントをのみ始める前に、担当医に相談してください」(佐藤さん)
ほかにも、糖尿病治療とDHA、抗がん剤とビタミンCののみ合わせも、効果を打ち消し合い、薬の効きを弱めてしまう可能性がある。
その一粒が、そののみ方が、10年後を変えるかもしれない。
最後に、医療従事者200人が明かす「のんでいるサプリメントランキング」と「のみたくないサプリメントランキング」を紹介しよう。
※ランキングは医療従事者200人へのアンケートをもとに編集部で作成。「のんでいるサプリメント」部門は「のんでいるサプリメント」を推奨度順に3つ回答してもらい、最も推奨するものから3点、2点、1点をつけて計上。「のみたくないサプリメント」部門は、「のみたくない・すすめたくないサプリメント」もそう感じる順番に3つ回答してもらい、すすめたくないものから3点、2点、1点をつけて計上した。
のんでいるサプリメントランキング
【順位】/名前/得点数/コメント
【1】マルチビタミン/80点
「1種類で重要なビタミンがほぼすべて補給できる」(医師/小児科)、「水溶性のビタミンは副作用が少なく、安心して服用できるから」(医師/基礎研究)、「どんな体調の時でも摂取できる」(薬剤師)
【2】ビタミンC/69点
「肌の健康のためにのんでおり、ニキビができづらくなった」(医師/眼科)、「シミ予防として服用しているが肌色が明るくなった」(薬剤師)、「肌のターンオーバーを整えるために毎日飲んでいるが、始めてから肌の調子がいい」(医師/皮膚科)
【3】ルテイン/47点
「加齢黄斑変性症や白内障予防効果が期待できる」(医師/眼科)、「老眼に有効。加齢黄斑変性症予防にもなるから、毎日摂取している」(医師/小児科)、「パソコンでの作業や顕微鏡下手術が多いが、服用し始めでからピントの調整がうまくいくようになった」(医師/脳神経外科)
【4】EPA・DHA/46点
「高脂血症、心血管系疾患の予防ができる」(医師/リハビリテーション科)、「脳の血流がよくなり記憶力の改善や認知症予防につながる」(薬剤師)、「脂肪代謝異常を予防してくれるため、ステーキなど脂の多い食事のあとに摂るようにしている」(医師/外科)
【5】コラーゲン/35点
「摂り続けることで肌の調子が整う」(薬剤師)、「冬は乾燥対策にもなる」(看護師/介護関係)
【6】ビタミンB群/33点
「ビタミンB群はほかのビタミン類よりも食事から摂るのが難しく不足しがちだから」(薬剤師)、「肉体疲労に効果的。激務の朝にのんでいる」(看護師/人工透析担当)
【7】セサミン/31点
「脂質を摂りすぎた時に相殺してくれる」(医師/内科)、「定期的にのむことで疲労感が軽減される」(医師/精神科)
【8】カルシウム/23点
「骨密度を保ちたいので、40才を超えてからは定期的にのんでいる」(医師/精神科)、「食事からだと吸収されづらいためサプリメントで補う」(薬剤師)
【8】鉄分/23点
「女性は鉄分が不足しやすいうえ、食事で摂るのは難しい」(薬剤師)、「貧血症状が改善して体調がよくなった」(薬剤師)
【8】葉酸/23点
「DNAや細胞の成長を促進してくれるため、妊活中から服用している」(薬剤師)、「妊娠していなくても、赤血球の生成を促すため動脈硬化を予防してくれる」(医師/内科)
【11】乳酸菌/19点
「アレルギー予防と便秘によい」(薬剤師)、「腸内環境の改善のため」(医師/精神科)
【12】エクオール/18点
「飲み始めてから、ホットフラッシュの症状が治まった」(薬剤師)、「治療薬が気軽に買えない女性の更年期障害に効果があるから」(看護師/腎臓内科)
【12】コエンザイムQ10/18点
「細胞の活性化に特化しているため、アンチエイジング効果とともに疲労回復が見込める」(薬剤師)、「多くの患者がのんでいるが副作用の報告がないから」(薬剤師)
【12】亜鉛/18点
「日頃の食事だけで摂取しづらいから」(医師/内科)、「3か月のみ続けて寝起きがよくなった」(看護師/精神科)
【15】マルチアミノ酸/15点
「アミノ酸は体内では生成できず、外部から摂取する必要があるから」(医師/内科医)、「定期的に服用したうえで、運動を取り入れると体質が改善する」(薬剤師)
【16】ブルーベリー/14点
「眼精疲労の回復に効果が期待できる」(薬剤師)
【17】ギムネマ酸/12点
「血糖値の上昇を抑えてくれるため、糖分や油分の多い食事の時にのむとよい」(看護師/介護)
【17】グルコサミン/12点
「筋肉痛や疲労の予防になる」(医師/小児科)
【17】ビタミンE/12点
「アンチエイジング効果が見込めるが、ビタミンCなどほかのビタミンに比べて食事から摂りづらいため」(看護師/産婦人科)
【20】プラセンタ/11点
「肌の調子が整う。なるべく国産のものを選びたい」(薬剤師)
【21】イソフラボン/9点
「女性ホルモンと似た働きがあるため、女性は積極的に摂るべし。更年期障害が始まる50代から摂り始めたが症状が比較的少ないように思える」(薬剤師)
【21】サラシノール/9点
「血糖値の上昇が緩やかになるうえ、お通じも改善する。ダイエット系のサプリメントの中では最も副作用が少なく体に優しいと思う」(医師/内科)
【21】食物繊維/9点
「糖の吸収を穏やかにしてくれる。食べ物から摂ると準備や調理が大変」(医師/泌尿器科)
