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連載

「母、ウオーキング始めました」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第47話

 慢性膵炎を抱える80代の母と山口県で暮らす漫画家で栄養士の資格をもつうえだのぶさん。膵炎は経過観察中だが、入れ歯が折れたり、転んで頬を擦りむいたりと、危なっかしい母の様子に、娘の心中は穏やかではないようで…。転倒をきっかけに、新たに始めたことがあるという。

足を鍛えようと思って…

 皆さんご心配をおかけしました。母の絆創膏、無事外れました(まだちょっと腫れてますが)。

 今回のことがあって色んな人から「骨が折れなくて良かったねー」と言われまくった母、「ちょっと足を鍛えようと思う」とウオーキングを始めました。

 いきなり張り切ると長続きしないのが世の常なので、まずは週3回のゴミ捨ての時、ついでにご近所をぐるっと回って帰ること、週2~3回通っている整骨院の帰りだけ歩く(行きは私がアッシー←古い)の2パターンで習慣づけをすることにしました。さて、続きますかどうか…。

 私も時々ウオーキングをしますが、母とは一緒に歩きません。理由は「歩き方のパターンが真逆だから」

 私はひたすら無心にガンガン一直線に歩きたいタイプ。母は気の向くままプラプラ寄り道しながら歩きたいタイプ。

 たまーに同じ公園に一緒に行きますが、入口で「じゃあ」と別れ私は遊歩道を一周、母は入り口付近をうろうろ…。私が戻ってきた時にまだ同じ辺りにいて、「じゃあ」と一緒に帰る、みたいな感じです。

 それって日常の色んなことにも共通していて、例えば料理の仕方とか、ものの片づけ方とか、私と母はパターンが全然違うんです。それでよくケンカになります。

 たとえば「出かける時」。

 9:30に出発することになっていたとします。私はその時間になったらパッと出て勝手口で鍵をかけようと待っています。

 母はなかなか出てきません。本人曰く「色んなものが目に入ってしまう」んだそうで(冷蔵庫を開けたり押入れに何かをしまったり)、あげく「ちょっとトイレ行ってくるー」と。

 結局出発は9:45。その度に私が「ウキー!」とブチ切れる…という図式になっています。

 母は私を「せっかち」と呼び、私は母を「のどりが悪い(山口弁で“段取りが悪い”の意味)」と呼びます。何であんなにあれこれ目に入っちゃうんでしょう、まったく。

春のわかめ「取っておいで!」

 春先に生わかめを見ると思い出すエピソードがあります。

 今くらいの時期だったと思います。私が小学2~3年生だった頃、2つ下の弟と母と3人で近くの海まで散歩に行きました。浜辺を歩いていると、母が「あ!わかめ!」と海の方を指さすんです。

 見ると波打ち際に海藻がプカプカと浮かんでいます。2~3本だったでしょうか。どこかでちぎれて流れてきたような。「取っておいで!取っておいで!」と興奮する母。私もテンション上がってザブザブと波の中に入って見事GET!

 やったー!すごーい!と3人で盛り上がり、私はずぶ濡れのままニコニコと家路をたどり、わかめは母がその夜おみそ汁にしてくれました。美味しかったなあ~。

 ――て、危ないって。子どもに取りに行かせるなんて。波に飲まれなかったからよかったようなものの…。母はこの話をするたびに、「ごめんなさい」と謝ります(でも楽しかった思い出です)。

 ほかにも母との散歩には、ノビルやツクシ、ワラビにセリ、からし菜など、食べられる野草の思い出がくっついてきます。「目に入ったり思いついたり気が付いたり」する母だからこそで、それはものが豊富ではなかった時代に育った人ゆえかもしれません。

 今はご近所を散歩してもそんな野草はなかなか見かけませんが、代わりに車でどこかに出かけると「さっきあそこに道の駅があった!」とか「綺麗な花が咲いちょった!」とか色んなものが目に入ってうるさい母です。

 きっと私よりも「あれこれ目に入って気になってしまう」母の方が人生をしっかり楽しめているんだろうなあ、と思います。

 そんな私は今日も勝手口で「もう先に行くけえねーーーー!」とイライラ、ブチ切れているのでした。とほほ。

NOオイルMemo 1分脂質2.5g「パパっと若竹炒め」

 春の味のタケノコ、穂先の柔らかい部分はわかめと一緒におだしでさっと煮て「若竹煮」に。

 でも根元の硬い部分はちょっと苦手…なので、こちらは濃い味の炒め煮にしてごはんのお供にします。

 我が家ではタケノコは「もらうもの」。毎年どこからともなく掘りたてが届き、母が嬉々として茹でては水煮をご近所に配ってます。うえだ家の春の風物詩です。

パパっと若竹炒め(4人分)

<材料>
・わかめ(生または水で戻したもの)…100g
・タケノコ(水煮の固い部分)…100g
・めんつゆ(2倍希釈)…大さじ2
・砂糖…大さじ1
・ごま油…小さじ2

<作り方>
【1】わかめは一口大に切り、水気を絞っておく。タケノコは薄めの短冊切りにする。めんつゆと砂糖は一緒によく混ぜておく。
【2】フライパンにごま油小さじ1を入れて熱し、タケノコを中火で炒める。
【3】全体に油が回り熱が通ったら、わかめを入れてさらに炒める。
【4】わかめにも熱が通ったら調味料を入れ、汁気がなくなるまで炒める。
【5】仕上げにごま油小さじ1を回しかけてざっと炒めて完成。

 甘じょっぱい味付けとごま油の香り&コクで、少量の油でも満足感のある一品です。あっさりした魚や豆腐など、たんぱく質が摂れるお料理と一緒にどうぞ。

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絵と文

漫画家・うえだのぶ

うえだのぶさん

 イラストレーター・漫画家。58才。山口県で82才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
『読者体験!リアル迷惑人間大集合1 』Kindle版が発売中。

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この記事へのみんなのコメント

  • こまぞう

    季節感いっぱいのすてきな思い出ですね。拝読していて、ほっこりと温かな気持ちになりました。日々の幸せはこんな日常の中にあるのだと、年を重ねてから思うようになりました。いろんなものが目に入るお母様を見習って、周りの景色を楽しみながら過ごしていきたいです。次回も楽しみにしています!

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