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健康

老眼、疲れ目の劇的回復法|改善する食事、歩き方から入浴法、睡眠法まで

 スマホ普及率が約8割に達し、“有史以来、人々が最も目を酷使する現代日本“。老眼や疲れ目はもはや国民病だ。ただし、きちんと予防や対策をすれば目の健康を保ち、視力を回復できることが最新研究でわかってきた。老眼鏡を買う前にお読みください。

【目次】

自分の力で老眼の進行を遅らせ、改善できる方法が出てきた
正しい姿勢で歩くことが目の不調を改善する
目元と首を入浴中のホットタオル、入浴後の冷たいタオルで
睡眠中には寝返りを、寝る前のアルコールはNG
目にいい濃い色の食べ物
1日5分「目ヨガ」「ツボ押し」
腕伸ばし&目の運動
プロボクサー御用達「眼球運動」
目の跳躍運動
目の追従運動
寄り目トレーニング

自分の力で老眼の進行を遅らせ、改善できる方法が出てきた

 5045億円。これは’16年度の国内アイウエア市場の規模である。メガネの売り上げは右肩上がりで伸びており、うち7割を老眼鏡の売り上げが占めるという。

『近視・老眼を放っておくと脳がバカになる』(青萌堂)の著者で、あまきクリニック院長の味木幸さんは「老眼や疲れ目で悩む人は近年かなり増えた」と指摘する。

「スマホやパソコンで目を酷使した結果、眼精疲労に悩む患者さんや若くして老眼のような症状が出てしまう患者さんは、10代から中高年まで幅広くいます。そうした症状を放置すると視力が落ちるばかりか、脳の“退化”にもつながることがわかっており、早く対策するに越したことはありません」

「老眼はメガネか手術しか手立てがない」「視力は一度落ちたら戻らない」が常識だったのは、過去の話。研究が進んだ現在は、自分の力で老眼の進行を遅らせ、改善できるさまざまな方法が生み出されている。味木さんが言う。

「そもそも老眼とは、目のピント機能が低下し、視力が落ちた状態。その原因はレンズの役割を果たす水晶体とそれを動かす筋肉である毛様体筋が固まってしまうことにあります。老化によって硬くなってしまったものは回復が難しいですが、目を酷使しすぎるなど生活習慣が原因の場合や、眼精疲労は努力次第で改善が可能です。普段の生活を少し変えるだけで、モノの見え方が変わり、視力が0.3ほど戻るかたもいます」

正しい姿勢で歩くことが目の不調を改善する

  いちばんの対策は、とにかく目の疲れをためないことだ。味木さんが解説する。

「パソコンやスマホは長時間使い続けないこと。20分に1回は画面から目を離して、1~2分間は違うことをするよう心がけましょう。仕事でパソコンを使う人は、電話やコピーなど、それ以外の仕事を挟むといいですね」

 歩き方も老眼に大きく関係している

「スマホを酷使する患者さんにありがちですが、猫背気味で首を前に出し、つま先が地面につかない、いわゆる“ペタペタ歩き”になっている人が多い。この歩き方を続けると姿勢が悪くなり、慢性的な肩凝りになりやすい。全身の血のめぐりが悪くなった結果、目まわりの血流も滞り、眼精疲労が蓄積して視力低下の原因にもなるのです」(味木さん)

 正しい姿勢で歩けば、それだけで目の不調は改善するらしい。味木さんが続ける。

「頭のつむじを上から引っ張られているような感覚で、体の軸が中心にくるのを意識しながら、まっすぐに立ってください。そして足の裏を地面につけて、しっかりつま先で蹴りながら歩く。血流がよくなり、毛様体筋の硬さも和らぎます」

 目線は常に遠くに置くこともポイントだ。

「普段、家事や仕事をしていると、つい手元ばかり見てしまうため毛様体筋が固まってしまう。歩くときや電車の中では遠くを見て、目の筋肉を伸縮させ、緊張を和らげることが必要です」(味木さん)

