介護食に使うときは要注意の食材8選と調理のポイント「パサパサ、ホクホク、パラパラ」はNGの理由を管理栄養士が解説
家族に介護が必要になると、「やわらかさ」「飲み込みやすさ」など食事作りに工夫が必要になる。「介護食を作る前に、まず”食材”そのものの特徴を知っておくといいですよ」と、高齢者施設で栄養指導などを行っている管理栄養士の川鍋仁美さん。繊維が多い野菜やパラパラしているひき肉など、そもそも介護食には不向きな食材もある。要注意の食材や種類を確認していこう。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
介護食作りの基本「食材の種類や特徴を理解しておきましょう」
親の介護が必要になったとき、すぐに向き合うことになるのが「介護食」です。
「介護食」といっても、食べられる食材のやわらかさや大きさ、とろみの具合など個人差が大きいため、介護する側も悩んでしまうかたも多いのではないでしょうか。介護食作りのために、まず知っておきたいのが、食材の特徴です。
食材には、介護食にあまり向いていないものもあります。以下で解説していきます。
介護食に不向きな食材もある
おいしく、安全な介護食を作るには、食べる人にあったやわらかさや形状にすることが大切です。そのためには、食材選びも重要です。
お餅など粘り気のあるものや、イカ・タコなど歯でかみ切りにくい食材は、明らかに高齢者には不向きとわかりやすいものですが、それ以外にも加熱してもやわらかくなりにくかったり繊維が口に残りやすかったりする食材、弾力のある食材だと小さく切っても誤嚥の恐れが高くなるのでできるだけ使用を控えましょう。
高齢者が食べにくいと感じる食材として以下のようなものがあげられます。高齢者が好む和食に使用する頻度が高い食材も多いので注意しましょう。
注意すべき8種類の食材と調理のヒント
やわらかい食材や、食べやすい大きさの料理なら「安全です」と言いたいところですが意外な落とし穴も。かたい野菜の他にも、やわらかい食材でも気をつけて起きたいポイントがいくつかあります。
【1】粘り気がある食材/お餅・お団子など
粘り気がある食材は、高齢者にとって口の中でかみ切りにくく飲み込みやすい大きさにするのが難しいものです。その結果、丸のみしやすく窒息のリスクも高くなる恐れがあります。べたつきもあるので喉に張り付きやすく、スムーズに喉を通らないことも。
調理のポイントは、少しずつ口に入れて食べられる量で提供することです。また、食前に飲み物を飲んで、口の中を潤しておくことも飲み込みやすさにつながります。
高齢者でお餅が好きなかたは多いですが、少しでも飲み込みに不安がある場合はできるだけ使用は控えましょう。高齢者向けの飲み込みやすく加工されたお餅を選ぶのもよいでしょう。
【2】繊維が多くかたい食材/ごぼう・レンコン・たけのこなど
加熱してもかたさが残ったり繊維が口に残ったりしやすい食材は、かみ切るために力が必要になるため、義歯を使用していたり、噛む力が弱ってきている高齢者には苦手なかたは多いです調理のポイントは、食材の切り方です。
小さく、薄く、繊維を断ちきる方向に切りましょう。また切る前に、包丁の柄やめん棒などでごぼうをかるく叩いて繊維を壊しておくと、より柔らかくなりやすいでしょう。
【3】弾力のある食材/こんにゃく・かまぼこ・イカ・タコなど
小さく切っても弾力が残りやすい食材は、噛み切りにくいため飲み込みにくく誤嚥しやすい食材です。加熱しても柔らかくなりにくく、弾力が残る食材は大きさによっては窒息のリスクもあります。
介護食には使用は控えたい食材ですが、提供する場合は、すりつぶして卵や豆腐などやわらかいつなぎになる食材と混ぜてまとめ、食べやすい大きさに切りましょう。高齢者向けのやわらかい食感のかまぼこを使用するのもよいでしょう。
【4】喉にはり付きやすい食材/板海苔・海藻類・薄切りのきゅうりなど
薄く加工された食材は、喉にはりつきやすいため飲み込みにくく、むせたり誤嚥したりしてしまう恐れがあります。提供するときには、小さくちぎるなど大きさに注意する必要があります。
【5】パサパサする食材/パン、カステラなど
パン・カステラなどは柔らかくそのままでも高齢者が食べやすい食品と思われがちですが、唾液の分泌量が減ってきている高齢者にとって、パサパサしているものは唾液を吸収して口の中が乾きやすく誤嚥しやすくなります。
食前や食事中に水分をこまめにとって、口の中を潤しておくことも誤嚥予防につながります。飲み物やスープなどを一緒に提供すると良いでしょう。食パンは、フレンチトーストにするとパサパサ感がなくなり食べやすくなります。
【6】ホクホクする食材/いも類・たまごの黄身など
蒸したいも類やゆで卵の黄身の部分などホクホクして水分が少ない食材は、食材が唾液を吸収して、口の中が乾いてしまうため飲み込みにくい食材です。
調理のポイントは、ホクホク感を減らすこと。煮汁も一緒に盛り付け水分をなるべく多く含んだ状態にしたり、マヨネーズなど油分の多い調味料と和えるたりすることで、口の中でまとまりやすく、飲み込みやすくなります。
【7】パラパラした食材/ひき肉など
ひき肉などパラパラとしていてまとまっていない食材は、柔らかくても口に残りやすくまとまりにくいので高齢者にとって飲み込みにくい食材です。調理のポイントはまとまりをつくること。
つなぎ(たまご、豆腐など)になる食材を使ってまとめるか、とろみをつけて飲み込みやすくすると食べやすくなります。
【8】水分を含んだやわらかい食材/麺類、雑炊など
麺類や煮汁を含んだ高野豆腐、雑炊など、やわらかく調理された物でも水分と固形物が混ざった状態のものは、高齢者にとって意外と食べにくく誤嚥しやすい料理です。
口に含んで固形物を噛んだときに液体がのどに流れ込むとむせやすく誤嚥してしまうことがあるからです。また麺類のような、すすって食べる料理もスープが気管に入りやすくムセたり咳き込んで誤嚥しやすくなります。
これらを調理するときは、食材の大きさややわらかさはもちろんですが、とろみの必要性の有無も十分検討した上で提供しましょう。
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高齢者のかむ力や飲み込む力はひとりひとり違います。またそのレベルも日々変化していくので、介護食作りに戸惑うこともあるかもしれません。
介護食には注意したい食材はもちろんありますが、極端に制限してしまうと栄養面で偏りが出てしまったり、食べられる料理が減ってしまったりすることに繋がりかねません。
ぜひ今回ご紹介した食材の特徴を理解して、調理のポイントも参考にしながら安全に安心して食べられる調理の工夫をしてみてください。食材や調理法を工夫することで、食べる楽しさを感じ続けてほしいですね。
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