兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第266回 入所の日取りが決まりました!】
認知症の症状が進行し、ところ構わず排泄してしまう兄に翻弄されてきた妹でライターのツガエマナミコさん。そのような中、兄は、ゴールデンウイークに、ショートステイ先で突然倒れ、事態が急展開…。要介護3から要介護5になり、特別養護老人ホームの入所が決まったのです。そして、とうとう、入所の日も決定した近況を綴っていただきました。
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「いよいよでございます」
これをお読みくださっている皆々さま、いよいよでございます。あしかけ5年、長らくご心配をおかけして参りましたが、本当に「その日」は来るのでございます。
現在、施設入所に向けて着々と準備を整えているツガエでございます。
先日、無事に健康診断も終え、主治医の先生に紹介状を書いていただくお願いをいたしました。これで2~3週間もすれば必要書類は揃いそうだと目途がついたところに、タイミング良く施設の方から「お部屋のご用意ができました。3週間後には入所可能です」とご連絡をいただきました。
「お部屋の用意ができた」ということは、おそらくどなたかが亡くなったということであり、無邪気に喜んではいけないことはわかっております。ですが、やっとここまで来たことへの安堵と高揚は隠すことができません。いや~長かった。解放されるまであと少し…。
ここまでくると、あとは兄の健康管理が最優先でございます。風邪やコロナ感染症などになったら入所延期になりかねません。とにかく免疫力を落とさないようにしっかり食べてもらい、水分量にも気を付けて健やかな環境をキープしなければなりません。エアコンの電気代などケチっている場合ではございません。かといって冷えすぎもダメ。こまめなご機嫌伺いで笑顔にして差し上げることも必要かな~と、わたくし必死でございます。
自家用車のないツガエ家は、荷物を運ぶ段取りも必要です。
問題はタンス。当初、安価な引き出しタンスを購入して店舗から直接施設に送ってもらおうと思ったのですが、探してみると安価なものは組み立て式で、そうでないものはやはりお高い。自分で組み立てるのは出来そうにないので、家から運ぼうと考え直しました。
兄の部屋に一人用の安価な引き出し付きクローゼットがあるのでございます。運搬代はかかりますが、それを有効利用すれば新たな家具を買う必要はありませんし、部屋も少し広くなって一石二鳥。最近地震が多いので、タンス転倒防止のツッパリ棒も購入しなければと思っているところでございます。タンスの位置を決めたり天井までの高さを採寸したりしに、近々施設へ伺おうと思っております。お部屋は全室9畳程度。窓の方位が気になります。
そういえば、健康診断で一番心配だった尿検査ですが、そこの病院では尿道カテーテルなどを使う検査はやっていないため「紙オムツに紙コップ入れて採るしかないんですよね」と言われ、「どうしても尿検査が必要か、施設にお電話してもらえませんか?」とお願いされました。施設にその旨をお伝えすると「どうしても無理なら尿検査はナシでいいですよ」とおっしゃっていただいたので事が丸く収まった次第でございます。そうでなかったらどうなっていたことか。想像するだけで背筋が凍ります。
背筋が凍るといえば、先日わたくし、お仕事で「ラッパー」というご職業の方にお目にかかりました。タトゥーの入った重量級のお身体に、背筋が凍るようないかつい面立ち、ビートに乗って即興でリリック(歌詞)をはめ込み、思いを叫び続ける達人でございます。音楽通のカメラマンは「レジェンド(偉大な人)過ぎて”笑ってください”って言えなかった」とビビりまくっておりました。わたくしも内心「失礼があったら、予想もつかぬ事態に…」とドキドキ致しましたが、実際はとても真面目で優しく、取材に真摯に応じてくださいました。人は見かけに寄らないものでございます。
これからその方の原稿をまとめる作業に入ります。そう、わたくしの本業はフリーライター。意外な特技はオムツ交換。読者の皆さまのメッセージを拝読するのが密かな快感。
今日のところはこの辺で。また来週、お暇つぶしにお読みいただけることを願っております。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ
●介護施設入居者の不快感やネガティブな感情を見える化 AIを活用して感情を読み取る実証実験を実施