生島ヒロシさん「迷うことなく手術を決断した」緑内障治療の経緯 治療の流れや注意点を眼科医が解説
日本人の失明の原因第1位である「緑内障」。自分では気づかないうちに視野が欠けていく目の病気で、タレントの生島ヒロシさんは「緑内障手術」の経験者だ。病気の進行をくい止める治療法の選択にはいくつか注意が必要だという。緑内障の治療で気をつけるべきポイントを眼科医に聞いた。
教えてくれた人
平松類さん/二本松眼科病院副院長、生島ヒロシさん/タレント
緑内障の治療は3段階の「見極め」が重要
日本で失明原因となる病気のうち最も多い「緑内障」。国内の患者数は400万人とされる。
二本松眼科病院副院長の平松類さんが言う。
「緑内障は目から入った情報を脳に送る『視神経』が傷み、部分的に視野が欠けていく病気です。いくつかタイプがありますが、患者の8割近くを占める『開放隅角緑内障』は視神経へのダメージが比較的ゆっくり進むため、視野欠損がかなり出てから気付くことが多いという特徴があります」
緑内障で一度失われた視野が回復することはない。そのため、治療は進行を遅らせることが目的で、生涯にわたって続く。
治療は、検査による「診断」、進行を遅らせる「目薬」、進行を止める「手術」の3段階で進む。
緑内障の「検査」「治療」の流れ<注意点と対処法>
■検査…「眼圧検査」や「眼底検査」では見逃される可能性があるため、「OTC検査」や「視野検査」を受ける
「気になる人はOTC検査を受けましょう」(平松さん)
■まずは「目薬」…副作用が出やすい。β遮断薬は心臓の病気がある人などは変更を検討。α2遮断薬は降圧剤を服用中の人は要相談
「心臓が弱い人は特に注意が必要です」(平松さん)
■進行すると「手術」…進行するほど手術のダメージで中心視野が欠けて視力低下する可能性が高まるため、タイミングをよく相談する
検査では異常を指摘されたり症状を自覚したりして眼科を受診しても、同じく視野欠損がある「強度近視」と誤診されるケースもある点に注意が必要だ。
『OCT検査(網膜の断層を撮影する検査)』など専門検査で緑内障と診断されると、目薬で「眼圧」をコントロールし進行を抑える治療がスタートする。
「点眼治療によって眼圧を下げるだけで約7~8割の患者は視野の悪化が止まるといわれています。まずは眼圧をできるだけ下げることが必要です」(同前)
目薬には副作用の問題も
しかし、目薬には「副作用」の問題もある。
「緑内障の目薬はいくつも種類がありますが副作用が出やすい。特にβ遮断薬というタイプは心臓の収縮や心拍数を減少させる作用がある。持病などで心臓に不安がある人は要注意です」(同前)
その代替薬として選択されるα2遮断薬は、血圧低下や眠くなる副作用があるため、降圧剤を併用する人は血圧が下がりすぎることに注意が必要だという。
「眼科医によっては、既往症やほかの服用薬について細かく問診せずに点眼薬を処方するケースもある。患者さんも『目とは関係ない』と思って伝えないことがあるので、必ずコミュニケーションを取ってほしい」(同前)
手術で視力が低下する可能性もある
さらに問題なのは、「目薬」から「手術」に進むタイミングだ。医師と患者の「コミュニケーション不足」が課題だと平松さんは指摘する。
「目薬を続けていても、視野欠損は徐々に広がります。医師はある程度進行したら手術を勧めますが、患者さんのなかには『それならもっと早く手術すればよかった』となるケースがあるのです」
だが、手術でかえって視力が低下することもある。平松さんが解説する。
「目に小さな穴を開けて眼圧を下げる『トラベクレクトミー』という手術が最も効果が高いですが、眼圧が下がりすぎることで視力低下の可能性があります。
また、穴が開きっぱなしとなるため、そこから菌などが入る感染症のリスクもあります。術後は、一生、経過観察となるため判断は非常に難しいです」
視野欠損がどこまで進んだら手術を選択するか。日頃の主治医との対話が欠かせない。