加齢とともに広がる膝・腰の痛みを防ぐ 専門医が教える足腰強化11の習慣「立ったまま靴下を履く」
元気に歩き続けられる体を目指すには、日々の生活習慣を見直すことが大切だ。整形外科医の渡會公治さんに正しい歩き方や筋力アップ、バランス力を強化する運動を解説してもらった。
教えてくれた人
渡會公治さん/帝京科学大学医学教育センター特任教授・整形外科医
膝や腰の痛み 原因は歩き方にあった
年齢とともに現われる膝や腰、股関節などの痛みは歩き方が根本原因となるケースが多いという。
帝京科学大学医学教育センター特任教授で整形外科医の渡會公治医師が語る。
「変形性膝関節症や下肢の痛みは骨や関節の正しい並び方の乱れから生じます。特にO脚やX脚の傾向がある場合は脚の軸がずれたままで、荷重がかかる部分にある軟骨や半月板、靭帯が徐々にダメージを負い、放置すると痛みが下肢から股関節、腰や背中まで広がります」(以下、「 」内は渡會医師)
歩き方が悪いと体がどちらかに傾く原因となり、膝の関節がずれて擦れることで痛みが生じる。それを避けるには正しい歩き方を意識することだ。
「膝や足の真ん中に体重を乗せることを意識して歩きましょう。踵から踏み込んで足の裏を感じながらつま先が地面から離れるイメージで歩くと感覚を掴みやすい」
膝から下だけで歩くのではなく股関節も意識して使うとより良いという。
体や脚のねじれを防ぐため、荷物を両手に分散して持つことも効果的だと渡會医師は言う。
「体を左右対称にするには、荷物の肩掛けはやめてリュックや両手に分散して持つことです。荷物が一つだけの場合は30分ごとに左右で持ち替えれば体の歪みを防げます」
立ったまま靴下を履けない人は筋力低下のサイン
渡會医師によれば、足腰の強さを維持するために重要なのが股関節の柔軟性だという。
「あぐらをかく時は足の裏を合わせると股関節の柔軟性を取り戻すのに効果的。日常生活では足の爪を切る動作も股関節のストレッチになります」
同時に足の筋力アップやバランス力の強化も意識したい。
タオルギャザー運動
「立ったまま靴や靴下を履けなければバランス感覚、筋力が低下しています。意識して脚力アップにつなげましょう。また、床に敷いたタオルの端に足を乗せ、足の指を使って手繰り寄せる『タオルギャザー』は無理なく足裏の筋肉や靭帯を強化でき、足首の柔軟性を高めるのでお勧めです」
全国に約3790万人いるとされる変形性腰椎症は、加齢や生活習慣によって腰椎や椎間板が徐々に変形し、バランスが崩れることで生じる。痛みが出ると腰を動かすことが嫌になって運動量が減り、筋力の低下による腰椎の不安定性が増し、変形がさらに進行する。
足振りワイパー運動
「こうした悪循環に効果的なエクササイズが足振りワイパー運動です」
やり方は、うつ伏せになって膝を軽く曲げて足の裏を天井に向ける。そして両足を車のワイパーのように左右に振る。振り幅を徐々に大きくして1セット往復5回を1日3セット行なうことが目標だ。
「痛みを生じることなく体のつなぎ目になる腰や背中などの関節を強化し、変形性腰椎症の予防や症状改善につながります。もしも痛みが出たら痛くない方向に体全体を大きく動かせば軽減されます」
日頃の腰を労る意識も重要だ。
「重い荷物を持つ時は腰だけで持ち上げるのではなく、膝を曲げて股関節の屈伸を使って持ち上げるようにしましょう。
猫背や反り腰、長時間同じ姿勢を続けるといったことも腰に負担をかけます。背中を意識して動かすと腰の柔軟性につながるので、定期的に伸びをするといい」
真ん中着地、荷物の分散、あぐらの工夫。いつまでも歩ける足腰の習慣11
<習慣1>膝の真ん中に体重を乗せるイメージで歩く
膝の位置を意識し、捻らないように膝の真ん中に体重を落とすイメージで歩く。
<習慣2>荷物は両手やリュックで分散して持つ
体の片側に荷重をかけ続けると体が曲がり重心がずれ、片側の膝への負担が大きくなる。
<習慣3>階段を上る時は「スケート」を意識する
足を「ハ」の字にすると安定して階段を上れ、足腰を鍛えられる。
<習慣4>階段を下る時は「スキー」を意識する
スキーで降りる時の要領で横を向いて一歩ずつ足を下ろして階段を下ると膝への衝撃が減る。
<習慣5>足指でタオルを手繰り寄せる運動を1日3回行なう
素足の状態で足指だけでタオルを掴む「タオルギャザー」運動は足首の柔軟性を高める効果がある。
<習慣6>靴と靴下を片足立ちで履く
下半身の筋力アップと股関節の柔軟性を保つ効果がある。
<習慣7>足の裏を合わせてあぐらをかく
足裏を合わせてあぐらをかき、さらに体を前に倒すと股関節のストレッチになる。
<習慣8>爪を切る
爪を切るために股関節を曲げることで股関節のストレッチになる。
<習慣9>重い荷物は腰を曲げず足を曲げて持ち上げる
物を持ち上げる時は腰を痛めないように、腰を曲げずに足の曲げ伸ばしの力で持ち上げるように意識する。
<習慣10>低反発ではなく“硬め”の布団で寝る
腰の反りを防止するために硬めの布団で寝る。
<習慣11>足振りワイパー運動を行なう
うつ伏せに寝た状態で膝を曲げて足を天井に向けて立て、左右にゆっくり振る。5回1セットを1日3セット行なう。
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号
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