「膵炎の母と歯とジビエ。しし鍋むしゃむしゃ」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第43話
漫画家で栄養士の資格をもつうえだのぶさんは、慢性膵炎の母とふたり暮らし。膵管に詰まった石が大きくならないように、脂質を控える食生活を送っている。自然豊かな山口県で暮らす母娘の食の好みは一致しているようで…。なんと今夜はジビエ!
道の駅でジビエ肉!
しばらく「母のトラブルの話」ばかりだったので、ちょっと気分を変えて「食べ物」のお話を…。
先日、母を乗せてドライブ中、道の駅で「イノシシの肉」を買いました。
私の住む山口県は三方を海に囲まれた自然豊かな場所。マイカー率が高く道路事情も良いので、車で気軽に行ける「道の駅」は、県民、特に高齢県民の“愛されレジャースポット”です。
そんな道の駅の中には「ジビエ肉」を買える所も。自然豊かな我が県では、野生のイノシシやシカによる農作物の被害が大きく害獣として駆除するのですが、それを食肉用に処理したものが道の駅で買えるんです。奪った命を無駄にせずに頂く。SDGsってやつですね。
…って、偉そうに書きましたが、そもそも私が「ちょっと変わった食べ物好き」なんです。お肉も色んな種類の色んな部位を好んで食べるので、母の保守的なお友達界隈では、「のぶちゃんは奇妙なものを食べる」と恐れられています。
母も年の割には好奇心旺盛な食いしん坊。イカスミやブルーチーズ、アンチョビにザーサイ、ピータン、豆腐ようなど、私が買ってくるものを「おいしい♪」と喜びます。食の好みが合うおかげで普段の食事も外食でもメニューでもめることはあまりありません。
もし母が小食だったり、好き嫌いが多かったりする人だったら大変だったろうなぁ。私に遠慮して無理して食べられてもせんない(辛い)し。「おいしい」って食べてくれるからこうして一緒に暮らせてるんだろうなぁと、しみじみ…。
この日の夜作った「しし鍋」も、母はいつものように「おいしいね~♪」とハフハフ♪ 熱々のしし肉にバクっとかぶりついて食べ始めました。
あれ、大丈夫かな? ちょっと前に歯のトラブルが起きたばかりの母。
→「母の歯にも膵臓にも優しいおでんシチュー」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第41話
イノシシの肉は弾力があるので「小さく切って食べてね」と、キッチンバサミを添えていたのですが、夢中になって食べているので、まあいいかと、そのまま食事を終えました。
しし肉、パクパクのせいで…
――翌朝。
「のぶちゃーん!入れ歯が折れたー!」
えーー⁉
いつものように入れ歯を洗っていたら、突然パキッと割れてしまったと言うんです。私の脳裏には昨夜の「バクっ」のシーンが走馬灯のようにリフレイン。
やっぱり止めればよかったーーー‼
まあまあの面積の部分入れ歯なので、これがないと母はまともに食事ができません。とにかくすぐ歯医者さんに電話して!
あ、でも絶対「しし肉にかぶりついた」なんて言わないで~。怒られるか笑われるかのどっちかじゃけえー!
――って、食べ物の話のはずが、やっぱりトラブルか~い!(次回に続く)
NOオイルMemo「うちのしし鍋」
「しし肉ってスーパーにないし…」というかた、豚肉でもOKです。
母の膵臓を労わる食生活は、脂質1食10gが目安。我が家では、脂の少ないもも肉(しゃぶしゃぶ用)で作ります。
しし肉は豚肉よりも鉄分は多いのですが、脂質は高め。我が家ではしし肉を使う時は、先に半分くらい脂身を外します(全部外すと味気ないので)。しし肉の脂質は、100g中、18.6g、豚もも肉(赤身)の脂質は、100g中、約3gです*。
【1】食べやすい大きさに切った白菜・大根・白ねぎ等を鍋にぎゅっと詰める。
【2】市販の昆布だし小さじ1を全体にさっと振り、その上に薄切りのしし肉を並べる。
【3】水をひたひたに入れて中火にかける。
【4】煮立ったらアクを取り、おろししょうがをたっぷり入れて、みそで濃い目に味付け。
【5】肉に味が染みるまで10分くらい弱火で煮込む(煮汁が減ったらお湯を足して調整)。野菜が柔らかく煮えたら食べ頃です。
豚のしゃぶしゃぶ肉を使う時は、野菜を先にしっかり煮込んで、お肉を並べてから一度フタをして火を通し、お肉で野菜を巻きながら食べるとおいしいですよ~。
*参照「食品成分表2024(八訂)」/女子栄養大学出版部
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。58才。山口県で82才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
ホームページ:uenobu.com アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja