熱中症が心配な高齢者におすすめの飲み物「緑茶より麦茶、ゼリー飲料の活用も」介護経験のある社会福祉士が実践する夏の水分補給法
この夏も猛暑が予測され、熱中症には充分な注意が必要だ。高齢者や介護が必要な人は特に気をつけたい。介護経験のある社会福祉士の渋澤和世さんに、手軽に補給できる熱中症対策のための飲料について解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
渋澤和世さん/在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
職場での熱中症対策が義務化へ
2025年の熱中症予防強化月間は4月1日から9月30日。6月1日から職場での熱中症対策が義務化※1もされるほど、熱中症の危険性は社会問題となっています。
特に、高齢者、小さい子供、体調不良のかた、肥満のかた、普段運動をあまりしないかたは熱中症になりやすいと言われ、夜間を含むエアコンの使用やこまめな水分・塩分の補給などが大切となります。
特に注意して欲しいのは屋内にいる高齢者。高齢者は、暑さを感じにくい上に発汗と血液循環が低下し、暑さに対する抵抗力が低下しています。熱中症警戒アラート※2が発表されるほどの暑い日はふだん以上に、昼夜を問わずエアコンを適切に使用して、こまめに水分・塩分の補給をすることが必要となります。
筆者が社会福祉士の実習でお世話になった特別養護老人ホームでの取り組みや介護経験をもとに、熱中症が不安な高齢者におすすめの飲料や水分補給法について、ご紹介していきます。
※1:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」
https://www.mhlw.go.jp/content/001476821.pdf
※2:環境省「熱中症予防情報サイト」
https://www.wbgt.env.go.jp/alert.php
参照:政府広報オンライン「熱中症特別警戒アラートとは?発表時の対策と熱中症予防のポイント」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201206/2.html
熱い夏、高齢者におすすめの飲料は?
水分の補給が大切なのはわかりますが、高齢になると飲み物なら何でもよいわけではありません。高齢者におすすめなのが麦茶と白湯です。その理由を解説します。
【1】麦茶◎
カテキンやカフェインが入っておらず、亜鉛・リン・カルシウムなどのミネラル類、食物繊維やタンパク質、リノール酸なども含まれるのでとてもおすすめです。
【2】白湯◎
消化を助け、体を温める効果があるため効果的な飲み物。白湯は、特に冷えやすい高齢者に適しています。胃腸の負担を軽減しつつ水分を補給することができます。
【3】要注意:緑茶やウーロン茶
緑茶は塩分が少ないため水分補給をしているつもりでも、結果的に電解質が補給されていない場合もあり、熱中症の予防や治療には向いていないといわれます。また緑茶はカリウムを多く含むので、腎機能が落ちている高齢者には控えた方が良い場合もあります。
ウーロン茶は利尿作用があるカフェインを多く含んでいるため、脱水症状を招く可能性があるため、夏の常飲は注意が必要です。
筆者が実母の在宅介護の真っ最中だった頃、この情報を知ってからは家での水分補給は麦茶と白湯が中心となりました。自分自身は今でも、夏は白湯と麦茶を飲むように心がけています。
また、汗をかく夏の水分補給は”スポーツドリンク”と思うかたも多いかもしれませんが、糖分が多く含まれているため、飲みすぎると肥満や高血圧などリスクが上がります。若い頃はともかく高齢になったら飲みすぎは控えたほうが良さそうです。
経口補水液は正しい知識で活用を
経口補水液という言葉を聞いたことはありますか。熱中症対策として情報が世の中に溢れていますので、目にしたり耳にしたりしたかたも多いかもしれません。
経口補水液は熱中症を予防するというのは必ずしも間違ってはいませんが、本来は、下痢・おう吐による脱水症や、脱水を伴う熱中症を改善するために使用する飲料です。風邪やインフルエンザなど急な発熱による発汗や脱水症状にも効果がありますので、夏だけでなく一年中、利用価値はあります。
厚労省発!熱中症予防ドリンク
厚生労働省の資料※では、熱中症予防ドリンクの作り方が紹介されています。レシピは以下の通りです。
※厚生労働省「水分補給と休息」
https://jsite.mhlw.go.jp/niigata-roudoukyoku/content/contents/1kenan-neccyuguide-06-02.pdf
<材料>※厚労省の資料をもとに一部情報を補足しています。
・水(麦茶でも可、一度沸騰させるとよい)…1000ml
・砂糖(甘味料、はちみつでも可)…大さじ4と1/2
・塩…小さじ1/2
・レモン果汁…小さじ1
<作り方>
容器に沸騰させた水(または麦茶)を入れて、砂糖(または甘味料、はちみつ)と塩を加える。レモン果汁を加える。かき混ぜたら、完成。
レシピを見てわかる通り、糖分や塩分をそれなりに含みますので、日常的に飲み続けたり、ゴクゴクと飲んだりするようなものではありません。あくまでも、嘔吐や下痢が続くときや夏場、大量に汗をかいたり、長時間外出したりするときなどに利用するのが好ましいとされています。
飲み込む力に不安がある場合は?
飲み込む力が落ちている高齢者に経口補水液を飲んでいただく場合には、とろみをつけたいところですが、一般的なとろみ剤は、デンプンが含まれているものもあるので成分が変わってしまうことも。
そうした人には市販のゼリータイプのものもあります。まずは医師に相談してから利用するのが安心です。
オーエスワンゼリー/大塚製薬工場
6,480円(200g×30パウチ)※公式通販サイト価格
https://www.otsuka-plus1.com/shop/g/g57620/
アクアソリタ(R)ゼリー/味の素
758円(130g×6個)※Amazon販売価格(2025年7月11日時点)。
https://www.ajinomoto.co.jp/aquasolita/
宮源ドリンクゼリー 麦茶/宮源
5g×50本 3175円
https://miyagen.shop-pro.jp/?pid=183680846
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なお、経口補水液を飲むときは、水で薄めたり凍らせたり、他の飲料と混ぜたりしないようにしましょう。経口補水液は塩分や糖分の濃度が計算されているのでその効果が期待できなくなってしまいます。
熱中症対策の飲料については、高齢者だけでなく全世代に応用できます。麦茶はそのままでも熱中症対策に活用でき、夏は大活躍。水出しもあり手軽に作れ、お茶用のドリンクゼリーのもとを使えばデザートにもなります。7月後半から8月とまだまだ暑い日が続きます。本記事を参考に体調に気を付けてお過ごしください。