目元と首を入浴中のホットタオル、入浴後の冷たいタオルで

 一日の終わりの入浴タイムでも、少しの工夫で改善効果が見込める。  お風呂の中では、ホットタオルで目を温めるのが効果的だという。

「浴槽につかっているとき、ホットタオルで目元と首の後ろを温めるのがおすすめ。副交感神経が優位になり、毛様体筋の緊張がほぐれて、目の疲れを取ることができます」(味木さん)  

 お風呂から上がったら、今度は冷たいタオルを3分程度目元に当てる。

「交感神経が刺激され、自律神経のバランスが整います。冷やすことでそれまでの緊張が和らぎ、膨張していた目の血管が引きしまり、伸縮する。“ポンプ効果”でさらに目の血流がよくなるのです」(味木さん)

睡眠中には寝返りを、寝る前のアルコールはNG

 睡眠時の姿勢も、目の老化に大きく影響する。睡眠環境で大切なのは「寝返りを打てるスペースを確保すること」だと味木さんは言う。

「たとえば両脇に子供が寝ていると、寝返りが打ちにくいので熟睡できない。その結果、全身の筋肉が固まって眼精疲労や老眼の原因になる。パジャマに厚みがありすぎても、寝返りが打ちにくくなります」

 寝る前のアルコールも厳禁だ。

「アルコールは深い睡眠を妨げるうえ、疲れ目に効果のあるビタミンBを分解する働きを持っているので注意してください」(味木さん)

目にいい濃い色の食べ物

 目にいい食べ物の共通項は“濃い色”だ。

「サーモンやえび、かにに含まれる赤い色素『アスタキサンチン』と、ほうれん草やブロッコリーなど緑色の野菜に含まれる成分『ルテイン』は、どちらも目の老化を食い止め、有害な光から目を守る働きがあります。それらは、体内で生成することができないため、食事で摂取することが重要です」(味木さん)

 漢方治療に詳しい金のさじ診療所院長の伊賀文彦さんは、「老眼には黒クコの実が最強」と断言する。

「黒クコの実には『アントシアニン』と呼ばれる、強力な抗酸化作用があり、視力の回復にいいとされる成分が、ブルーベリーの約20倍も含まれているとされます。実際、老眼が理由で運転免許の更新が危ぶまれた60代男性の患者さんが、黒クコの実を毎日小さじ1杯食べ続けたことにより、視力が元に戻り、免許も更新できました」

 なじみのない食材のように思えるが、大型スーパーやインターネットの通販で、乾燥した状態のものが1000円前後で手に入る。そのまま食べても、水出しして飲んでもよい。

「手に入りづらい場合は、赤いクコの実を食べても、ある程度の効果は見込めます。目が開かないほどひどいドライアイが改善されたという患者さんもいました。赤いクコの実なら1日20g、そのまま食べてください」(伊賀さん)

 赤いクコの実はスーパーなどで100円前後で販売されているので、手軽に取り入れられる。伊賀さんは一緒に黒ごまも食べることを推奨する。

「老眼はもちろん、黒ごまはアンチエイジングの生薬として使われる効果的な食材です。ごま豆腐にクコの実を散らして食べるとか、ヨーグルトにクコの実と黒ごまを合わせるなど、食べ合わせも楽しんでください」(伊賀さん)

1日5分「目ヨガ」「ツボ押し」

  寝たきりの人が歩けなくなるように、目も鍛えなければ視力は落ちてしまう。目の運動も積極的に取り入れたい。

 龍村ヨガ研究所所長の龍村修さんが開発した「眼ヨガ」は「取り入れたらすぐに0.2視力が上がった」「ぼやけた視界がはっきりした」と大きな話題を呼んでいる。

「1日1回行うことで多くの人が効果を実感しています。簡単にできて効果があるのは、“ツボ押し”です」(龍村さん)

 仕事や家事の最中、“目が疲れた”と感じたタイミングで取り入れたい。

「目のツボは6点(下のイラストを参照)あります。順番に、一息吸って吐きながら、指で軽く押して刺激します。終えるときは息を吸いながら力をゆるめます。10回ずつ、2セット行ってください。老眼や眼精疲労に効果的なうえ、眼圧を下げ、緑内障の予防にもなります」(龍村さん)

