声優・日髙のり子さん「急に声が出しづらくなった」その原因とは?還暦前から始めた「のどケア」方法明かす
気温が下がり空気が乾燥する冬。この季節になると、のどがイガイガしたり調子が悪くなるという人も多いはず。風邪ではないのに「のどが痛い」「声が枯れる」状態が続くとつらいもの。細菌やウイルスに感染しないためにも、毎日の「のどのケア」が大切だ。今回は、「声のプロ」である人気声優の日髙のり子さんに声を守るために実践している「のどのケア方法」を伝授してもらった。
教えてくれた人
日髙のり子さん(61)/声優。1980年、18才のときに歌手デビューし、1984年に声優デビュー。『タッチ』の浅倉南役、『名探偵コナン』の世良真純役など、代表作多数。ナレーターやラジオのパーソナリティーとしても活躍。
還暦前にのどに違和感!原因は逆流性食道炎だった
長編アニメ『となりのトトロ』では、サツキ役で少女らしいはつらつとした声をあて、テレビアニメ『呪術廻戦』では、妖艶な大人の女性を演じるなど、さまざまな声色を使い分ける日髙のり子さん。今年で声優歴40周年を迎えるが、これまで本格的にのどのケアをしてこなかったという。
「もともとのどは丈夫だったんです。ただ、1989年、27才のときに『ピーターパンの冒険』で主人公のピーターパンの役をいただいてからはしばらく、少年役を多くいただいた時期があって、そのときは声を力強く出して叫んでばかりいたので、一度だけ『声帯結節』になったことがありました。でも、1か月ほどお休みをしたら治ったので、それ以降はまた無頓着に。ところが2年くらい前、還暦を前にしてのどのダメージが回復しづらくなりました。そのうち声が出しづらくなり、これまでにない強い乾きを感じるようになったんです」(日髙さん・以下同)
そこで専門医を受診。診断は、逆流性食道炎だった。
「胃酸で声帯の周囲がただれていると言われました。加えて加齢で体内の水分が減ったこともあり、声帯自体も乾燥。まるで干した貝柱のように硬くなっているように見えました」
逆流性食道炎とは、胃酸や胃の中の食べ物が食道に逆流し、食道に炎症を起こす病気だ。
「治療の一環で、1日2Lの水を飲むようになりました。収録現場でも、のどを酷使した後は、のど飴をなめる、スタジオに入って、たんがからまるときは、粉末の『龍角散ダイレクト(R)』をのむ、人混みに出かけるときや一日の終わりには、抗菌作用が期待できるという『板藍根(ばんらんこん)』という生薬配合ののど飴をなめる、といったアフターケアをするなど、常日頃から意識的にケアするようになりました」
のどにいいと聞いたケアはさまざまに取り入れているという日髙さん。加湿器の設置や、マスクの着用は当たり前。少しでも不調を感じたら、のどを潤す漢方薬「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」を服用しているという。
「しゃべった分、唾液が飛沫になって飛び、口腔内の水分が奪われますから、出て行った分は補うよう意識しています。水は一度にたくさん飲むよりも、少量ずつこまめに飲むようにしています。のどを冷やすと周辺の筋肉が硬くなり、声が出しづらくなるので常温というのもポイントです」
体を温めると声は出しやすくなる
体を冷やさず、筋肉を動かしやすい状態にしておくことも重要だという。
「肩こりは血流が滞った状態。そのままでは声が出しづらいので、朝はストレッチもしています。首まわりだけでなく肩を回したり…。これも何セットと決めると続かないので、気持ちがいいな~と感じるくらいにしています。筋肉が正しい位置にあれば、若い頃と変わらない声を出せると言われたので、週1回はジムに通って筋トレもしています。そうやって動いて体を温めると、本当に声が出しやすいんです。首と手首を温めると、体全体が冷えにくいと聞いたので、リストウオーマーもつけるようになりました。薄着でも手首さえ温めていればすごく温かいのでおすすめですよ」
食事でも体を温めることを意識し、スープにホワイトペッパーを加えたり、甘味はのどにいいとされる羅漢果(らかんか)やマヌカハニー。お茶はハーブティーか、レモンジンジャーにはちみつを入れたものを飲むようになったという。
のどのケアを始めたらコンディションも改善
加齢で体の水分が減るのは仕方がないと思っていたが、ケアを始めたことで、声帯はスープに入ったふかひれのようにプルプルに戻り、全身のコンディションまで改善されたという。
「これまで、声が出しづらいときは力業で出していたので、収録後の疲労感がかなりあったのですが、いまは若い頃より楽に声が出せるようになりました。とはいえ、ここまでやるのは、私がのどを酷使する仕事だから。一般的な生活なら、水分補給のほか、鼻呼吸を意識するくらいで充分だと思います。鼻呼吸ならいつでもできるうえ、口腔内が格段に乾きにくくなりますから。それと、声帯は使わないと硬くなるので適度に使いつつ、口の中が乾かないハミングもおすすめです」
体の緊張をほぐすことも大切だと続ける。緊張状態にあると呼吸が浅くなって声を出しづらくなるため、無理に力を入れて声を出すことになり、のどを痛めやすいという。
「緊張していると感じたら深呼吸を。睡眠もおすすめです。寝付く前だけでも鼻呼吸を意識すると深く眠れますよ」
さまざまなケア方法を教えてくれたが、大切なのは続けること。そのためには、苦にならないケア方法から始めてみるのがいいかもしれない。
取材・文/永浜敬子
※女性セブン2024年2月22日号
https://josei7.com/
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