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暮らし

「妻への感謝の言葉がマンネリ気味」R60男性の悩みに、92才料理研究家・小林まさるさんが明答「俺は昭和の男だがありがとうは何度でも言う」まさるの人生相談・第10回

 92才の料理研究家・小林まさるさんが、読者のお悩みに真摯に答える人生相談企画。第10回は「家族への感謝の伝え方」について。身近な人だからこそ、照れ臭くて伝えにくい感謝の気持ち…。まさるさんの回答は? 読んですっきり、心は晴々!

答えてくれた人

料理研究家・小林まさるさん

 昭和8年、樺太(現在はサハリン)生まれ。70才から長男の嫁で料理研究家の小林まさみさんのアシスタントを始め、料理研究家として活躍。著書『人生は、棚からぼたもち! 86歳・料理研究家の老後を楽しく味わう30のコツ』(東洋経済新報社)ほか、小林まさみさんの著書『血糖値を下げる1か月献立』(Gakken)では血糖値を下げる企画にチャレンジ。88才でYouTubeを始めるなど、新たな挑戦を続けるシニア世代の星。小林まさる88チャンネル

お悩み「妻に感謝を伝えたいけど、マンネリ化して悩んでいます」

 10年前に脳卒中になってしまい左片麻痺です。日常生活のほとんどは自分でできるのですが、本来なら男がやるべき重い物を運ぶとか、電球を替えるとか、エアコンのフィルターを掃除するとか、すべて嫁さんに頼っています。

 普段から「ありがとう」と言って感謝を伝えているつもりなのですが、10年も身の回りのことをやってもらう度に「ありがとう」と言っていると、ありがたみが薄れるというか、マンネリ化してしまうというか…。どうやってこの感謝を伝えればよいでしょうか?(ペンネームなし・59才/男性)

まさるさんの回答「“ありがとう”は何度だって言うべきだ!」

 ペンネームなしさんの気持ちは分かるぞ。息子とまさみちゃん(息子の嫁で、料理研究家の小林まさみさん)と同居を始めた頃は、いちいち「ありがとうと言うのもなぁ」なんて思っていたんだ。

 俺は昭和一桁生まれの人間だから、なんだかそういうのは照れくさくてな。振り返ってみると、当時は感謝を伝えることを積極的にしていなかった。

 まさみちゃんはいつも仕事で忙しくしていたから、俺は家事をやったときに「外を掃いておいたよ」「ゴミ出しはしておいたから」とか、事務的な報告をしていたんだ。すると、彼女ははいつも「お義父さん、ありがとう!」と言ってくれるんだ。

 初めは「照れくさいなぁ」と思っていたけど、実際にお礼を言われてみると気持ちがいいもんだ。家事でもなんでもまた頑張ろうって思える。「ありがとう」と言われて、嫌な顔をする人はいないよな。

 息子夫婦と暮らすようになって俺も心を入れ替えた。「感謝の気持ちはちゃんと相手に伝えなきゃダメだ」と思って、些細なことでも「ありがとう」と言うようになったんだ。うちの家族は特に「ありがとう」とよく言い合っているかもしれないな。

 考えてみれば、人に何かをしてもらったら「ありがとう」と伝えるのは当たり前だ。だから、「ありがとう」という言葉に関しては、“マンネリ化”なんてことは考えなくていいんじゃないかな。これからも変わらず、奥さんに「ありがとう」と伝えたらいい。

 そしてさらに、1年に1〜2回でいいから、食事でもご馳走するといいかもしれない。ラーメンの一杯だっていいんだ。ちょっとした贈り物だっていい。金額は関係ない。

 ただしその時には、「いつも世話になっているからプレゼントだ!」なんて大それたことは絶対に言うなよ(笑い)。

「(奥さんに)似合うかなと思って、買ってみたんだよ」とか、さりげなく感謝の気持ちを伝えたらいい。日頃の想いを贈り物にすることで、相手はもちろんだけど、自分の気持ちも満足できるんじゃないかな」

まさるさん

まさるさん

日々の“ありがとう”は忘れずに。たまには食事や小さな贈り物でさりげなく感謝を伝えてみよう

まさるさんの嗜好品「20代から大好きなコーヒー」

 撮影や取材の最後に、まさるさんは必ず、挽きたての豆でコーヒーを淹れてくれる。取材陣の間では有名な“まさるコーヒー”。この一杯を密かな楽しみにしているスタッフも多い。

 この日も読者の相談に真摯に向き合った後、まさるさんはいつものように、さりげなくコーヒーを淹れてくれた。

 手に馴染む使い込んだミルはなんと4代目。壊れた部品を自分で修理しながら、大切に使ってきたものだ。

 「俺が初めてコーヒーを飲んだのは20才の頃。北海道の美唄(びばい)にいたんだけど、当時は今みたいにコーヒーを出す喫茶店もなかった。だから、自分で豆を挽いて飲んだんだ。

 ミルもなかったから、すり鉢でコーヒーを挽いて、ガーゼの袋に詰めて、大きな鍋でクタクタ煮出して飲んだんだよ」

 その頃から、豆は必ず自分で挽いているそうだ。数種類の豆を買ってきて、産地を記載した瓶に入れ、その日の気分で豆を選ぶという。

「挽きたての豆の香りは最高だよね。俺は粗挽きにして、表面に残った皮をフッと吹いて飛ばしてからドリップする。こうすると雑味がなく、スッキリした味になる気がするよ。

 俺はアフリカのキリマンジャロやモカとか、ちょっと酸味のあるコーヒーが好きなんだ。最近はメキシコやパナマもうまいよな」

 仕事の終わりにほっと一息、コーヒーを片手に笑顔で話すまさるさん。

 まさるさんが長年愛用する道具で丁寧に淹れてくれたコーヒーは格別だ。 

 「今日もお疲れ様でした。ありがとうな」。挽きたての豆のほろ苦い香り、ほんのり甘いその一杯に、そんな声が聴こえてくるような気がする。

––––次回のお悩み相談もお楽しみに!

撮影/菅井淳子 取材・文/岸綾香

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