マヨネーズやドレッシングは高齢者の強い味方?乳化状調味料が「食材の飲み込みやすさ」をアップさせる研究成果を発表
年を重ねると噛む力が衰えてしまい、やわらかい物しか食べられない人も増えてくる。そんな中、高齢者が食べにくいと感じる食材にマヨネーズや乳化状のドレッシングをかけると、食べやすさが向上するという。キユーピーが大学と共同で行った研究内容を紹介する。
高齢者にとって食べることは楽しみや生きがい、社会参加につながる
食事を摂ることは栄養摂取のためだけでなく、家族や友人と過ごす大切な時間や、楽しみや生きがいを見出すことにもつながり、特に高齢者にとってはQOL(生活の質)向上のために必要不可欠だ。
しかし、年を重ねると「以前より硬いものが食べにくくなった」「食事中にむせやすくなった」など、食べる力の低下(噛む力や飲み込む力)しやすい。そうなると、日々の食事の食べにくさに加え、食物の一部が気道に入り込み、誤嚥性肺炎につながる恐れもある。
65才以上の高齢者割合が総人口の29.3%と過去最高になった日本において、加齢に伴う食べる力の低下は社会課題と言える。世界でも今後急速に高齢化が進行すると予測されている中、飲み込みやすさに配慮した嚥下(えんげ)食を国際的に標準化する取り組みも始まっているという。
「介護食」にも力を入れるキユーピー
かむ力・飲み込む力に応じて開発された「やさしい献立」シリーズ、食べやすさに配慮した食品(ユニバーサルデザインフード)の商品化に力を入れているキユーピーは、マヨネーズ、ドレッシングやパスタソースのイメージが強いが、1998年に日本で初めて家庭用の「介護食」を販売するなど、早期に「介護食」というジャンルを確立し、社会に浸透させた立役者だ。
そんなキユーピーが、高齢者が食べにくさを感じる野菜などの食材にマヨネーズや乳化状のドレッシング(以下、乳化状調味料)を添加することで、食べやすさが向上することを和洋女子大学・大学院の柳沢幸江教授らとの共同研究で確認。その研究成果を、日本咀嚼学会第35回学術大会で発表したという。
食材を「まとまり・飲み込みやすく」することが分かった
官能評価には59~79才の噛みにくさがある人(半年前に比べて固い物が食べにくくなった人)10名、そうでない人61名、男女計71名が参加した。
高齢者に食べにくいとされる4つの食材(じゃがいも・ゆで卵・ツナ・キャベツ)について、食べやすさに関わる4つの項目(つぶしやすさ、噛み切りやすさ・まとまりやすさ・飲み込みやすさ・残留感のなさ)で採点した。
結果、どの食材も食べやすさの4項目全てで、乳化状調味料「あり」が「なし」に比べて有意に食べやすい結果(高い点数)となった。とりわけ、「まとまりやすさ」と「飲み込みやすさ」で効果が大きい傾向が見られた。
咀嚼レベル別にみると、乳化状調味料「なし」の場合、噛みにくさがある人とそうでない人で、じゃがいもの食べやすさに有意な差が見られた。一方、乳化状調味料「あり」になると、噛みにくさがある人の点数が大きく上昇し、二者間の差が縮小して有意差がなくなった(図3、右のグラフ)。これにより、乳化状調味料の添加は、噛む力が低下している人の方が効果を感じやすく、有効である可能性が示された。
キユーピーは今後、飲み込み時の筋電位測定など客観的な評価法による検証も行い、食にまつわる課題解決に向けた研究、豊かな食生活の実現に向けた取り組みを進める方針だ。
何才になっても、食べたいものを当たり前に食べられることは幸せだ。毎日の歯磨きを忘れずに口の中を清潔に保ちつつ、口周りのマッサージやトレーニングを行い「食べる力」を維持し続けたい。
【データ】
キユーピー「やさしい献立」
https://www.kewpie.co.jp/udfood/
※キユーピーの発表したプレスリリース(2024年9月19日)を元に記事を作成。
図表/キユーピー提供 構成・文/松藤浩一
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