【24】マカ/8点
「男性機能が維持できるだけでなく、更年期対策にも」(医師/麻酔科)
【24】マルチミネラル/8点
「バランスよくミネラルが補給できる」(薬剤師)
【24】ローヤルゼリー/8点
「心血管系の疾患予防に役立つから」(医師/精神科)
【27】黒酢/7点
「クエン酸とアミノ酸を両方含むため、死亡燃焼効果に加え疲労回復効果も」(医師/泌尿器科)
【28】3-ヒドロキシイソ吉草酸/6点
「体に筋肉がつきやすくなる」(医師/病理)
【28】L-システイン/6点
「メラニン色素を抑制する効果があるため、シミやソバカスができにくくなる」(薬剤師)
【28】アスタキサンチン/6点
「抗酸化作用によって疲れにくくなるうえ、肌の調子も整う。鮭などにも含まれているがサプリメントの方が効率がいい」(薬剤師)
【28】クロレラ/6点
「野菜不足を補うことができる」(薬剤師)
【28】オルニチン/6点
「肝機能が回復し、疲労が和らぐ。冬は毎日飲んでいるが、かぜをひいたことがない」(医師/内科)
【28】青汁/6点
「野菜不足が手軽に補える」(医師/整形外科)
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のみたくないサプリメントランキング
【順位】/名前/得点数/コメント
【1】グルコサミン/47点
「摂取したとしても、消化されて排出され、体に吸収されないから」(医師/内科)、「髪の毛の薄い人が育毛のために髪の毛をそのまま食べるようなもので、効果が感じられない」(医師/病理)、「口から入った成分がひざだけに浸透するとは考えにくい」(医師/整形外科)。
【2】コラーゲン/37点
「最終的にはアミノ酸に分解され、体に吸収されず消化されてしまうから」(看護師/精神科)、「肌など効いてほしいところにピンポイントには吸収されない」(薬剤師)、「アレルギーなど副作用も多数報告されているから」(医師/精神科)。
【3】コンドロイチン/21点
「実際に飲んでいたが、効果が感じられなかった」(看護師)、「整形外科学会でひざ痛の治療にあたる医師たちの間でも効果に関して意見が割れているため」(医師/整形外科)、「患者にのんでいる人が多いが、誰も症状がよくなっていない」(医師/リハビリテーション科)。
【4】ビタミン類全般/18点
「ビタミン類はできる限り食事から摂った方が体にいい」(薬剤師)、「安価なものは石油から精製しているため、体に害がある」(医師/小児科)、「種類が多すぎて、すべてを継続して飲むのは不可能」(薬剤師)。
【5】プラセンタ/15点
「馬の胎盤などが原料であり、人間由来の成分ではないので、摂取に抵抗がある」(看護師/精神科)、「高価ではあるものの、のんでも効果を感じづらかった」(医師/麻酔科)、「原材料がきちんと明記されていないものも多く、危険だと感じる」(医師/内科)。
【6】カルシウム/9点
「必要以上の摂取で心疾患系の病気の発症リスクが上がるという研究がある」(医師/内科)、「骨に吸収されづらい。骨粗しょう症リスクを下げたいなら、日光を浴びて運動した方がいい」(薬剤師)。
【6】鉄分/9点
「鉄が欠乏していなければ、過剰摂取になってしまい、胃腸障害などを引き起こす可能性がある」(医師/精神科)、「安価なものだとにおいが強く、効果も感じられない。食品から摂った方がいい」(薬剤師)。
【8】ヒアルロン酸/8点
「効いてほしい場所に届かない。本当に効果が欲しいなら、注射で注入すべき」(薬剤師)
【9】ビタミンC/6点
「果物や野菜から摂取した方がほかの栄養素もバランスよく摂れる」(看護師/産科・婦人科)
【9】マカ/6点
「粗悪品が非常に多く、効かないばかりか副作用を引き起こすような成分が混じっていることも」(看護師/耳鼻科)
【9】青汁/6点
「のみづらい味ゆえに普段の食事の中で野菜を摂ればいいと考えている」(医師/精神科)
【9】漢方薬全般/6点
「漢方はれっきとした“薬”の一種。副作用が強いものも多いため、摂取には慎重になってほしい」(医師/泌尿器科)
【9】ノコギリヤシ/6点
「前立腺肥大など泌尿器系の病気に効果があるとされるが、病院で治療した方が安全で回復も早い」(医師/泌尿器科)
【9】にんにく/6点
「一時的に元気になるのが、根本的な体質改善にはならないうえ、体臭が気になる」(医師/外科)
【15】亜鉛/5点
「摂取する必要を感じないし、過剰摂取にも注意が必要だから」(医師/整形外科)
【16】フォルスコリ/4点
「ダイエットサプリを謳っているが、下剤と同じ効果があるに過ぎない」(医師/脳神経外科)
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サプリメントを購入する際には、以下のコメントもぜひ参考に。
「原材料、製造法などの情報が公開されているものを選び、成分量をチェックしてください。また、服用時は必ず水と一緒に」(医師・精神科)
「通販などで、定期購入すると安くなるものもあるが、途中で解約できるかを必ず確認すること。過度な宣伝にも注意」(薬剤師)
「1つの種類につき、最低でも3か月は試してみることをすすめます」(看護師・高齢者デイサービス)
イラスト/飛鳥幸子
※女性セブン2020年2月20日号