【1】眉間:神経の緊張が原因の眼精疲労が取れる。片手の親指と人さし指で眉間をつまむ。
【2】目頭:パソコン作業や家事などで手を酷使したときの疲れが取れる。【1】と同じように片手の親指と人さし指でつまむ。
【3】眼窩の上:脳の疲れが原因の眼精疲労が取れる。親指でぐっと押し上げる。
【4】目尻:脚の疲れが原因の眼精疲労が取れる。人さし指で目尻の外にある骨を押す。
【5】眼窩の下:肝臓や胃腸の疲れが原因の眼精疲労が取れる。人さし指で下方向に引っ張るように押す。
【6】頰骨の下:眼圧を下げ、緑内障を予防する。人さし指で頰骨を下から上に押し上げるように押す。 

腕伸ばし&目の運動

 ツボ押しと一緒に取り入れたいのが、体と目を同時に動かす「腕伸ばし&目の運動」だ。

【1】背筋を伸ばして両手を腕の前で合わせる。そのとき、目は正面に、遠くをみつめる。

【2】息を鼻から吸いながら、胸の前で合わせた手を頭の上に、できるだけ高く伸ばす。このとき、伸ばした手の指先を目で追いながら上を見る。顔は動かさないように注意する。

 

【3】腕を高く伸ばしきったら、今度は口から息を吐きながら手のひらを外に向けて静かに下ろす。このとき、顔を動かさないように注意しながら、目線も一緒に下に動かしていく。下まで下がったら、【1】のポーズに戻って合掌。 

「目を酷使すると呼吸が浅くなり、目に酸素が行き届かない。腕と目の動きを連動させることで呼吸が深まり、目に酸素が届きやすくなります」(龍村さん)

プロボクサー御用達「眼球運動」

 ヨガで目の筋肉がゆるんだら、一歩先のトレーニングを。特に近年、注目を集めているのがプロボクサーの村田諒太選手をはじめとしてアスリートたちが取り入れている「眼球運動」だ。彼らに指導を行ってきた視機能トレーニングセンター『Joy Vision』代表で、視覚機能の専門家である北出勝也さんが解説する。

「眼球運動はアスリートだけでなく、老眼に悩む高齢者のかたにも効果があることがわかってきました。特に、目を上下左右斜めに動かす跳躍運動や目で対象物を追っていく追従運動(図4)は簡単に取り入れられるうえ、効果が高い」

目の跳躍運動

【1】両手を顔から30~40㎝離し、左右に親指を立てる。幅は30㎝ほど開ける。

【2】今度は両手を上下に開き、上、下、上、下、上、下、上、下と、親指の爪を交互に1秒ずつ4回見る。 

【3】今度は両手を上下に開き、上、下、上、下、上、下、上、下と、親指の爪を交互に1秒ずつ4回見る。

【4】両手を右上と左下に開き、右上、左下、右上、左下、右上、左下、右上、左下と、親指の爪を交互に1秒ずつ4回見る。 

【5】これまでとは手の位置を逆にする。両手を左上と右下に開き、左上、右下、左上、右下、左上、右下、左上、右下と、親指の爪を交互に1秒ずつ4回見る。 

目の追従運動

 顔から30~40㎝離して片手の親指を立て、直径40㎝くらいの円を描くようにゆっくりと回し、その指先を目で追う。右回り、左回りを交互に繰り返し、1分間続ける。

寄り目トレーニング

 これらの運動とともに北出さんが推奨するのが「寄り目トレーニング」だ。

「目から40㎝ほど離して人さし指を立て、徐々に近づけながら両目を寄せていきます。5㎝以内まで近づけることを目標に取り組んでください。運動を続けた結果、『ピントが合うようになった』『本を読むのが楽になった』という人が多いのです」(北出さん)

 

 それぞれの運動は1日2セットで取り入れるといい。

「2か月続けると、変化を実感できるはず。見えづらくなると『老眼だから仕方ない』とあきらめる人が多いですが、何もしなければますます老化が進んでしまう。トレーニングを続ければ、年齢に関係なく視覚機能をアップさせることができます」(北出さん)

 今日から実践あるのみ!

イラスト/森マサコ

※女性セブン2019年4月18日号

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