ちょっと残念な絶滅危惧動作クイズ|昭和世代なら覚えているはず、これなーんだ?
世の中から消えつつある動作に目をつけ、一冊の本にまとめたのは、藪本晶子さん。平成生まれ、20代の藝大生だ。
「両親が共働きだったので、学校が終わると祖父母の家に行っていました。そこには黒電話があって、“テレビの映りが悪いから叩いて”と言われることもあり(笑い)、“昭和”に触れる機会が多くて…」(藪本さん・以下同)
そんな彼女がこの図鑑を作ろうと思ったのは、学校の課題がきっかけだ。
「大学の課題の一環として、100枚のスケッチを描きました。人々の行動を観察し、分析した結果“物と動作の数はイコール”という事実にたどり着きました。例えば最近はスマホ1台あれば複数のことがまかなえますが、消滅する動作もある。それをまとめようと思ったんです」
慣れ親しんだ動作がなくなるのは残念だし寂しいが…「私自身は時代の流れなので、悪いこととは思っていません。この図鑑は教訓ではなく、知らない人が“へぇ~”と思ったり、年配のかたが懐かしいと感じたり。気楽に楽しんでほしいんです」
昭和世代の人なら、きっと覚えているはず!何の動作か、さあ、みんなで考えてみましょう。
問題 以下の絵とヒントをもとに、何の動作か想像してみてください
※答えと解説は最後にあります。
【1】ヒント:銭湯では、風呂上がりにコーヒー○○やフルーツ○○を飲んでいた。
【2】ヒント:冬は手がかじかんでつらい作業。学校の掃除の時間には係があり、順番に担当になったものだが…。
【3】ヒント:鍵がかかっていたら回らない。呼びかけても反応がなければ、ガチャガチャしちゃう人が多いかな?
【4】ヒント:昭和前半はこのスタイルが主流だった。この姿勢で毎朝、新聞を読むお父さんもいたらしい。
【5】ヒント:3同様、最近は回す(ひねる)タイプをあまり見かけなくなった。
【6】ヒント:昔、駅の改札でよく見かけた風景。駅員さんは常にカチカチカチとはさみを鳴らしていたものだ。
【7】ヒント:夜、寝床に入ってからでも手が届くように、ヒモで長さを足してみたりしたっけなぁ~。
【8】ヒント:手を切らないように注意しながらやっていたが、最近はプルタブ付きが主流に!?
【9】ヒント:0や9の多い番号は時間がかかるため、プッシュ式は画期的だった。
【10】ヒント:うまく取れないと、紙がはがれたり、強く押しすぎて中に落ちたり…。
【11】ヒント:今やリモコンでピッピッが当たり前だが、当時はいちいちそこまで行って、回していた。
【12】ヒント:普通に見ていたのに、横線が入ったり、砂の嵐に…。そんな時は、とりあえずこの動作。
【13】ヒント:旅先でも、ご近所でも、お店や誰かの家を探す時の必需品。これを見ながら行きましたよね。
答えと解説
【1】瓶の牛乳を飲む。
「銭湯で風呂上がりに瓶入りの牛乳などを飲む時は、仁王立ちで片手を腰に添えるのが王道でした」(藪本さん・以下同)。以前は、牛乳は家に配達してもらうのが当たり前でしたね。
【2】雑巾を絞る。
フローリングワイパーの普及により、床を雑巾がけする機会が減少した。「最近は日常的に、ひねる動作が減少しているため、上手に雑巾を絞れない子供が増えているそうです」。
【3】ドアノブをひねる。
「昔の物件にはドアノブが残っていますが、最近はレバー式が主流になっています」。ドアノブに手作りのカバーをつける家も多かった。
【4】和式トイレでしゃがむ。
「かつてのトイレはほとんどが和式でしたが、今では、この体勢が苦手な人も多いですよね」。長居をすると、足がしびれたりして。
【5】蛇口をひねる。
「レバー式の蛇口や、手をかざすと自動で水が流れるタイプが、公共の場でも、一般家庭にも広く普及しています」。
【6】切符を切る。
「以前は改札で駅員さんが1枚1枚切符を切っていましたが、現在は、切符自体も絶滅の危機に瀕していますよね」。コンサートなどに出かけると“混雑が予想されるため、お帰りの切符を先に購入して”と呼び掛けていた駅員さんのアナウンスも、いつの間にやら消滅の危機!?
【7】電気をつける(消す)。
「以前は、照明器具にヒモがついていて、それを引っ張って電気のオンオフを行っていました。現在はスイッチタイプが多数を占めています」。ヒモの先に人形などを吊るして引っ張りやすく工夫した人も多いのでは?
【8】缶切りで缶を開ける。
「リングに指を通し、手前に引き上げるプルタブタイプが増えたため、缶切りを使って開ける動作はあまり見られなくなっています」。
【9】黒電話のダイヤルを回す。
「ジーーとダイヤルを回しては戻すという動作の繰り返しを経て、やっと相手と会話ができるというもどかしさ。そんな黒電話の使い方すら知らない若者も多いのです」。
【10】牛乳瓶のフタを開ける。
「給食で牛乳瓶が主流だった時は、毎日苦戦していました。特に爪を切った翌日はフタに引っかからず難しかったですね」。フタを開けるために針のついた専用の道具もありましたね。
【11】チャンネルを回す。
「チャンネルを変えたい時は、いちいちテレビのある所まで行って、チャンネルを回していました」。リモコンが普及した今でも“チャンネルを回して”と言ってしまう昭和生まれは多い。
【12】テレビを叩く。
「ブラウン管テレビの映りが悪くなった時に、上面や側面を叩くと、症状が改善されました。この民間療法のような行為は、現在の薄型テレビでは行われないため、今ではほとんど全滅に近い状態と思われます」。
【13】地図を見ながら歩く。
「スマホ の地図アプリは住所を入力すれば現在地から目的地をナビしてくれるため、紙の地図を持って出かけることが激減しました」。
発案者
藪本晶子さん /’94年生まれ。東京藝術大学 大学院デザイン専攻修士2月(3月取材時)
イラスト/藪本晶子
※女性セブン2019年5月2日号