自立支援ケア|施設レポート「おむつゼロ」で若返る!歩けるようになった人も
人生100年時代。「老後は子供に迷惑をかけたくない」と考える人は多いのではないか。
自立した老後を過ごすために重要な1つが、排泄問題。今、全国の介護施設でおむつをはずして過ごす「おむつゼロ」の取り組みが進んでいる。これにより疾病を防ぎ、さらには元気を取り戻す人もいる。もう一度人生を自力で歩き出した高齢者の笑顔を、どうか見てほしい。
* * *
’17年に厚生労働省が行った調査によると、全国の介護老人福祉施設は7891施設。これは前年に比べ、約100施設も増えた計算になる。
成人用おむつ市場も年々拡大し、その規模は881億円に。’12年には、成人用おむつが乳幼児用の市場を抜いた。おむつ製造販売の最大手・ユニ・チャームでは同年以降、大人用おむつの売り上げが年5%も伸びているという。
おむつは介護の必需品。そんな風潮がある一方で、「おむつゼロ」介護への取り組みが進んでいる。これは、おむつを一切使わず、トイレで排泄を行う介護のこと。その対象は、寝たきりの要介護者も含まれる。
おむつゼロ介護の提唱者で国際医療福祉大学大学院教授・竹内孝仁さんによると、現在、全国約450の施設で実行され、累計150ほどの施設が、おむつゼロを達成しているという。
ではどのようにしておむつをはずしていくのか、その方法には、一見意外と思える手法も含まれていた。
「おむつゼロ」を実現させる基本ケア4
おむつゼロを成功させるには、4つの生活習慣を変える必要がある。
●その1 充分な水分摂取
1日あたり、1.5リットル以上の水分摂取が必要になると竹内さんは言う。
「高齢者の場合、体の約50%が水分。この水分量が減ると、体内の細胞は元気を失い、代謝が落ちてしまいます。水分が不足すると血液がドロドロになり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしかねません」(竹内さん・以下同)
●その2 常食でかむ力をつける
食事は流動食ではなく常食をすすめる。常食にすることで、咀嚼や嚥下機能を回復させるだけでなく、こんな利点もあるという。
「常食は栄養が豊富で、低栄養になりがちな老人に必要なカロリーを摂取できます。また、最近の研究では、よくかむことで、全身の活動性も上がることがわかってきました。何より、普通のおいしいご飯をかんで食べることが、生きる喜びにもなるのです」
●その3 適度な運動
竹内さんは1日の移動距離にして2㎞の運動を推奨する。
「高齢者は歩くことが大事。体を動かすことで心臓血管系、消化器系機能が上がり、排便にもつながります」
歩いてかかとに衝撃を与えると、骨芽細胞が活性化され、骨が丈夫になることもわかっている。
●その4 トイレへ行く習慣をつける
トイレ習慣を取り戻すことも重要だ。
「人が排便する時間帯はほぼ決まっています。特に多いのは朝食後。これは空っぽの胃に水分と朝食が入ることで、胃や腸が活発に動き、排便を促すからです。このメカニズムを使うと、トイレでの排泄成功が高まります」