兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第248回 4年ぶりにテニス】
ライターのツガエマナミコさんは、57才で若年性認知症を発症した兄(現・65才)と暮らし、生活全般のサポート中です。排泄のトラブルなど、マナミコさんを悩ませる兄の様子に日々忙殺されているのですが、ショートステイを活用するようになり、ようやく自分の時間をもつことができるようになりました。今回はお友達と久しぶりにテニスしてきたというお話です。
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筋肉痛の中、お尿さまのお掃除
ショートステイ中に来る、急なお誘いパート2で、先日テニスをしてまいりました。
コロナ禍前は月1回ほど参加しておりましたが、コロナ禍で何の連絡も来なくなりテニスとは縁が切れたと思っておりました。4年間、買い物が唯一の運動という体たらくでしたので、「やめておこうかな」とも思いました。でも行こうと思えば行けるチャンスだったので「これは神の啓示」と解釈し、参加した次第でございます。
シューズやウエアを引っ張り出して鞄に詰める作業は深夜までかかり、しまいっぱなしのラケットを取り出してみると、グリップテープが劣化して溶けている有様。当日にテニスショップに開店と同時に入り、グリップテープを購入し、一路湘南茅ケ崎へ向かいました。
茅ケ崎には昨年亡くなった友人のお墓があるので、まずはお墓へ寄って、その足でテニスコートに向かいました。「怪我しないように見守っておくれよ」と願いつつ。
快晴で初夏の日差しの中、4年ぶりのテニスは惨憺たるものでございました。わたくし以外は上手な方ばかりなので、打ちやすいところに返してくださるのですが、走っても間に合わず、急に止まれば足が攣り、サーブでは腕が上がらない。それでも上手な方々のおかげで青空の下、ヘロヘロになりながらゲラゲラ笑って帰ってまいりました。亡き友のおかげか、怪我もなく、まさに「テニス最高!」の1日でございました。
そんなこんなで、只今絶賛筋肉痛でございます。日焼けで全身がだるく、右腕を動かす度に痛みが走っております。不安だった右ひざ関節も痛みが増し、床の拭き掃除は苦行でございます。よって61歳で4年ぶりのテニスは厳しいという結論。でもまたやりたい気持ち満々でございます。
誘ってくださったご夫婦は相変わらず底抜けに明るく、お子さんも社会人となり、順風満帆だとばかり思っておりました。ですが、最近お嬢さんが精神科の病院に入院していたとのこと。一時は寝る際にも一人にしておけなかったというお話を伺い、「人は表に出さないだけでみんな困難を抱えている」と実感いたしました。他人を羨むのはお門違い。自分だけが悲劇のヒロインだと思いあがってはいけないと間接的に教えていただきました。
とはいえ、兄がショートステイから帰ってくるとストレスの絶えない日々。
前回は毛布が便器に突っ込まれておりましたが、先日は夕方、枕が浸かっておりました。お尿さまをしたと思われる水で少々濡れた枕を取り出して洗濯機に放り込みました。洗濯できる枕を選んでよかったと心から思い、その日は枕なしで寝ていただきました。
お仕事で外出する日は、家に帰りたくない心境になります。昨日は玄関でお尿さまに出迎えられました。着替えの前に雑巾がけでございます。お尿さまの浸みた靴下で歩き回る兄を冷ややかに見つめ、ため息が出ました。
食卓の兄の椅子の下もお昼の食べこぼしとともに水たまり状態。部屋のアチコチに張り巡らしたペットシートもところどころお尿さまの跡がございました。筋肉痛の体に鞭うち、お掃除を終えると、夕食に買ってきたお弁当を兄の前にドンと置き、わたくしは自室にこもりました。一人になれる部屋がある平和に感謝しながらわたくしも一人静かにお弁当をいただきました。
ストレスがグッと上がったその頃、新聞で小さな記事を発見いたしました。
ざっくり申し上げると「育児ストレスの高い人は腸内細菌の多様性が低い研究結果が出た」という記事でございます。逆にいうと腸を守る細菌が多いとストレスから回復する能力が高いのだとか。育児ノイローゼや虐待防止につながるかも・・とさらなる研究が期待されているそうでございます。
「そうか!腸内環境を良くすればストレス溜まりにくいのね」ということで、ツガエは今宵、食物繊維たっぷりのきんぴらごぼうを作ることにいたします。
ちなみに「大根頭にごぼう尻」ということわざはご存じでしょうか? なんだか怪しげな女体が現れそうですが、大根は頭の方が甘く美味しく、ごぼうはお尻の方が柔らかく美味しいことを表す言葉のようでございます(参考:農林水産省サイト)。
どうかみなさまのストレスも少なくなりますように、合掌。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ
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