声が低くなったのはのどの老化が原因かも 若々しい声を保つ4つの習慣「毎日10分の朗読」ほか
声の異変はのどの老化のサイン。若々しい声を保つにはのどだけでなく、声をつくるさまざまな器官を鍛える必要がある。その方法を解説する。
教えてくれた人
楠山敏行さん/医学博士・東京ボイスクリニック品川耳鼻いんこう科院長。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。声のかすれや発声時・歌唱時ののどの不快感など、声に関する病気治療に定評あり。
声は多様な器官でつくられている
のどの働きのひとつに、発声がある。
「声はのどにある声帯でつくられていると思われがちですが、違います。声帯でつくられるのは喉頭原音(こうとうげんおん)という声のもとになる音です」
と話すのは、東京ボイスクリニック品川耳鼻いんこう科院長の楠山敏行さんだ。喉頭原音は「ブー」といった音にすぎず、動物も人間も、その音に大差はない。
「声の動力源は、肺からの空気。私たちが耳にする声は、肺からの空気の振動により声帯でつくられた喉頭原音が、声道(のどや口、鼻など)で共鳴することでつくり出されます。個々の声に特徴があるのは声道の長さや太さ、形に個体差があるため。さらに人間は舌や唇などを使って、言語をコントロールしています」(楠山さん・以下同)
肺活量が低下し滑舌や歯切れが悪くなる
ところが、声帯が老化して衰え、しっかり閉じられなくなると、振動が不充分になり、声が低くなったり、ハリがなくなったりする。
「それだけではありません。肺活量は20才前後をピークに、80才では半分まで減少します。吐き出す力が弱くなると、肺自体の弾性も低下するので、声を持続的に出せなくなったり、声が小さくなったりします。さらに60才を過ぎると、口まわりの筋肉や舌、唇の動きが衰えて鈍くなり、滑舌や歯切れが悪くなります」
<のどの老化チェックリスト>1つでも当てはまる人は“声”が老化しているかも!
<1>「あー」と声を出して、ひと息で10秒以上続けられない
<2>声が小さくなった(大きな声を出しづらい)
<3>滑舌が悪く、聞き返されることが多くなった
<4>声がかすれやすい
<5>高い声を出しづらい
<6>人と話す機会が少ない
女性は50才を超えると声質が変わる
特に女性は、50才を超えると声が低くなったと感じる人が増える。
「声が低くなる主な原因は、加齢による声帯の変化。女性の声帯は、1秒間で約200回振動していて、これは男性のほぼ2倍。それほど多く振動させるには、潤滑油が必要です。女性ホルモンのエストロゲンは声帯の血流をよくすることで、声帯の粘液の分泌を促し、粘膜のうるおいや弾力性を保ちます。また声帯の血流がよくなると、声帯がむくんで声が低くなるのを抑えられます。そのため、閉経して女性ホルモンが分泌されなくなると、声帯やのどまわりの機能が維持できず、声質が変わるのです」
声の老化は下記の行動で抑えられる。早速始めよう。
100才まで元気な声を保つための4つの習慣
【1】1日1.5Lの水分を摂る
のどにとって乾燥は天敵だ。「“のどが渇いた”と感じてから水分を摂るのでは遅すぎます。渇く前に水分を摂ることが大切なので、こまめな水分補給を習慣化しましょう。目標は1日1.5Lの水またはお茶を飲むこと。水分を摂ることで、のどをうるおすだけでなく、副交感神経に作用して声帯にうるおいをもたらします」(楠山さん・以下同)。
【2】毎日10分の朗読
「現代は、声帯の使いすぎよりも使わなさすぎの方が問題です。ほかの身体機能と同じで、意識して発声しないと、声帯、口元の筋肉、肺活量の機能はどんどん低下していきます。新聞のコラム、お気に入りの歌など何でもいいので、毎日10分、声に出して読んでみましょう。声を意図的に発することで脳トレにもつながります」
【3】週2~3回、30分~1時間半以内の歌唱
「週2~3回、30分~1時間半以内の歌唱を習慣化している人は、習慣化していない人に比べてのどの衰えが少ないという研究結果があります。ただし、1時間半以上の歌唱はのどへの負担が増すのでNG」。無理に高いキーやこぶしをきかせて歌うと、のどに負担がかかるのでやめること。
【4】一口量は八分目程度に&ながら食いはしない
「食べ物を口に入れる量は、一口で八分目ぐらいが目安。口にたくさん入れなければ、誤嚥のリスクが減ります。“ながら食べ”をしないことも大切。ながら食べは、注意が散漫になり誤嚥のリスクが高まるからです」。しっかり噛んで、食べることに集中して食事をしよう。
漫画・イラスト/藤井昌子 写真/PIXTA
※女性セブン2025年7月17日号
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